【本日は大安なり】読書感想文 #辻村深月の本全部読む㉗
満足感がめっちゃ高いです、1冊で色々な人間のヒューマンドラマを味わうことができて、わんぱくオードブルみたいな作品でした。唐揚げとハンバーグとミートボールとエビフライが交互にどんどん提供される感じ、美味しかったな、この作品
作品について
短編集を時間軸に沿って再編して切り貼りしているような作品です。時間軸は一つなのでわかりやすいですが、登場人物が多く主人公がコロコロ入れ替わるので少し読みにくさやわかりにくさは感じました。(この人誰だっけって読み返すことがままあった)
時間軸が一定で、いろんなキャラクターに焦点が切り替わっていく構図は、確かにドラマ向きの作品なのかもしれません。ドラマ化も納得です。
物語序盤は謎を散りばめて背景やキャラを説明することに終始していますが、その謎がどんどん膨れ上がっていき、中盤に差し掛かるあたりでポップコーンのように弾け出します。それぞれのストーリーというポップコーンが弾けたあとは、もう面白すぎて止まらなかったです。最高の作品、おもしろ!!この作品!
登場人物は人間性が終わってる人が多いので、そこに嫌悪感を抱く人もいるかもしれないけれど、人間性終わってるおかげで物語のびっくり展開が多かったのでとても面白かったです。マジで人間性終わってるけど。
気になったところ
頭を下げ続けるしかなかった。社会人になってから、ここまで面と向かって誰かに、それも大人の男に怒鳴られた経験はなかった。心が一瞬で干上がり、余裕がまるでなくなる。目に涙が滲みそうになるのを懸命にこらえた。
ウエディングプランナーとして5年働いていて、この経験が今までなかったなんてことがあるのかな。俺は業界違うけど、接客業であれば大人の男に面と向かって怒鳴られるなんて、ザラな気がするんだけれど。
ここから推測するに主人公のウエディングプランナーは相当優秀なんだろうなあ、それこそ怒鳴られるようなA級ミスを起こさなかったり、ミスでなくても向こうを不快にさせそうな事象の回避能力が高いんだと思う。
そんなスーパー優秀ウエディングプランナーにも過去の闇があって、それをなんとか踏ん切りをつけて乗り越えようとしてるっていうのを見ると、自分も頑張らなきゃなって気持ちになるな
大安は、六輝の中で何事においても全て良く、成功しないことはないとされる。だけど、大安はそれだけでは実現しない。それを可能にするのは、私たちだ。
それが、ウエディングプランナー。大安を作り、支える職業。
「大安を作り、支える職業。」
このフレーズ思いついた時、辻村先生気持ちよかっただろうな
とっても良い言葉!!この世の全てのウエディングプランナーにこの言葉を届けたい、とってもかっこいい!
ダメになる人生の岐路には、転落を防ぐストッパーのような存在がきちんとその時々どこかで現れると聞く。昔、そんなことを歌ってる歌手がいた。
橋本奈々未が「人は必要な時に必要な人と出会う」と言っていたのを思い出しました
僕が元カノにボロ雑巾のようにフラれたとき、出会ったのは、励ましてくれたのは、旧来からの親友だったし、僕が仕事の対人ストレスでボロボロになりかけた時に出会ったのは今の彼女です
出会わなかった時をカウントしないから必然的にそういう風に感じるってのが真理だとは思うんですけど、それでも僕はこの言葉が好きなんですよね
会わなくなった人は縁がなかったって思うことができるし、人生を楽観的にしてくれながら、一期一会の出会いの重要性を教えてくれるこの言葉、とても良いですよね
それはそうとしてこの話の中の鈴木陸雄、純然たるクズで清々しさすら感じるな。他人の人生をなんとも思っていない、自分の刹那的な快楽だけを常に求めて生きる人間のクズ、同情の余地がなさすぎて面白いです。
こいつ、ドラマ化した時炎上しまくってたんだろうな
クロスオーバーについて
この作品では「子供たちは夜と遊ぶ」とのクロスオーバーがありました。
「狐塚くん」「恭司」、そして「月ちゃん」。みんな元気に大人になっていそうで嬉しい気持ちになった
このあたりのクロスオーバーって、ドラマ化の際はどのくらい描いているんだろうな
さいごに
4組の結婚式、それぞれのストーリーはしっかり納得のいく結末を迎えます。それぞれハッピーエンドらしき雰囲気は出しているけど、ただ、本質的な問題は何も解決できていません。
これは結婚式がある種の幻想を見せる場所っていうところにつながっていて、いいメッセージ性だと思いました。
結婚式によって根深い問題を解決することはできなくても、目の前のその空間の中だけにおいては最高の幻想を生み出して美しい世界を見せることができる。
とても儚くて、脆いけど、花火みたいで綺麗だとは思います。結婚式って。
あとがき
作品としてはとっても面白いし、高評価なのですが、読んでいると結婚式業界の闇も見えてしまうので、結婚式が近い人はそんなに読まない方がいいんじゃないかなあ
莫大な金額を要する結婚式では、式の準備をしている間、お客さまがハイになる。通常では考えられないような一日の消え物への出費を「ウエディングとは、そういうものです」という合言葉一つで懐柔し、金銭感覚を麻痺させるのだ。
価値観とは植え付けるもの。そういうものだと飲み込ませれば、確かに相手は金を出すだろう。
結婚式自体が一概に悪とまでは思わないけれど、フィクションだとしてもこういう裏側の心理が見えてしまうと結婚式に後ろ向きな印象を抱く人は多いだろうな。
