万博たけのこ 春は、土の中からやってくる
春は、目に見える前に、土の中で始まっている。
その気配を、少しだけ確かめたくて、
万博記念公園へ
たけのこを買いに行った。
朝10時、整理券をもらう。
68番目。
思っていたよりも人が多い。

けれど、その「並ぶ」という行為も、
どこか春らしい気がした。
急がない時間。
待つことが許される季節。
一度、家に戻る。
ベランダのチューリップは、もう咲ききっていた。
花を落とす。
来年のために。
6年目のゆずには、小さな蕾。
まだ何も始まっていないようで、
ちゃんと始まっている。
再び公園へ戻ると、
たけのこが並んでいた。

大きなものは、もうない。
けれど、少し形の悪いものが残っていた。
それでいいと思った。
むしろ、そちらのほうが、
どこか自然に近い気がした。
家に持ち帰り、皮を剥く。
水でゆでるだけでいいと言われた。
それくらい、新しい。

鍋の中で、静かに火が通っていく。
若竹煮にして、口に運ぶ。
やわらかいのに、芯がある。

春というのは、
こういう味がするのかもしれない。
小さいものは、炭で焼いた。
皮のまま、火にかける。
少し焦げた香りと、湯気。

子どもたちが笑っていた。
春は、外に探しに行くものではなく、
こうして、手に取れるものなのかもしれない。
土の中から出てきて、
台所を通って、
誰かの体に入っていく。
それだけのことが、
なんだか少し、ありがたい。
