【オーダーメイド殺人クラブ】読書感想文 #辻村深月の本全部読む㉘
場面設定は学校で、女子のドロドロした友情を描く辻村先生が得意のパターン。教室内の中2女子の集団は冷笑系人間の集まりって感じで、主人公の小林アンはその冷笑系をさらに冷笑する人間です
小林アン、凍りのくじらの理帆子にとても似た人間です。
私は音楽に浸ったり、酔ったり、そういうことができる。芹香たちはそれができない、どこまでも目の前の現実しかない子たちなんだってことが、去年の終わりくらいから、私はわかるようになっていた。
解像度の高い厨二病ですね、とてもいい
感想
出てくる人間みんな浅はかで、愚かで、読んでて気分が悪くなりました。「悪者キャラ」って感じじゃなくて、みんな現実に自然にいる感じの嫌な人たち。性格も悪いし、見てられないくらいに頭が悪い。序盤は読んでてモヤモヤしちゃって読み進めるのが苦しかったです。
展開が急加速するポイントがあって、そこから先が面白かったです。そういう構成も含めて読んでいる感覚は凍りのくじらに近かったです。前半で読むのをやめずに最後まで読んで欲しい作品です
死にたいって思ったことが一度でもある人なら、共感できる作品だと思います。全てをぐちゃぐちゃにして消えてしまいたい、でも現実には痛みは怖いし、絶対に嫌いでい続けようと決めた人間からふと優しくされると不覚にも嬉しくなってしまう。リアルな描写で自分の記憶をくすぐられる感覚がして、懐かしい気持ちになりました。
作品としても何箇所か綺麗な伏線回収と急展開があり、良い作品だと思いました
気になったところ
夢見たことなら何度もある。ある日急に教室に、誰か、私も尊敬できるような大人がやってきて、肩に手をおいて「君は特別だ」とはっきり告げてくれること。
自分が特別ではないことに気づくこと、それを受け入れてどう生きるかを考えること、90〜95%くらいの人間からしたら、それが人生のテーマになるんじゃないでしょうか。学生時代ってその指針を探すためにあるんだと思います。
大谷翔平だって最初から主人公だったわけじゃないし、自分の努力でそれを勝ち取ってきたわけだけれど、どうしても努力をかっ飛ばして「奇跡」で特別になろうとしてしまいますよね、人間は弱いから。
「特別になりたいけど、自分には何もない」っていうことに苦しむ時期って1人1回は絶対あるだろうし、その時期の人間の心理をこの小説はうまく書いていると思います。
小林アン自身がそのことに悩んでいる中で、母親はオシャレを気取っている一般人臭がぷんぷんで父親は考えが浅はかで、そのことにもアンちゃんは悩まされます。周りに浅はかな人間しかいないことを悩みます、自分も別に特別な人間じゃないのに。
ママがあまりにバカで愚かだって知ってしまって、胸がつぶれそうに苦しかった。
自分の親が浅はかだったり頭が悪かったりする瞬間を見た時って、なんか言い表しようのない嫌悪感と吐きそうな苦しさを感じるんだよな
多分厨二病の一環なんだろうけど、子供時代にそんな感情を経験した人は多いと思う
うまく書き表されていると感じます。
母親がバイト落ちた時よくわかんないけど辛くなった https://t.co/RFkUKZdBdQ
— 🪄 (@4qllit) September 18, 2025
ちょうどこのツイートがバズっていました。これと近い感覚ですね
クロスオーバーについて
スロウハイツの事件が、この小説でも影響を与えているんですね
主人公たちが同じ時系列に生きていることが感じられて、それに気づけて、少し嬉しくなりました
終盤の展開について
まあそうなるか〜〜〜〜〜ってのが率直な感想でした。学校の情景も主人公の心理描写も、徹底してずっとリアルで、終盤の展開すらもずっとリアルに終始していた。
リアルを突き詰めて書くリアル路線の作品って、好みが分かれると思うので、この作品も好きな人は好きなんだと思います。ご都合主義を嫌う人はこの作品好きだと思います。
個人的にはリアルなエピソードは現実世界で十分なので、小説の世界では脚色や都合のいい展開を望んでしまいます。
努力してそれが報われる的な少年漫画のような小説や、物語が二転三転するドーパミンドバドバ小説が好みなので、「リアルだな〜〜〜」って方向に注力したこの作品は自分には合わなかった。「鍵のない夢を見る」とかと同じ感想を持ちました。
さいごに
最後まで読んだあと本を閉じて、改めて表紙を見た時に、なるほどと思わされました。いい表紙ですね。
「鍵のない夢を見る」「凍りのくじら」「太陽の坐る場所」あたりが好きな人は、この本も好きだと思います。
