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タワーレコード、ヴィレッジヴァンガード本店、ハンズ渋谷店閉店と90年代の熱狂

タワーレコード町田店、水戸オーパ店、ヴィレッジヴァンガード本店が閉店する。

音楽はサブスクになったのだ。
CDを買わなくても、月額料金を払えば何千万曲も聴ける。

本も映像も同じだ。

昔は文化に触れるために店へ行った。

今はスマホを開けばいい。

文化は豊かに、そして安くなった。

もしかしたら、ベーシックインカムならぬ「ベーシックカルチャー」の時代なのかもしれない。

誰もが最低限の文化へアクセスできる。

それ自体は素晴らしいことだ。

しかし、その代わりに失われたものもある。

CDショップ、本屋、新古書店。

目的もなく歩いて、偶然知らない作品に出会う「体験」だ。

ネットでの「偶然の出会い」
セレンディピティは個人のアルゴリズム、検索履歴に基づき「偶然を装った出会い」だ。
その精度はかつてなく高い。
しかし昔の「偶然」は、苦労して発見するから脳汁の出る量が違うのだ。
そのドーパミンの量は感動の量にも比例する。
ならば、行く末は文化自体の死なのか。
そして、アルゴリスムが行き過ぎれば、偶然を装った誘導である。
ただ、もうその波は止まらない。

そして、閉店したのはタワーレコードだけではない。
かつて、CDショップには「三強」があった。

覚えてますか。

キラキラした90年代から2000年代。
黒船のように現れた巨大店。
順番待ちの試聴機。
明るく開放的な売り場。
各階で流れる違うBGMに耳をそばだてた飢餓感。

タワーレコード。
HMV。
ヴァージン・メガストアーズ。

友達との待ち時間に
「渋谷店の試聴機で聞いてるオレ、イケてる!」
(まぁ、メタルなんですけど…)

かつて街を彩った店たちが次々と姿を消している。

東急ハンズ渋谷店も閉店する。

しかも、あの建物は今後ホテルになるという。

立地を考えれば非常に合理的だ。

海外からの旅行客にピッタリの場所だ。

経営判断としては正しいのだろう。

だが、それは街の役割が変わったということでもある。

街は文化を探しに行く場所から、宿泊する場所へ変わりつつある。

一方で商店街を見ると、増えているのは買取専門店だ。

ブランド品、貴金属、時計。

売場を持たないから、展示する人件費や顧客対応の人件費がいらない。

すぐにメルカリ販売するから在庫リスクもない。

合理的で強い業態だ。

言ってしまえば、かつての古本屋やCDショップの弱点を徹底的に削ぎ落とした究極形かもしれない。

しかし不思議なことに、店の前で立ち止まる人は少ない。

一日来店がない店もある。

経営としては成立していても、街の風景としては静かだ。

昔は古本屋巡りがあった。

チチカカみたいな雑貨屋巡りがあった。

ハンズを何時間も歩き回る休日があった。

買わなくても楽しかった。

小売店は商品を売るだけではなく、街を歩く理由そのものだった。

閉店が衝撃なのは、CDや雑貨が売れなくなったからではない。

また一つ、「街がつまらなくなった」ように感じるからだ。

「ベーシックカルチャー」で誰もが文化を享受できる時代。

では、私たちは豊かになったのだろうか。

それとも何か別のものを失ったのだろうか。

そんなことを考えてしまうのは、自分が古本屋だからなのかもしれない。

ポジショントークと言われればそうなのだろう。

でも、世の中にはそういう無駄なカルチャーが好きなおじさんたちも、まだいるのである。

そしてたぶん、私はその一人なのだ。

無駄な中にこそ人のエネルギーがつまっている。

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