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冬の光と、家族の背中。瀬谷八福神を巡る、再起へのフォトウォーク

横浜市の西の端、瀬谷(せや)区。 普段はとても静かな住宅街なんですが、実はここ、2027年に開催される国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」の開催地(最寄り駅)として、少しずつ注目を集め始めている場所でもあります。

そんな瀬谷には、全国的にもちょっと珍しい「八福神」があるのをご存知でしょうか。 通常の七福神に、七転八起の「達磨(だるま)大師」を加えた、8人の神様を祀る巡礼コースです。

「カメラを持って、少し歩きに行かない?」 数日前、私は妻をそう誘ってみました。

理由はシンプルです。 運動不足の解消、そして何より、1月の今の時期特有の、キーンと引き締まった冷たい空気を身体に取り込んで、リフレッシュしたかったからです。

実は私、現在メンタルヘルス不調により休職中で、復職に向けた調整期間を過ごしています。 ファインダーを覗いて心を整えたいという欲求と、体力を戻したいという思い。一方で、いきなり無理をしてはいけないという自制心。その間でバランスを取る必要がある時期なんです。

瀬谷八福神は、駅を挟んで北と南を全て回ると13km近い距離になります。今の自分の体力でいきなり完歩を目指すのは、少々リスクがあるように思えました。

「今回は北側ルートの7kmだけにしておこうかな」 そう妻に伝え、あくまで無理のない「カメラ散歩」のつもりで準備をしていました。

予定外の被写体、3人のスタート

当日、玄関で靴を履いていると、予想外のことが起きました。 「私も行く」 長女の飛び入り参加です。 こうして、私と妻、そして長女。思いがけず3人での賑やかなフォトウォークが幕を開けました。

瀬谷駅の北口から歩き出し。

まずは「長天寺」を目指します。ここの神様こそが、八福神の目玉である達磨大師です。境内には達磨像がありました。

「七転八起」。 転んでも、また起き上がればいい。シャッターを切りながら、休職中の今の自分にとって、その言葉はとても心強く響きました。

そこからは、境川(さかいがわ)沿いの遊歩道を歩きます。 期待していた通りの、冬の澄んだ空気が肺を満たしてくれます。

川面を渡る風は冷たいですが、歩いている身体には心地いいんです。 ファインダー越しに見る、妻と娘の楽しげな背中。

普段、家の中にいるだけではなかなか出ないような会話が、歩くリズムに乗ってポンポンと飛び出してきます。

途中、GREEN×EXPOの会場となる広大な更地も眺めました。 今はまだ何もなくたくさんの重機が行き交う白いフェンスの向こう側。「ここに何ができるんだろうね」なんて、未来の話をするのも楽しい時間でした。

松のや、ドトール、そして分岐点

北側の4寺を巡り終え、瀬谷駅に戻ってきた頃には、ちょうどお昼時になっていました。 3人揃えば気取らないお店がいいですよね。

駅前の「松のや」に入り、揚げたてのトンカツを頬張りました。
歩いた後の食事は、どうしてこんなに美味しいんでしょう。

食後はそのままドトールへ移動し、コーヒーで一息つきました。
ここで長女とはお別れです。 「私はここまで」 そう言って帰っていく娘を見送り、妻と顔を見合わせます。

本来の計画なら、私の体力面を考慮してここで終了のはずでした。
けれど、温かいコーヒーを飲み干した時、ふと身体の芯にまだ余力があるのを感じたんです。疲れよりも、歩く楽しさが勝っているような感覚でした。

「……南側も、行ってみようか」 「そうだね、いけるね」

当初の「慎重な計画」は、良い意味で変更されました。
ここからは妻と二人、延長戦のスタートです。

穏やかな光、午後の南ルート

3人から2人になると、写真に写る空気の密度も変わります。 賑やかだったお祭りのような時間は終わり、穏やかな大人の散歩道へ。

南側のルートは、弁財天や布袋尊など、歴史あるお寺が点在しています。
午後の日差しが傾き始め、お寺の屋根が地面に長い影を落としていました。その陰影もまた美しかったです。

「娘、意外と歩くの早かったね」 「また一緒に来れるといいね」

会話の量は減ったけれど、その沈黙さえも心地よく感じます。
当初恐れていた体力の限界も、不思議と感じませんでした。
ただ、隣を歩くパートナーがいる安心感と、一歩ずつスタンプが埋まっていく単純な喜びだけがありました。

13kmの自信

結局、全8寺をコンプリートして帰宅しました。
スマホの歩数計は、立派な数字を叩き出しています。

体力に不安を感じて「半分にしよう」と決めていた朝。
けれど蓋を開けてみれば、「全部できた」自分がいました。

それはきっと、一人では成し遂げられなかったことです。
娘との賑やかな前半戦が背中を押し、妻との穏やかな後半戦が心を整えてくれたおかげだと思います。

転んでも起き上がり、ゆっくりでも歩き続ければ、案外遠くまで行けるものなんですね。 復職に向けたリハビリとして、これ以上ない自信をもらえた一日になりました。

ひと足早い、春の黄色

帰り道、ふと道端に目をやると、鮮やかな黄色が目に飛び込んできました。 今の季節にしては少し早い、菜の花です。

冷たい風の中で凛と咲くその姿を見つけたとき、今日13kmの道のりを歩ききった時の感情と、ある思いが静かに重なりました。

休職に入ってから今日まで、自分の中の時計はどこか止まっていたような、長い冬の中にいたような感覚でした。

けれど、季節はちゃんと巡っていたんですね。
思いがけず出会ったこの小さな菜の花が、「もう、春はすぐそこだよ」と教えてくれているようでした。

焦らず、一歩ずつ。 今日、家族と長い距離を歩けたように、復職への道のりもきっと歩いていける。 そんな予感を胸に、黄色い花を写真に収めて、家路につきました。


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ようへい|静かな熱量で整える。 コーヒー一杯分の応援が、僕の思考をさらに遠くへ運びます。