【エッセイ】記憶をなくした私は、本当に「私」なんだろうか?睡眠薬とゲームが教えてくれた不思議な体験
なんだか寝付けない夜、あなたはどうしていますか?
最近、「睡眠」について自分のマガジンで触れる機会がありました。眠れない時、温かい飲み物を飲んだり、リラックスできる音楽を聴いたり。人それぞれの過ごし方があると思います。
私はというと、もう何年も不眠症と付き合っていて。特に寝つきが悪く、お医者さんから処方されたお薬をいくつか飲んでいます。持病の双極性障害にとっても、睡眠リズムの乱れはあまり良くないため、自分に合うお薬を探して、これまで色々な種類を試してきました。
多分、睡眠導入剤の類を飲んだことがない方は、「飲んだらすぐにベッドへ」というのを忠実に守るのだと思います。でも、私にとって服薬はあまりにも日常になりすぎていました。
お薬を飲んでから、眠気がやってくるまでの時間つぶし。そう、ゲームをしてしまっていたのです。
※これは絶対に真似しないでください。
私の愛したゲームと、失われた時間
ところで、私は「Warhammer 40,000: Rogue Trader」というゲームが大好きです。キプロスにあるOwlcat Gamesというスタジオが開発した、それはそれは壮大な物語のゲーム。
プレイヤーの選択によって物語が大きく変化する、超分岐型のRPGです。だから、イベントシーンのたびに英語と日本語の両方で楽しむために、セーブデータを細かく分けて、じっくりと進めていました。
物語もいよいよ終盤。ある重要なイベントシーンを、私はそれはもう、心待ちにしていたのです。
でも……どうしたことでしょう?
次の日、コントローラーを手に取り、ゲームの続きを始めようとしたら……。
なんだか、知らないところでセーブされている。
そして、あんなに楽しみにしていたイベントシーンは、すっかり終わってしまっていました。私はコントローラーを握りしめたまま、しばらく震えました。
え、どういうこと……?
もちろん、心当たりは、あります。
もう一人の「私」がそこにいた
その頃飲んでいた睡眠導入剤(ブロチゾラム)が、おそらく私に効きすぎていたのでしょう。眠りに落ちる直前の30分くらい、すっぽりと記憶が抜け落ちることがありました。
脳の「記憶」を司る海馬という部分の機能が、一時的に低下していたのかもしれません。
まるで、もう一人の自分がいるみたい。
この現象、客観的に見るとちょっと興味深いものでした。翌朝、自分が何をしたのかを「確認」してみると、食べ終わったお皿を洗ってあったり、ゲームの中での選択肢が「ああ、私ならこうするな」というものだったり。行動に一貫性があるのです。
でも、この出来事を医師に話したら、「それはちょっと心配なので、別のお薬に変えましょうか」と、すぐにお薬は変更になりました。
問題は、です。
楽しみにしていたイベントシーンを「勝手に」クリアされてしまったこと(私にとっては、そう感じられるのです)。
その時、私が「どう感じたのか」。多分、ワクワクしながら楽しんでいたはずなのに、その記憶が全くない。だから、「楽しんでた自分、ズルい」とすら思ったのです。
記憶がなければ、「自分」ではない?
記憶がないだけで、その体験をしたのは紛れもなく同じ肉体を持つ「私」のはず。
それなのに、どうしても「自分ごと」として感じられない。
この不思議な感覚は、「記憶」そのものが自我、つまり「自分は自分である」という感覚と、強く結びついているからなのだと実感しました。
同じ肉体や意識が何かを体験していても、その記憶が分断されてしまうと、まるで別の人の出来事のように感じてしまう。もしかしたら、人格というのは、そうやって連続した記憶の上に成り立っているのかもしれません。
最近、仕事で生成AIに触れる機会が増え、「意識とは何か」「人間とAIの違いは何か」なんてことをよく考えます。少し哲学的な問いですが、その答えの一つに「自我の有無」という観点があるはず。
そして今回の体験を通して、その自我は「記憶」に根差している部分が大きいのだろうな、と強く感じました。
こういう体験は、決して「ポジティブな出来事」とは言えません。でも、自分という存在を少し違う角度から見つめる、とても「興味深い」出来事ではありました。
とはいえ、皆さんがもし睡眠導入剤などを飲む機会があるときは……。
お薬を飲んだら、おとなしくベッドに入ってください。
ゲームくらいならまだ笑い話で済みますが、ふらついて怪我でもしたら大変です。記憶がない間に誰かと会話したり、意図しない行動で誰かに迷惑をかけたりしたら、取り返しがつかないかもしれません。
そんな、私のちょっと不思議な学びと体験談でした。
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「役に立った」「読んでよかったな」と思っていただけたら、無理がない範囲で応援いただけると嬉しいです。
いつも、皆様のあたたかいお気持ちで活動できています😊