小説|「セレニティ模様」第22話
悠に救われているといえば勉強もそうだ。
我らは小学校の低学年中学年の頃学校を休みがちだった。二人とも一緒に休むというより一人が体調を崩して治ったと思ったらまた一人が休むという交互に休むスタイルだった。
ある時の火曜日。香が休み明けに学校へ行くと朝自習の時間がいきなりミニテストだった。
先生が問題用紙を配った。算数のテストで足し算だけが十問あった。
① 7+8=□
② 3+9=□
…
⑩5+5=□
香の知っている足し算は繰り上がらない。だから一問目も二問目も分からないまま九問目まで進んでも点で分からず頭の中はパニックだった。
もう無理だと思って見た十問目。こ…これは数えられる。そこだけなんとか10と書いた。 たった一日休んだだけでこんなにも分からなくなっているなんて、と香は焦った。
しかしこれと同じようなことがまたしても起こった。今回も朝自習の時間を活用したミニテスト。今回も算数のテスト。この間と違うのは引き算だけが十問。
① 15-7=□
② 14‐6=□
…
⑩11‐2=□
香はまたしても太刀打ちできなかった。それに最後の十問目まで全てわからなかった。自分の名前を書いただけの、アニメにときどき出てくるような白紙のままの答案用紙が回収された。
「あのさ。今日テストあったのね。全く分からなかった。びっくりした」学校からの帰り道。香は歩きながらおもむろに悠に話す。
「今度はなんのテストだった?」
「引き算」
「もしかして二桁の?」
「うん」
「それだったらわたしも今日習ったとこちょうどその宿題出たしお家帰ったら一緒にやろうか」
「えっ。いいの?」
「いいに決まっている」悠がくったくなく笑う。
「ありがとう」
*
「ただいまあ」家の前に広がる小さい畑。そこで野菜を収穫している八重子に声をかける。
「おかえりい」八重子が手を止めて香と悠を見る。
香と悠はお家に入ると足早に子ども部屋へ駆け上る。小学生になるとトメさんに会いたくない気持ちが強くなり、なるべく自分たちの部屋で過ごす時間が増えた。
「15‐7。…うーん。さっぱりわからない」香が眉間に皺を寄せる。
「15は10+5でもあるのね」悠が自分の宿題をする前に見てくれた。悠はそういう優しさや面倒見の良さがある。「損して得とれ」ということわざがある。けれど悠の場合は圧倒的に損が多くて得にすることができるのだろうかと香は心配になることがある。でもその優しさや思いやりについつい甘えてしまう。
「うん」
「だから10+5‐7でもあるのね。なんか余計難しいか」悠が苦笑いする。
「えーっと。それでね。順番を変えて10‐7+5に並び替えて。勝手に進めてごめんね」
「10‐7だったらできる?」
「うん。3」
「そうそう。3に5足せる?」
「うん。8」
「そう。それが正解」
「15‐7。まず10‐7をして、それに5を足せばよいみたいなの」
「ほうー」
「なれるまではまず10から7ひいて5を足すって流れにすれば答えはでるよ。ふふっ」
「教えてくれてありがとう」それからというもの香はしばらくの間指を折って数えられるその方法で計算した。
