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小説|「セレニティ模様」第50話

 迷っている間にも時間は刻々と過ぎる。高校三年生の夏になっても香に届く模試の結果はD判定ばかり。国公立大学など自分には高すぎる目標なのではないかと思い詰める。

 幸い高校三年生になっても莉緒ちゃん、慶ちゃん、歩ちゃんと同じクラスになった。そして三年目も一緒にお昼ご飯を食べていた。

 「私さ、志望校のランク一つ落とすことにしたの」歩ちゃんが困り顔で言う。

 「そうなんだあ」慶ちゃんが頭を小刻みに二回上下に動かす。

 「お兄ちゃんがなかなかにね、良い大学に入ったから私もそれに続かなきゃって思っていたんだけど私には難しいかなって」歩ちゃんがお弁当箱から綺麗な黄色の卵焼きを箸で掴む。

 「歩ちゃんの学びたいことがある大学なら変わったって応援するよ」莉緒ちゃんが言う。

 「うん。ありがとう。言えて良かった」歩ちゃんが卵焼きを頬張る。

 当たり前だけれどみんなそれなりに自分が学びたいことがあって大学を目指しているのだ。それなのに私ときたら、入れそうなところという視点でしか志望校を決めていない。理系より文系。文系でも採用人数の多い学部などというカテゴリーを重要視している。香にとっては国公立大学に入ることが大前提だからだ。

 香は、歩ちゃんは自分の上手くいっていなことをちゃんと伝えられてすごいなと思う。ありのままを見せられることが強いなと思う。香は自分のことを良く見せたくて取り繕ってしまう。そんな風に考えていたら莉緒ちゃんから話が振られる。

 「こうちゃんはどう?」

 「うーん…」香は案の定志望校を変えることができないと言えず変な沈黙が流れる。

 「不安になるよね」慶ちゃんが言う。

 「私はというとさ、芳しくなさすぎてさ。熟に通うことにしたの。高校の最寄り駅、雪の瀬駅の前のところ。だから帰りみんなと一緒に電車に乗れなくなる…」莉緒ちゃんが困ったように笑う。

 「そうなんだ。寂しくなるな。でもすごいことだよ。お互いがんばろうね」慶ちゃんが莉緒ちゃんの肩にそっと手を置く。

 「親が塾に行っておけって煩くて。まああの結果では仕方ないよね」莉緒ちゃんが苦笑する。

 「すごいよ。私もがんばらないとな」香は志望校のランクを落とすことができる環境が少し羨ましく思った。みんなとは違うと言い聞かせる。そしてまたそっと心を閉ざす。自分の悪い癖が顔を出す。

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