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自民党の政策を調べてみた話 その10

このシリーズでは、自民党が掲げている政策をひとつずつ取り上げ、あえて批判的な視点を持って読み解き、私なりに考えています。もちろん、これらはあくまで個人的な見解であり、賛否あるかと思います。なので、これを読んでくださった方々も、ご自身で実際の政策集を開いて、じっくりと読んでみることをおすすめします。

今回注目したのは、経済政策の大きな柱として語られる「経済安全保障」についてです。政策集には、次のように記されています。

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1 強い経済で笑顔あふれる暮らしを。経済安全保障

基幹インフラ産業について、2024年5月に制度運用が開始された経済安全保障推進法に基づき、着実に施行を進めていきます。
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自由、民主主義、人権といった価値を守り、有志国と連携して法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現しつつ、わが国の生存、独立、繁栄を経済面から確保するために経済安全保障政策を推進します。そのための「経済安全保障戦略」を早急に策定し、その主旨を次期「国家安全保障戦略」に盛り込みます。
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さて、この「経済安全保障推進法」ですが、成立までの流れを改めて振り返ってみると、そのスピード感に驚かされます。2021年11月に第1回推進会議が開催され、翌年2月までに有識者会議の提言が提出されました。それを受けてわずか3か月後の5月11日には法案が成立し、1週間後の18日には公布されています。

ふつう、国の根幹に関わるような重要な法律が、これほどの短期間で議論され、成立するものなのでしょうか。私が知らないだけで、通常のスピードなのかもしれません。

ただ与党がこれほどまでに手続きを急ぐとき、そこには「国民に広く知られ、議論を呼び、反対の声が上がる前に既成事実化してしまおう」という強い意図を感じずにはいられません。実際、多くの国民がこの法律の具体的な中身を知らないまま、いつの間にか私たちの生活や経済活動に深く入り込む仕組みができあがってしまったのです。

この法律の柱のひとつに「重要物資の安定的な供給の確保に関する制度」があります。対象となるのは、「国民の生存に必要不可欠」あるいは「経済活動が依拠している」重要な物資とされています。

具体的に何が指定されているのかを見てみると、抗菌性物質製剤(抗生剤など)、肥料、永久磁石、半導体、蓄電池、天然ガス、重要鉱物、人工呼吸器、果てはロケットや人工衛星の部品まで多岐にわたります。最近ではこれに「ウラン」も追加されました。

確かに、今のハイテク社会を維持するためには必要なものばかりに見えます。しかし、「安全保障」という言葉を使うのであれば、まず私たちが直視すべきは、これらの物資のあまりに低い「自給率」です。

簡単に検索をかけてみると、抗菌性物質製剤は約25%、半導体も約25%、天然ガスはわずか2%です。そして肥料や永久磁石、ウランにいたってはほぼ0%、つまり完全に海外に依存しています。安全保障というからには、万が一の際に自分たちで何とかする能力を高めるべきです。

しかし、この政策が示している解決策は「サプライチェーンの強靱化」という名の、海外からの供給ルートの整備です。

具体的には、供給に関わる会社がたとえ外資であっても、中小企業投資育成株式会社による株式等引き受け、つまり公的機関が資本金を出資したり、信用保証協会が肩代わりを保証したりする仕組みが含まれています。もし海外企業への融資が滞れば、日本の国の予算で支払われることになります。日本円が海外に流出し、外資を潤すための仕組みを「安全保障」と呼んでいるのではないか、という疑念が拭えません。

さらに私が強い違和感を覚えるのは、この政策の中に「自由、民主主義、人権」といった、経済活動とは直接関係なさそうな高潔な言葉が並んでいることです。「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」というフレーズは、あたかもグローバル企業の宣伝文句のようです。こうした大層な言葉を並べることで、この制度に反対すること自体が「民主主義に反する」かのような空気を作り出し、批判を封じ込めようとしているように見えてなりません。

ところで、「国民の生存に必要不可欠」という言葉を聞いて、私たちが真っ先に思い浮かべるのは何でしょうか。それは磁石や半導体ではなく、明日食べる「食糧」のはずです。どれほど高性能なロケットや半導体があっても、お腹が満たされることはありません。

食糧についても「食料供給困難事態対策法」という別の法律が存在します。ただし、その中身は驚くほど心もとないものです。供給が減ったら「生産や輸入を促進する」という当たり前のことが書かれているだけです。とはいえ、増やせの号令で明日から作物が増えるわけではありません。そしてどうしても足りなくなった場合には「配給制」にするとされています。

しかし、現場に目を向ければ、日本の農業は崩壊の危機に瀕しています。農業従事者の高齢化は凄まじく、あと5年もすれば多くの人が離農してしまうという予測もあります。それにもかかわらず、政府は何十年も生産を強制的に減らす「減反」を続け、補助金を削り、種苗法を変えて農家の利益を減らしてきました。さらに今、農家の団結の象徴である農協(JA)を解体しようという動きさえ見えます。

肥料の自給率がほぼ0%である以上、肥料の供給が止まれば日本の農業の生産量は減少するでしょう。それなのに「経済安全保障」の議論ではハイテク物資ばかりが優遇され、生命の源である「食」の自給率向上に向けた抜本的な投資は後回しにされているように見えます。政府が備蓄しているお米の量も、日本全体で消費される量の2か月分にも満たない100万トン程度です。これでは、本当の有事の際に国民を守り切れるとは到底思えません。

結局のところ、この「経済安全保障」という名の下で進められているのは、国民の生命を守ることではなく、グローバルな経済競争の中で特定の大企業や有志国、特にアメリカとの関係を維持し、そこに日本の国富を投じるための仕組みづくりなのではないでしょうか。

そして最も危惧すべきは、この政策の最後に記された一文です。 「『経済安全保障戦略』を早急に策定し、その主旨を次期『国家安全保障戦略』に盛り込みます」

つまり、現在進められている経済的な締め付けや外資への資金提供といった仕組みが、そのまま「国家安全保障」、つまり軍事や防衛の領域へとスライドしていくことが予告されているかのようです。「経済」という入りやすい入り口から入り、最終的には「国家の安全のためなら国民の権利や生活が制限されるのも仕方ない」という段階へ、バージョンアップさせようとしている意図が透けて見えます。

自民党が急ぐ「安全保障」の議論には、常に「国民の不在」を感じます。私たちが必要としているのは、ロケットの部品が安定して届くことよりも、明日食べるご飯が安く、安全に、確実に手に入ること。そして、日本国民が豊かに暮らしていける社会です。

「経済安全保障」という言葉に惑わされず、それが誰の利益のために、何を守ろうとしているのか。私たちは常に批判的な視点を持って、自民党が次に策定しようとしている戦略の内容を監視し続けなければなりません。バージョンアップされて取り返しがつかなくなる前に、まずはこの「経済」という名をまとった政策の正体を、ひとりひとりが冷静に見極める必要があると思います。

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