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視点はうつろい、対象を変容させるように

ようやく芸術祭の会場とたどりつき

建物の内部へ足を進める。そこでは空間全体を使った
インスタレーション作品はレアンドロ・エルリッヒの
まっさかさまの自然。内に広がる森に包まれる作品は
氏の母国アルゼンチンの森が再現されたものという。


氏は奈義町の自然に子どもの頃の風景を重ねたという

眼下にゆらめく森は
天井に広がる森が映し出されたもの
吊橋の上で、反転する森の風景に包まれながら
浮遊する緑の連続を見下ろして
床一面が鏡面となり、空間全体を拡張させ
吊り下げられた確かな物質としての森の違和感と
鏡面に映る不確かな森の自然さが
連なる風景をのぞき込み
創造された自然の記憶と、美しさを感じたり

レアンドロ・エルリッヒにより、反転された自然と

岡山の景観の美しさへの思いは拡張されていく

レアンドロ・エルリッヒといえば、かつて家族旅行で訪れた
キナーレを思い出す。そこでは、視点は広がり複層化され
実在としての建物と、水面に図として描かれた建物は
眺める角度によってその関係性を変えていく
水面に描かれた建物は、だんだんと実像に近づいて
ある点に立つと建物のはっきりとした鏡像となる
視覚は確かなようで、不確かで、その場所に
立つことでようやく実感できることもある
その鏡像を見るほどに、自分の視覚の形のなさを感じ
子どもたちは、そんなことにはおかまいなく、ただ水の感覚を
体いっぱいに感じながら、空間全体を体で楽しんでいた

その作品の名前は空の池。見る角度によってここまで

見え方が変容するとは理解を超えていて、そしてその

作品は不確かさの中に確かなものを浮き彫りにさせる

そしてレアンドロ・エルリッヒの作品で、名をはせるのは
金沢21世紀美術館に設けられたスイミング・プール
実際には水が張られるのは高さ10cmだけで
内部には空間が設けられている

あるばすのない景色は、新たな感覚を触発して

スイミング•プールのリアルさが更なる錯覚を呼ぶ

レアンドロ・エルリッヒによる拡張された感覚は

美術館の風景とも重なって
現実と非現実の境はあいまいになっていく


映り込む風景。虚像と実像。視点によって対象の姿は
変容し、視覚は確かなようで、不確かなものでもある。
空間に身を置いて、視界に映るものを感じる。対象を
映すもの、にじませるもの、反転させるもの。対象が
ゆらめき、自分の体が動くにつれ、その形は変容する。

風景をどのように見るか、そしてどう感じるか。アート
を通して視点を広げ、実際の風景に当てはめていく。
時に風景はおぼろげで、時に輪郭を際立たせるもする。
表現されるものを感じ、そのものが持つ特性を見出す。
旅は視点をうつろわせて、対象を変容させるように。

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