【いまさら聞けないGPU超入門(全5回)】|【第2回】GPUメーカーは何者なのか:NVIDIA・AMD・Intelの素顔と企業戦略
更新日:2026/5/12
📖 前提知識: 第1回の「4つの地図」を読んでいるとスムーズです
(第1回の記事はこちら ⇒ https://note.com/yasuhitoo/n/n5c44e97d90c2 )
本記事で持ち帰っていただきたい3つ
1. NVIDIAは、GPU単体よりCUDA(GPUをAIや科学技術計算に使うための開発基盤)込みのAI計算基盤が強い
2. AMDは、CPU+GPUとオープン戦略で食い込む挑戦者
3. Intelは、CPU・内蔵GPUの巨大な足場からAI/推論/業務用途へ広げる企業
この記事で分かること
- NVIDIA・AMD・Intelの出自と、それぞれが「何を武器に」戦っているか
- 市場シェアの数字を見るときに必ず確認すべき前提(どの市場の数字か)
- まだ分からないこと:各社の歴史的な転換点の詳細(→第3回)、具体的な製品名の読み方(→第4回)
- 前回(第1回)からのつながり:第1回で示した「4つの地図」の上で、3社がどう立っているかを読み解きます
前回は、GPU市場を「ゲーミング」「プロ向け」「データセンター・AI」「内蔵GPU」の4つの地図に分ける視点を整理しました。
今回は、その地図の上で主に存在感を持つ3社:NVIDIA / AMD / Intelを見ていきます。
GPUニュースに出てくるこの3社は、同じ棚に並ぶライバルに見えて、実は出発点も得意技も違います。NVIDIAはゲーム用GPUから出発し、CUDA(GPUをAIや科学技術計算に使うための開発基盤)を武器に、AI計算基盤の会社へ変わりました。AMDはCPUとGPUの両方を持ち、大容量メモリとROCm(AMD系GPU向けのオープンなソフトウェア基盤)で食い込もうとする挑戦者です。IntelはPCのCPUで巨大な足場を持ち、内蔵GPU、業務用途、AI推論へ広げる企業です。
だから最初に見るべきはシェアの数字ではありません。まず、3社がどの土俵で、何を武器に戦っているかを押さえるのが近道です。

そのうえで、シェアの数字を見ます。たとえば「NVIDIAが92%」という数字は、2025年Q1のデスクトップ向けAIB(Add-in Board:増設GPUカード)市場の話です。これをAIアクセラレータ市場やGPU市場全体とそのまま同一視すると、文脈を取り違えます。ここで大事なのは数字を暗記することではなく、シェアの数字は市場と時点をセットで読むということです。詳しい読み方は、第5回で整理します。⟦S5⟧ ⟦S6⟧


※作成した記事内容をGammaに入力しスライド自動作成させました。スライドの方が見やすいようでしたらこちらをご覧くださいませ。
1. NVIDIA:GPU企業から「AI計算基盤企業」へ
NVIDIAは1993年創業で、1999年のGeForce 256を通じて「GPU」という言葉を広く定着させた企業です。大きな転換点は2006年のCUDAで、これによってGPUは描画専用に近い存在から、AIや科学技術計算にも使える汎用並列計算基盤へと役割を広げました。⟦S1⟧
現在のNVIDIAの強みは、GPU単体よりも、
CUDAを中心にしたソフトウェア、ライブラリ、インターコネクト、サーバー設計まで含めた一体の基盤
にあります。NVIDIAは自社の2025年版企業概要で、Developer Programの規模を600万人と説明しており、自らを「full-stack computing infrastructure company」と位置づけています。⟦S2⟧
業績面でも、NVIDIAの重心はすでにゲーミングだけではありません。FY2026(2026年1月25日終了の会計年度)はデータセンター売上が通期売上の大半を占め、Reutersも2025年3月、NVIDIAがAI学習向け市場で90%超の支配的な地位を持つと報じています。細かな金額より、NVIDIAの主戦場が「ゲーム用GPU」から「AIインフラ」へ移ったことを押さえれば十分です。⟦S3⟧ ⟦S4⟧
個人向けのGeForceでも存在感は大きく、AIとグラフィックスを結びつける打ち出しは続いています。ただし今回第2回では、製品名を追いかける必要はありません。ここでは、NVIDIAが
ゲーム用GPUの会社から、AI計算基盤を握る会社へ広がった
と見れば十分です。⟦S7⟧
要するにNVIDIAは、もはや単なる「GPUメーカー」というより、AIを回すためのハード・ソフト・システムをまとめて握る企業になった、と見るほうが実態に近いです。⟦S2⟧⟦S3⟧
📌 一言で言うと: NVIDIAは、GPU単体ではなく「GPU+CUDA+サーバー基盤」までまとめて押さえるAI計算基盤企業です。
2. AMD:CPUとGPUの両輪を持つ統合型プレイヤー
AMDは1969年創業の半導体企業で、2006年にATI Technologiesの買収を完了し、CPUとGPUを同じ会社で持つ体制を本格化しました。⟦S8⟧⟦S9⟧
この構造がAMDの大きな特徴です。RyzenやEPYCのCPU群と、RadeonやInstinctのGPU群を、単品製品ではなくプラットフォームとしてまとめて設計しやすいからです。
AI向けでAMDの存在感を高めたのがInstinctです。代表例のMI300Xは大容量HBM(High Bandwidth Memory:広帯域積層メモリ)を強く打ち出し、後続のMI350シリーズでも推論性能の向上を前面に出しています。ここで製品名を細かく覚える必要はありません。AMDは、CPU+GPUの組み合わせ、大容量メモリ、オープンなソフトウェア基盤で食い込もうとしている、と見るのが近道です。⟦S10⟧⟦S12⟧
ソフト面では、ROCmをオープンソフトウェアスタックとして展開している点もAMDの武器です。さらにHIPIFYなどを通じてCUDAコードをHIPへ移植する道も用意しており、「NVIDIA一択ではない」選択肢を示しています。ただし、これはCUDAコードが無修正でそのまま動くという意味ではありません。⟦S13⟧⟦S14⟧
AMDはAIアクセラレータ市場の拡大を見込み、クラウド企業やAI企業との協業も前面に出しています。ここから見えてくるのは、AMDが単に「NVIDIAの安価版」を目指しているのではなく、オープン性とエコシステムで食い込む挑戦者として立ち位置を明確にしていることです。⟦S15⟧ ⟦S16⟧
近年はAI向け製品とラックスケール基盤の発表も増えており、AMDも「単品GPU」だけでなく、システム全体の勝負へ寄せています。⟦S17⟧
📌 一言で言うと: AMDは「CPU+GPUの両輪」と「大容量HBMメモリ」を武器に、オープン戦略でNVIDIAに食い込む挑戦者。
3. Intel:CPU基盤を生かしてGPU/AIへ広げる企業
IntelはCPUで長年市場を牽引してきた一方、2022年にディスクリートGPU 「Arc」 を立ち上げ、GPU市場での存在感拡大を進めています。⟦S19⟧
ただし、Intelを見るときに重要なのは、「NVIDIAやAMDをそのまま正面から追う会社」と捉えすぎないことです。IntelはoneAPIを軸に、CPU/GPU/その他アクセラレータをまたぐ統一的な開発体験を志向しています。これは、単にGPUを売るよりも、既存のIntel基盤の上で異種計算を広げる発想です。⟦S20⟧
市場シェアの面では、少なくともデスクトップAIB市場でのIntelの存在感はまだ小さく、JPRベースの報道では2025年Q3にようやく1%台へ乗ったと整理されています。つまり2025年Q3時点では、「大手3社の一角」ではあっても、AIB市場での立場はまだ発展途上です。⟦S23⟧ ⟦S24⟧
その一方で、IntelはAI推論とワークステーション領域では着実に手を打っています。Arc Proのような業務向けGPUや、Gaudi系を含むAIアクセラレータの発表を見ると、Intelが狙っているのは「ゲーム用GPUで正面から勝つ」ことだけではないと分かります。⟦S21⟧⟦S22⟧
つまりIntelは、ゲーミングGPUの正面決戦というより、
推論・業務用途・TCO(Total Cost of Ownership=総保有コスト)・既存基盤との親和性
で居場所を広げようとしている、と理解すると実態に近いです。
📌 一言で言うと: IntelはCPU基盤とoneAPIを土台に、AIB市場の正面突破より「推論・業務・開発基盤」で居場所を広げる戦略。
4. 3社比較(要点)
3社をひとことで整理すると、次のようになります。

AMD:CPUとGPUを両方持つ強みを使い、オープン戦略と大容量メモリで食い込む統合型プレイヤーである。⟦S10⟧⟦S12⟧⟦S16⟧
Intel:CPU基盤とoneAPIを土台に、推論・ワークステーション・開発基盤から広げようとしている。⟦S20⟧⟦S21⟧⟦S22⟧
この違いの認識があやふやだと、「同じGPUの話をしているはずなのに、なぜか議論が噛み合わない」という状態になりやすくなります。
5. ここまでの整理
ニュースで企業名を見たら、まず次の3点を確認すると理解が速くなると思います。
どの市場の話か ゲーミングなのか、AIなのか、内蔵GPUなのか、AIB市場なのか。
ハードの話か、ソフト基盤の話か CUDA / ROCm / oneAPI のどれが競争力の核になっているのか。
単品GPUの話か、システム全体の話か 1枚のカードなのか、サーバーなのか、ラックなのか、あるいはソフトウェア込みの基盤なのか。
この3点を押さえると、「同じGPUの話なのに文脈が噛み合わない」問題は減ると思います。
6. 本記事での持ち帰りポイント
3社は同じGPU会社に見えても、勝ち筋が違う。
NVIDIAはAI計算基盤、AMDはCPU+GPUとオープン戦略、IntelはCPU基盤と内蔵GPUが出発点になる。
企業名を見たら、まず「どの市場で、何を武器にしている話か」を確認する。
今回覚えなくていいこと: 四半期ごとのシェアや製品名の細部は暗記不要です。まずは3社の勝ち筋の違いだけ押さえればよいかと考えます。
7. 本シリーズのロードマップ
第1回:GPUとは何か(なぜこんなに分かりにくいのか)
第2回:GPUメーカーは何者なのか(本記事)
第3回:GPUの歴史と転換点
第4回:いま売られているGPU製品の地図
第5回:GPUシェアの見方と、これからの勢力図
次回予告: 第3回では、GPUが「ただのゲーム用パーツ」から「AI時代の中核」へ変わった歴史と転換点をたどります。


参考・出典
⟦S1⟧ NVIDIA, Corporate Timeline
⟦S2⟧ NVIDIA, NVIDIA in Brief
⟦S3⟧ NVIDIA Newsroom, NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2026
⟦S4⟧ Reuters, Nvidia CEO to defend AI dominance as competition intensifies
⟦S5⟧ Jon Peddie Research, Q1’25 PC Graphics Add-in Board Shipments Increased 8.5% From Last Quarter Due to NVIDIA’s Blackwell Ramping Up
⟦S6⟧ Tom’s Hardware, AMD's desktop GPU market share hits all-time low as Nvidia extends its lead
⟦S7⟧ NVIDIA Newsroom, NVIDIA Blackwell GeForce RTX 50 Series Opens New World of AI Computer Graphics
⟦S8⟧ AMD, Corporate Information
⟦S9⟧ AMD, AMD Announces Completion of ATI Acquisition
⟦S10⟧ AMD, AMD Instinct MI300X
⟦S11⟧ NVIDIA, NVIDIA H100
⟦S12⟧ AMD, AMD Instinct MI350 Series and Beyond: Accelerating the Future of AI and HPC
⟦S13⟧ AMD, ROCm
⟦S14⟧ AMD ROCm Docs, HIPIFY Documentation
⟦S15⟧ AMD, AMD Reports First Quarter 2025 Financial Results
⟦S16⟧ AMD, AMD Unveils Vision for an Open AI Ecosystem at Advancing AI 2025
⟦S17⟧ AMD, AMD and its Partners Share their Vision for “AI Everywhere, for Everyone” at CES 2026
⟦S18⟧ AMD, AMD Achieves First TSMC N2 Product Silicon Milestone
⟦S19⟧ Intel, Intel Launches Arc A-Series Discrete Graphics Family for Mobile
⟦S20⟧ Intel, oneAPI: A New Era of Heterogeneous Computing
⟦S21⟧ Intel Newsroom, Computex: Intel Unveils New GPUs for AI and Workstations
⟦S22⟧ Intel Newsroom, Intel to Expand AI Accelerator Portfolio with New GPU
⟦S23⟧ Jon Peddie Research, Global Add-in Board Market $8.8 Billion in Q3’25 With a CAGR of 0.7% to 2029
⟦S24⟧ Tom’s Hardware, Latest GPU market analysis shows Nvidia losing ground to AMD — and Intel cracks the 1% share milestone for the first time
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