小説|「セレニティ模様」第25話
いつもの通学路。ほぼ中間にある地下道。自転車から降りて押して進む。地下へ降りる下り坂は自転車のブレーキをかけても加速する。自分の意思とは無関係にハイペースで進む。ここまでくるともう半分も来てしまったと香は思う。そしてこれ以上進んだら後戻りできないとも思う。坂道を降りると百メートルほどの直線通路。
「うおりゃあああああああ」
「うほおおおおおおおおーい」
雄叫びや奇声を上げながら爆走する生徒たち。男子も女子も。
背後からの声や風を感じ香は怖くてこれ以上端に避け切れないというくらい寄って肩をすくめながら自転車を押して歩く。
そんなアゲアゲな人たちがマジョリティを占めるマンモス中学校。香はかれこれ一年通っているけれど一向に慣れない。馴染めないまま中学二年生になった。
先生が「近隣住民から苦情が来ています。危ないので自転車は押して通ってください」と何回も呼びかけている地下道。物騒な人たちが多くていけ好かない。
その日香は学校へ着いて下駄箱を見ると内靴がなくなっていることに気づいた。占いの最下位が頭を過る。
下駄箱で悠と別れる。けれど隣のクラスということもあり背中合わせの下駄箱だ。
後ろを振り向くと悠と目が合った。香の内靴がないことに悠も気づいていた。
そっと側に寄って来る。
「大丈夫だから。教室に行って」惨めな自分を見せたくない。いじめられているなんて言いたくない。私に関わって悠に迷惑をかけたくない。瞬時にいろいろな感情が押し寄せる。
自分が一番認めたくないことだけれど私はいじめられている。
あの人たちにずっと監視されているような毎日だ。廊下ですれ違うのも嫌だった。視線が痛かった。見えていない時でも私の悪口を言われているような気がして心が休まらなかった。
「あいつのあだ名何にする?」口角をあげて香をきりりとにらんでいる目。底意地の悪そうな目つき。わざと聞こえるように言っているのだ。
「何にしようか」
「がん見してんじゃねーよ」
「そのままガンミとかいいんじゃ」
「あっ。いいじゃんっ」
香は足早に通りすぎた。後ろでクスクス嗤っている声が聞こえる。
