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1月 20日の物語C

1月20日はマイカーチェックデーだ。朝の冷たい空気の中、彼は車庫のシャッターを開け、愛車のボンネットに手を置いた。エンジンオイル、タイヤの空気圧、ブレーキ。一つひとつ確かめる所作は、まるで今日という一日を丁寧に迎えるための儀式のようだった。
 ダッシュボードに置いた小さなルビー色のキーホルダーが朝日を受けて光る。1月20日の誕生石はルビー、宝石言葉は「情熱」。彼にとってこの石は、仕事に追われて忘れがちな初心を思い出させる合図だった。
 点検を終え、家の前の花壇に目をやる。冬の土の中から、金鳳花(キンポウゲ)が小さな黄色をのぞかせている。誕生花の花言葉は「無邪気」。幼いころ、何も考えずに風を追いかけて走った記憶が、ふいに胸を満たした。
 今日は少し寄り道をしよう。彼はそう決め、車を走らせた。
 向かった先は、久しぶりに顔を出す町の修理工場だった。点検の合間に、工場の主人とコーヒーを分け合う。仕事の話、家族の話、取り留めのない笑い。ふと壁に貼られた紙切れが目に入る。
「幸福は分かち合うように作られている。」ラシーヌの言葉だという。
 彼は頷いた。車も、人も、気持ちも、手入れを怠れば軋む。けれど、誰かと分け合えば、また走り出せる。
 帰り道、彼は花屋に寄り、金鳳花を一輪買った。家に戻ると、ルビー色のキーホルダーの隣に花を飾る。情熱と無邪気、その間にあるのが今日という日だ。
 エンジンを切った静けさの中で、彼は思う。点検したのは車だけじゃない。分かち合う準備が、心にも整ったのだと。


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