読書記録|「いとしきもの 森、山小屋、暮らしの道具」を読んで。
先日、小川糸さんの「いとしきもの 森、山小屋、暮らしの道具」を読み終えました!
タイトルに惹かれて、なんとなく手に取った一冊。
でも読み進めるうちに、なんだか深呼吸できるような、やさしい時間を感じられる本でした。

今年4月に父の手術があり、病院で過ごす時間が増えた中で、待ち時間やその合間に少しずつページをめくって、気持ちを落ち着けていました。
読んでいると、のんびりゆったりとした気分になれて、心がなんだかバタバタしている今の自分にとって、ちょうどよく寄り添ってくれる本だなあ、と。
この本の中には、森での暮らしや、山小屋での時間、そして日々の中で大切にされている「もの」についての話がゆったりとした文体で綴られています。
どれも特別なことが書かれているわけではないのに、ひとつひとつの描写がとても丁寧で、読み進めるうちに、なんでもない日常がどこか愛おしく感じられるようでした。
私はこれまで、どうしても効率や、やるべきことを優先して過ごすことが多くて、日々のなかにある大事にするべき時間にあまり目を向けられていませんでした。
朝起きてから出かけるまでの時間もいつも慌ただしくて、気づけば「次にやること」ばかりを考えていたり……。
朝ごはんも、しっかり味わうというよりは「とりあえず食べるもの」になってしまっていて、いつのまにか食べ終わっている、なんてことも多かったように思います。
そんな日々の中で、この本を読んで「ちゃんと味わうこと」や「丁寧に過ごすこと」の大切さをあらためて思い出させてもらったような気がしました。
ある日。いつもと同じように朝を迎えたとき、ふとこの本のことを思い出しました。
いつもなら、なんとなくスマホを見ながら過ごしてしまう時間を、少しだけ変えてみようと思って、朝からゆっくりココアを作ってみることにしました。
カップに豆乳を注いで、ココアを入れてあたためて、立ちのぼる湯気をぼんやり眺める……。
それだけのことなのに、いつもより少しだけ時間がゆっくり流れているように感じました。
別の日には、お気に入りのマグカップをいつもより丁寧に洗ってみました。
今までは「使えればいい」と思っていたものも、ちゃんと手に取ってみると形や手触りが思った以上に心地よくて、無意識にもちゃんと自分のお気に入りのものを手にしていたんだな〜と、少しうれしくなりました。
最近は身体のことや働き方のことなど、自分自身と向き合う機会が少しずつ増えていて、無理をしすぎず、自分の安心できる選択をすることを大切にしたいと思うようになりました。
そんな今の自分にとって、この本の中にある穏やかな時間の流れはとても心地よく感じられました。
「丁寧に暮らす」という言葉はどこか遠いもののように感じていたけれど、本当に大切なのは特別なことをすることではなくて、目の前にあるものや時間に少しだけ意識を向けることなのかもしれないなー、と。
そんなふうに思えるようになりました。
読んですぐに何かが大きく変わったわけではないけれど、少しだけ日常の見え方が変わった気がします。
たとえば、帰宅したあとになんとなくテレビをつける代わりに、少しだけ静かな時間をつくって手帳を書いてみたり。
コンビニで何かを選ぶときにも、「今、自分は何を食べたいんだろう」とほんの少しだけ立ち止まって考えてみたり。
そういった小さな変化が、日々の私を救うために積み重なっていっているように感じます。
「いとしきもの」という言葉のとおり、自分のまわりにあるものや時間をいとおしみ、ちゃんと大切にしていきたいと思えた一冊でした。
すぐにすべてを変えることはできなくても、こうして少しだけ心が動いたことを、これからも大事にしていきたいなと思っています。
