3大予備校による東大入試の難易度評価は当たるのか?
今年の東大理系数学が過去最高難易度だというXのツイートを見かけました。大学受験から30年も経つと、問題を見ても、簡単なのか難しいのかという以前に、そもそも何を問うているのかすら見当もつかなくなってます。
じゃあ、大学受験の予備校の先生なら今年の東大理系数学の難易度を評価できるはずと考えて、3大予備校の分析を調べてみたら、こんな感じでした(いずれも昨年比)。
駿台:難化(3段階)
代ゼミ 難化(3段階)
河合塾 やや難化(5段階)
見事に3社とも、2026年度入試の東大理系数学は昨年比で難化方向と評価しています。そうなると次の疑問が浮かびます。「予備校による難易度評価はどれくらい当たり、今年の東大ボーダーラインは何点下がるのだろうか?」
この点を簡易的に分析してみたので、紹介します。
0. まとめ
UTaisaku Webの得点開示集計値が妥当である前提の下で、3大予備校の東大入試の難易度評価を分析すると、次の結果を得ることができた。
東大入試に対する3大予備校の難易度評価は、大きな傾向は間違ってはいないが、それほど精度は高くない。
相関は弱くても回帰予測値を計算すると、2026年度の東大入試の合格最低点は、文系でも理系でも前年より10点ほど下がると予測できる。
1. 東大理系数学の平均点と難易度評価
東大は4教科5科目合計の合格者平均点は公表していますが、科目ごとの平均点は公表していません。ただ、UTaisaku Webというサイトで、有志が集めた得点開示のデータを集計した結果が共有されています。
このサイトには、有難いことに、予備校の過去の難易度評価も掲載されていました。そこで、UTaisaku Webに掲載された東大理系数学の合格者平均点と予備校による難易度評価を引用したのが、この表です。前年差は筆者による計算です。

パッと見で、平均点変化と難易度評価の関係がわかりにくいので、難易度評価をフラグにして定量化してみます。3社で段階分けが違うため、難化方向か易化方向かを識別するフラグを設定します。
Sd:駿台の難易度評価が難化なら1、それ以外は0
Se:駿台の難易度評価が易化なら1、それ以外は0
Kd:河合塾の難易度評価が難化またはやや難化なら1、それ以外は0
Ke:河合塾の難易度評価が易化またはやや易化なら1、それ以外は0
Yd:代ゼミの難易度評価が難化なら1、それ以外は0
Ye:代ゼミの難易度評価が難化なら1、それ以外は0
この時、昨年並みのフラグがないのは、同じ予備校の2つのフラグが両方0の時が昨年並みを示すためです。また、フラグ設定と合わせて、合格者平均点の前年差を変数LYと表現することにします。
このように定義した変数LYと6つのフラグを用いると、表1は次のように表現できます。

さて、表2のようにフラグにすると、回帰分析が可能になります。そこで、理系数学以外のデータも整備して、東大入試の科目ごとの合格者平均点の前年変動に対する3大予備校の難易度評価の相関を分析してみます。
2. 難易度評価と合格者平均点変動の相関分析
分析対象の科目は、外国語、文系国語、文系数学、日本史、世界史、地理、理系国語、理系数学、物理、化学、生物の11科目です。期間は2020〜2025年度入試の6年間とし、データは先ほどと同じUTaisaku-Webから引用させてもらいます。
ただ、河合塾が地学2025年度の難易度評価を公表していないため、分析対象は71件のデータとなります。なお、外国語の合格者平均点は英語以外の言語も含む点数のようですが、難易度評価は英語に対するものとなります。
この時、文系国語と理系国語では駿台と河合塾は現代文/古文/漢文の単位で難易度評価が掲載されていました。そのため、3区分の難易度評価を合算した傾向を元にフラグを設定するようにします。具体的には、3区分のそれぞれで、難化方向なら-1、昨年並みなら0、易化方向なら+1として、現代文×2+古文+漢文+(文系の現代文・第4問)で計算した値が、プラスなら易化、ゼロなら昨年並み、マイナスなら難化としてフラグを設定します。
①重回帰分析
それでは、難易度評価と合格者平均点変動の相関を見ていきます。まずは重回帰分析です。先に定義したSd・Se・Kd・Ke・Yd・Yeに加えて、定数K、誤差項εも用いて、重回帰式を次のように定めます。
LY = K + a × Sd + b × Se + c ×Kd + d × Ke + e × Yd + f × Ye +ε
この重回帰式に各年度・各科目の65件のデータを入力して、分析した結果がこの表です。Excelで計算しています。

補正R2は0.316で弱めの相関となっています。変数のt値は全て2未満、p値も全て0.05超で、どの予備校の難易度評価も合格者平均点の変動に有意な影響を与えていなさそうです。強いて言えば、駿台の2つのフラグ(Sd・Se)は-1.916と1.918であり、駿台の難易度評価が最も有意ではあるようです。
②単回帰分析
続いて、単回帰のモデルも構築してみます。新たな変数T=Sd × −1 + Se + Kd × −1 + Ke + Yd × −1 + Yeを定義します。これは予備校3社の難易度評価の合計値となります。3社とも難化方向と評価するとT=-3、3社とも易化方向と評価するとT=3です。3社とも前年並みという評価するとT=0ですが、難化方向の評価と易化方向の評価の場合にもT=0となります。
このTを用いて、単回帰式を「LY = K + m × T + ε」と定義します。単回帰なので散布図でこの分析結果を示すと、こうなります。R2=0.333なので単回帰も弱めの相関ですが、一定の幅で右肩上がりの分布になっていることが見てとれます。

3. 2026年度の合格最低点の予測
東大入試に対する3大予備校の難易度評価と合格者平均点変動の間の相関は、重回帰でも単回帰でも相関は弱めでした。ただ、せっかくなので、今回得た重回帰式と単回帰式を用いて、今年の東大入試の合格最低点を予測してみます。
まずは予備校による2026年度東大入試の難易度評価の一覧です。眺めた印象では、国語と理科が易化、数学と英語は難化、社会は前年並みという感じのようです。

この難易度評価を用いて、2026年度の合格者平均点の前年変動を回帰予測したのがこちらの値です。重回帰も単回帰も決定係数が低い(弱めの相関)ため、2つの回帰予測値の平均を採用しています。

ここから4教科5科目合計の合格者平均点の変動を予測するには、社会2科目と理科2科目の組み合わせ方を決める必要があります。この組み合わせも、UTaisaku Webにデータがありましたので、過去6年分を引用させてもらい、その平均値を算定しています。この加重で社会と理科の変動を計算することにします。。

また、東大は1次:2次が110:440なので、共通テストの前年変動も加味する必要があります。これは、科類ごとの1次選抜の合格者平均点の差を用いることにします。
こうして集めたデータを元にして、科類ごとの2026年度の合格者最低点(ボーダー)を計算すると、この表のようになります。共通テストの難化と2次の数学・英語の難化を受けて、どの科類も前年よりもボーダーは10点近く減少する予測となっています。

4. 最後に
今回の分析によって、東大入試に対する3大予備校の難易度評価は、大きな傾向は間違ってはいないが、それほど精度は高くないことがわかりました(重回帰でも単回帰でも決定係数は0.3強)。
そんな状況でも、受験生のために、当日や翌日に解答速報を出して、さらに難易度の評価も公表するのですから、予備校の先生方の尽力には頭が下がります。
将来には、難易度評価をAIが行って、もっと精度が上がっていくのかもしれませんが、実用レベルに到達するには、まだ時間がかかるのではないかと考えられます。そのため、少なくとも我が家の子供の大学受験が終わるまでの数年間は、予備校の先生方には解答速報&難易度評価を頑張ってもらいたいと思います!
