AI画像生成:〇〇風イラストは合法!?著作権問題の最前線
「え、マジ? あの人気アニメの絵柄がAIで簡単に作れちゃうの!?」
最近、巷を騒がせているAI画像生成。特に、OpenAIのGPT-4oを利用した特定の画風を模倣する機能が話題になっていますよね。
日本の有名アニメスタジオ風のイラストがあっという間に生成できる……なんて聞くと、ワクワクする反面、なんだかモヤモヤした気持ちになりませんか?
これって、もしかして著作権侵害!? ファンとして、クリエイターとして、見過ごせない問題提起です。
そこで、今日はAI生成物と著作権について、あらためて考えてみようと思います。
(※約4000字:忙しい方はまとめだけお読みください)
何が著作権侵害にあたるのか
日本の著作権法で保護されるのは基本的に「表現」であり、一般的に「アイディア」や「事実」は保護対象外です。文化庁のQ&Aによると、著作物とは「人間の知的・精神的活動によって創作されたもの」を指し、その人の個性が何らかの形で表現されていれば該当する可能性があるとのこと。
著作権について理解するためには、以下の点が重要です。
著作権で保護されるのは、個々の独自の表現
単なるアイディアや事実は保護の対象にならず、誰でも自由に利用できる
創作物が作られた瞬間に自動的に著作権が発生する(※申請は不要)
つまり、「日本国民は約1億人です」といった「事実」を誰かが文章に使っても著作権侵害にはなりません。
また、この記事を読んだ方が「私もAIと著作権について書こう!」と記事を書いてもそれは「アイディア」ですから、「著作権侵害」にはなりません。
ですが、例えば私の文章を一部改変したものをコピーして載せたり、過剰な引用を行った場合は「著作権侵害」にあたります。
著作権は私たちがnoteに文章を書いたり、イラストを描いたりした瞬間に、発表の有無に関わらず発生します。商標権などと違い、申請は不要です。
基本的に全ての文章やイラストなどの創作物には著作権があるとお考え下さい。
画風は著作権侵害?
では、画風はどうでしょうか。
基本的に画風自体は「アイディア」の範疇ですが、元となる著作物の特徴的な表現(創作的とみなされる部分)が類似している場合、著作権法の対象になることがあります。
つまり、特徴的なポーズやキャラクターの特徴などが似通っていれば、著作権法違反の可能性があります。
ただ、イラストの著作権は「どこからどこまで」が特に曖昧ですよね。明確に同じキャラクターを流用しているという訳ではない場合、裁判になってみないと確たることは言えないのが現状です。
イラストレーターのさいとうなおき先生が分かりやすい動画を制作されているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。
日本のイラストシーンとトレパク問題
AIが画風を再現することが著作権的に問題ないとしても、著作権者やファンの感情としてはイヤな話ですよね。
以前、パルワールドというゲームが、ポケモンの画風を露骨に真似ているとして話題になりました。
(過去記事:ポケモンの悪質なパロディ『パルワールド』ついに任天堂に訴えられる【ニュース感想】)
これはもう、法的な問題というよりも、個人の倫理観に委ねられる部分が大きいのかもしれません。
特に日本では、イラストレーターや漫画家のトレパク(トレース+パクリ)疑惑での炎上が定期的に起きてきた背景があります。
法律上は問題ないケースも多いトレパクですが、バレると炎上。「目トレ(目でトレースする)」なども話題に。
炎上が過熱すると、誹謗中傷など別の問題につながるリスクもあります。
行き過ぎた感情的な反応はさておき、受け入れられない方の気持ちも分かります。
結局のところ、「トレース行為」は元となったイラストレーターさんの努力や発想、費やした時間にタダ乗りしているということで、不公平感が強いですよね。
これを業界として許容してしまうと、イラストレーターにとってのコスパ最適解は「他人のトレパクをすること」になってしまいます。
創薬の世界でも同根の問題が起きていますが、作った瞬間に搾取されると分かっていて、誰が時間や手間をかけた「新しい作品」を模索するでしょうか? 文化の健全な発展にとって悪影響である……と考える、その気持ちは分かる気がします。
このような事情により、現在は「ポーズ集などのトレース用素材でない限り、トレースは許されない」というのが創作界隈の不文律のようです。
そんな土壌がある中、AIで簡単に画風を真似られるとなると、センシティブな反応が予想されます。
AIのトレーニングデータと著作権
画風を再現できるということは、トレーニングデータに大量の著作権で保護されたイラストが含まれている可能性が高いですよね。
ただし、アメリカの著作権法には「フェアユース」という概念があり、著作権で保護されたコンテンツを批評、コメント、ニュース報道、教育、研究、調査で特定の方法により利用する場合は、フェアユースと認められる可能性があります。
フェアユースかどうかを判断する際、アメリカの判事は以下の条件を満たすかどうかを判断します。
1.利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)
2.著作権のある著作物の性質
3.著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
4.著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響
AIのトレーニングデータは膨大であり、データの一部として利用するため、「3.著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性」によって、フェアユースが認められるかもしれません。
また、日本の著作権法でもトレーニングデータとしての利用自体は著作権侵害に当たらないとする見方が一般的です。
「データをトレーニング目的で入力した段階では、誰かの権利や利益が侵害されている訳ではないから」です。このトレーニングにおいて著作権者の許諾は必要ないとされています。
(参考:文化庁 AIと著作権 「AIと著作権に関する考え方について」)
ただし、「生成AIなら何をやってもいいのか」ということではなく、特定の著作権者の画風を再現する目的で特別にトレーニングしたモデルなどはサービス提供者の責任が問われるということも考えられます。法律(著作権法第30条-4)の解釈は柔軟性があるものであり、これから判例が増えるにつれてある程度基準が固まって来るものであると考えられます。
生成AIを利用した著作権侵害は、サービス利用者の責任
現状、著作権侵害のリスクを負うのはOpenAI自体ではなく、生成された画像を使用した個人です。
実際に、OpenAIの利用規約には以下のように書かれています。
お客様は、違法行為、有害行為、又は悪用する行為のために当社の本サービスを使用してはなりません。例えば、以下の事項は禁止されます。
他者の権利を侵害、悪用、又は侵害する方法で本サービスを使用すること。
~後略~
お客様は、本サービスに情報を入力(以下「インプット」といいます)し、かかるインプットに基づいて本サービスから出力された結果(以下「アウトプット」といいます)を受け取ることができます。インプット及びアウトプットは総称して「本コンテンツ」といいます。お客様は、本コンテンツが適用法令又は本利用規約に違反していないことを確認することを含め、本コンテンツに対して責任を負います。お客様は、当社の本サービスに提供するインプットに必要なすべての権利、ライセンス、及び許諾を得ていることを表明し、保証します。
このように、利用規約でも、違法行為や他者の権利を侵害する方法での利用は禁止されており、コンテンツに対する責任はユーザーが負うと明記されています。
つまり、生成された画像を使って商品を作ったり、素材やアイコンに使ったりした場合、訴訟リスクを抱えるのはその個人(や法人)ということ。
特に既存のキャラクターに酷似した画像をSNSで発表するなどした場合は、著作権侵害が認められる可能性が高いでしょう。
また、これまで述べた通り、著作権法において画風は「アイディア」なので保護されませんでしたが、生成AIを利用して画風が似通った作品を利用した場合、既存の著作権法の解釈とは違う判断がなされるというケースも考えられます。結果的に著作権侵害が適用されるかどうかはケースバイケースとなり、リスクは否めません。
二次創作が訴えられないのは、著作権者が目こぼししているからです。
「生成AIが作ってくれたから、私は関係ない」
とはなりません。お気を付けください。
日本の著作権法の考え方
フェアユースは「公正な著作物の利用」を認めるものですが、日本の著作権法も、著作権の保護と文化的所産の公正な利用のバランスを目的としています。
著作権法第1条(目的)
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
0から創作を始めるのは非現実的だからこそ、ある程度の利用は認められるべき。
でも「フェアユースの範囲」については日米で認識の差がありそうですね。
まとめ
結論をまとめると、
基本的に2025年現在の日本の法律では、AIのトレーニングデータに著作物を利用しても、法律上は問題ない
AIを使って生成された画像による著作権侵害は、サービス利用者が責任を負う
画風のみであれば、基本的には模倣しても著作権侵害には当たらない可能性が高い
ただし、法律的に問題がなくとも、コミュニティ感情的には許容されない可能性が高い
ということです。
いずれにせよ生成AIサービス自体が責任を負う可能性は低いと考えられるのですが、OpenAIのトップが宣伝するように「〇〇風のイラストができた」と発言することは、フェアユースの範囲を超えている気がします。
元のアニメスタジオの売上に影響が出れば、司法の判断が変わる可能性も。
実際、すでにOpenAIは生成ルールを厳しくするなどの対応を取りつつあるようです。
こんなことになって、誰が長期的に得をするんですか?
もともと、ユーザーが自分一人で作ってみる分には、画風の模倣だろうとなんだろうと基本的には問題ありませんでした。でも生成自体が禁止されるようになれば、そうした楽しみ方も出来なくなってしまいます。
最後に:生成AIへの期待と懸念
これは一つの意見ですが、私が問題視しているのは、著作権侵害かどうかという「法的な白黒」だけではありません。
そうではなく、知らず知らずのうちに作品文化やコミュニティの信用を損ねてしまう「無自覚な行動」です。善意から始まった遊びであっても、受け手にとっては『作家やファンの熱意を軽んじている』ように映ることがある。
どれほど深刻な結果を生むか、想像することすらないままに楽しんでしまえる「無邪気」さ。
それが、私にとっては何より恐ろしいことだと感じます。
生成AI自体は素晴らしい技術。だからこそ、知財を軽々に扱うことで悪いイメージがつくのはもったいない。利用者はルールを守るべきだし、知財の盗用が話題になって規制が厳しくなっても誰も得しません。
これからの課題は、生成AIをどう社会に受け入れていくか。ファーストインプレッションを悪いものにしないためにも、慎重な議論と適切な利用を行っていきたいですね。
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