『鍵のない夢を見る』(著:辻村 深月)丨日常に転がる脆く危うい人生物語
少し前から生活が少し忙しくなり、長編よりも短編作品が読みたくなったので、今回は辻村深月さんの『鍵のない夢を見る』を読みました!
本作品はWOWOWがドラマ化し、WOWOWオンデマンドやFODプレミアム、Netflixなどで配信されています。(キャストが豪華!)

📖 直木賞受賞作『鍵のない夢を見る』とは?現代の闇を映す5つの犯罪短編集
『鍵のない夢を見る』(著:辻村深月)は5つの短編から成る短編小説集で、第147回直木賞受賞作品でもあります。収録されている短編は、
①仁志野町の泥棒
②石蕗南地区の放火
③美弥谷団地の逃亡者
④芹葉大学の夢と殺人
⑤君本家の誘拐
の5つ。泥棒、放火、逃亡者……なんて言葉が並んでいる通り、どの短編も犯罪が少なからず絡んでいます。そして、どの作品も現代社会に生きる女性たちが日常のふとしたきっかけから転落していく姿を描いています。
📖 「こんなはずじゃなかった」——誰にでも起こりうる「人生の脆さ」。背筋が凍るような後味の悪さと、圧倒的な共感
5つの物語から成る短編集ですが、どの物語を読むにしても、読者の年齢や人生の経験値によって受ける印象がガラリと変わる作品のような気がしました。人によっては全く共感できず、つまらない作品と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
どの物語にも共通して言えるのが、日本のどこにでもあるような日常の何気ない一コマを切り取った風景の中に、主人公の女性たちは暮らしていて、彼女たちの人生にはとんでもないドラマがあるという点。
「こんなはずじゃなかった」
「どうして、こんなことになってしまったんだろう……」
日常生活の中に転がるふとしたきっかけで悲劇が訪れ、いつの間にかとんでもない事態になっている女性たちの姿を描いているのですが、どの物語にも背筋が凍るような展開で、読了後はそれぞれに違った「後味の悪さ」が残る作品でした。
女性の心の奥深くを秀逸に描いているので、各物語の主人公の気持ちに一気に感情移入してしまうのが辻村深月さんの作品のすごいところ。自分がまるで全5編の主人公になったような気持ちで読み終え、読了後はゾクッと怖さを感じました。
思えば私自身、今までの人生のどこかで道を踏み間違えていたら、この作品の中の主人公のような人生になっていたかもしれません。そう思うと今生きている私たちそれぞれ人生が、いかに脆く、危ういものであるかを確認できる一冊と言えるのかもしれません。
個人的には最後の「君本家の誘拐」が印象的でした。やはり母親目線で読んでしまい、特に産後の体力的にも精神的にも大変な主人公の苦しさには共感せずにはいられませんでした。
📖 短編集だからと侮れない――共感と恐怖が表裏一体。一気に引き込まれる極上の読書体験
最初は「気軽に読めるものを」と思い短編集である『鍵のない夢を見る』を手に取ったのですが、主人公へ感情移入しすぎてしまって、読んでる最中もメンタルは急降下するわ、各物語の後味の悪さは残るわ、で精神的にはちょっと疲れました。ここまで一気に物語に引き込む辻村深月さんの表現力、すごすぎます……!!
各物語は文字通り短編なので、一気に読み終えられる点は短編集のいいところ。長編を読む時間がない方や、物語にグッと引き込まれたい方にオススメの一冊です。主人公が全員女性なので、女性の方により楽しんでいただけるような作品だと思いました。
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