漫画構想① 八千代さんは、メシウマ女だってバレたくない! 第42話
中学三年時に、八千代さんが保育園に迎えに行くと、保育園側から不審に思われ、児相に相談されてしまい、児相から一郎もろとも呼び出しをくらいます。
そこで八千代さん。
「弟のことは私が見てます」
「え?でも貴方、中学生ですよね?」
「はい。何か問題ありますか?」
「いえ……中学生がそういうのはちょっと、ダメなんじゃないかな?」
「ダメかどうかは、弟の健康状態とか見てもらってから言ってもらえませんか?」
「いや……ただ普通は……」
「普通だとか言ったら、職員さんの見解になりますよね?」
「ただそうとは言っても……」
「弟に栄養状態が悪かったり、虐待の兆候見られますか?」
「……うーん……ただやはり、きちんと大人が見るべきだと思うんですよ。そこはね。それが出来てないとなると……」
そこで一郎が口を挟む。
「確かに娘の八千代に色々やらせてしまってるのは申し訳ないと思っています。ただ、虐待もしていて、ご飯もろくに与えていない親と、うちの八千代を同類に扱われるのは心外ですな」
職員「いや……そこまでは。ただ大人が常に居ないとダメなんじゃないかと……」
八千代「ダメかどうかは、弟が決めることじゃないですか?」
一郎「児相は職員さんの見解で全て決めますか?それとも、息子が望んでいない施設生活を無理やりさせるつもりですか?」
職員「でも……相談があった以上は……ねぇ?」
八千代「では、弟がもし一度でも私が嫌だとか言ったり、虐待の兆候があったら、どうぞ遠慮なく連れて行って下さい」
職員「……分かりました」
実は職員は銀次郎が心配なわけでもなく、ただ保育園側から責められるのが嫌で、しゃべっているだけだった。
そして保育園の先生も、出す食事が「不味い」と言われるのが気に入らなかった。「アネのご飯食べた」と言い出す銀次郎に、若い保育園の先生は、自分より若い八千代に変な嫉妬心のようなものを抱いていたのだった。
保育園の木下ナツメ(21)
ナツメ「銀次郎君?お昼の時間だよ?」
銀次郎「……やだ」
ナツメ「他のお友達は食べてるよ?ちゃんと」
銀次郎「まずいもん」
ナツメ「ねぇ?銀次郎君だけだよ、そんなこと言ってるのは?」
銀次郎「アネのご飯がいい」
ナツメ「ね?お友達もみんな食べてるし……」
(またお姉さんのことかよ)
ナツメの心の中「好き嫌いが激しいとかじゃないよな……これ」
16時、迎えに来る八千代さん。
八千代「すいません。いつもいつもドベの方で」
ナツメ「銀次郎君、お姉さんだよーーーー」
銀次郎「あねーーーー!!!!」
八千代「はいはい。ちゃんと良い子にしてた?」
ナツメ「ところでお姉さん?」
八千代「はい?」
ナツメ「いえね……ちょっと聞きたいんだけど、銀次郎君って好き嫌い激しい方なのかな?」
八千代「一応何でも食べますけど……」
ナツメ「いえね、お昼あんまり食べないんですよ。特にお姉さんのご飯が食べたいってばっかり言って」
八千代「銀ちゃん?良い子にしてるって言ってたよね?」
銀次郎「何?」
八千代「保育園でご飯ちゃんと食べてる?」
銀次郎「だってまずいもん」
八千代「ねぇ?先生困ってるでしょ?」
ナツメ「いいのいいの!!!無理しなくても!!!!お姉さんのご飯そんなに美味しいのね?」
銀次郎「うん。ナツメ先生も食べる?」
ナツメ「先生は悪いからいいよ」
八千代「すいません。食べるように言っておきますので、ご迷惑おかけします」
ナツメ「いいのいいの、気にしないで」
(何この子、めっちゃ可愛いくせに、料理もお上手で……私なんて包丁すらほとんど握ってないのに)
翌日
ナツメ「あら?銀次郎君、今日はお昼食べるのね」
銀次郎「アネが、食べないとご飯出さないって言った」
ナツメ「あらあら……じゃあちゃんとお姉さんの言うことは聞くのね。えらいえらい」
(なにこいつ、私の言うことは聞かないのに、あんな中学生の子の言うことは聞くんだ)
八千代さん迎えに来る
八千代「すいません。今日は正真正銘のドベですね」
ナツメ「今日は銀次郎君、ちゃんと食べましたよ」
銀次郎「あねー!!!!まずかった!!!!」
八千代「作ってもらった人に悪いでしょ?そんなこと言わないの」
(何?中学生でお料理も出来て、人間も出来てるって何?)
ナツメ「お姉さん、そういえば中学三年生だっけ?」
八千代「そうですけど……」
ナツメ「ちょっと聞きにくいんだけど、ご両親はお忙しいのかな?」
八千代「母は離婚してないですし、父は会社やっててめちゃくちゃ忙しくて……それでも朝は弟を送ってくれてますけどね」
ナツメ「ふぅん……」
(親が機能してないってことで児相に垂れ込もうかな)
児相から後日連絡
「いや~……あのお姉さんすごいね……もう私40歳なのにあんな中学生に啖呵切られちゃって……確かに家族構成は歪ですが、お姉さんがものすごくしっかりしてやってるから、問題ないと思いますよ。現に銀次郎君でしたっけ?健康状態には問題ないんですよね?」
園長先生「ナツメ先生?ちょっと心配し過ぎだったみたいね」
ナツメ「はい……私も銀次郎君を心配して言ったのですが……」
(何なのよ……これじゃ私がただのバカみたいじゃない)
園長先生「ただ、中学生が家のこと全部やってるのは異常なことだし、銀次郎君に変な兆候見られたら教えてね。だけど、園の食事が食べられなくなるほど美味しいって、どんなの作ってるか気になるわね」
ナツメ「はい……」
(みんな、あのお姉さんの味方かよ!!!)
八千代「またまたドベですね。すみません」
ナツメ「いえいえいいのよ。受験勉強だとか授業で忙しいから仕方ないわよね」
八千代「本当にすみません」
ナツメ「ところでお姉さん、高校には行くのよね?あんまり遠い所だと大変になるんじゃない?まだ銀次郎君一年あるし」
八千代「なので、園からそんなに遠くない高校に行きたいなって思ってます。もう本当に弟中心の生活になっちゃってますね」
ナツメ「へぇ……ところでお姉さん、どちらの高校に行かれる予定?」
八千代「すぐ近くの南高です(偏差値63)。受かればいいんですけどね」
ナツメ「へぇ……頭いいのね」
(料理も出来て美人で、しかも頭もいいだと?)
八千代「そんなでもないですよ」
ナツメ「ところで、お姉さん?ちょっとお願いしてもいい?」
八千代「どうかしました?」
ナツメ「ちょっとお姉さんのお料理……ご馳走になるっていうのは……いえ!!!ちょっとね……園の食事の参考にしたいと思って!!!」
八千代「いいですよ。いつもご迷惑おかけしてますし」
銀次郎「ナツメ先生、うちにくるの?やった!!!!」
八千代「弟も喜んでますし、ぜひお越しください」
ナツメ「えぇ……じゃあ明日……」
次の日の夕方
ナツメ「……聞いてはいたけど、デカい家だな」
ナツメ「ごめんなさいね、お姉さん無理言って」
八千代「いえいえ……でも私のご飯、すごく見た目地味ですよ?そんな大した物でもないし」
ナツメ「いいのいいの。私も大したことしてないし」
銀次郎「ナツメ先生!こっち来てよ!!!」
ナツメ「あらら……園にいるよりも何か元気だね、銀次郎君」
(なにこれ……めちゃくちゃキレイじゃん。掃除も行き届いてるし……何この完璧女子?)
夕方7時、一郎も帰ってくる
一郎「あ、先生こんばんわ」
ナツメ「お父さん、どうも無理を言いますね」
銀次郎「ナツメ先生、父者ねぇ、いつもアネに怒られてるんだよ」
八千代「余計なこと言わないの」
一郎「先生。でもそれは事実ですよ。わっはっは!!!」
八千代「ちょっとは恥ずかしがれ!!!」
出てきた料理
八千代「漁師の岩間さんにスズキと平貝とトコブシもらったから、今日は割と豪華だよ」
一郎「ふむ……確かにいつもより豪華だな」
今日のご飯
トコブシの炊き込みご飯
瓢亭風ゆで卵
スズキのアラの潮汁
スズキの刺身と煮付け
平貝のバターソテー
茄子とほうれん草のお浸し
ナツメ「????????」
(料亭????)
ナツメ「あの……お父さんは手伝われないんですか?」
一郎「はい。この家ではワシは立派な役立たずですから」
八千代「偉そうに言うな!!!」
ナツメ「じゃあ……これをお姉さんが全部??え?え???」
八千代「何かインスタ映えしたりとか、そんな料理じゃなくてごめんなさいね」
ナツメ「いえ……って、うっま!!!!この炊き込みご飯……過去一美味しいかも……それにこのゆで卵!!!!半熟だ……こんなの、お店でしか食べたことない。それにこのお吸い物も……生臭みもなくて……この貝のも……甘い!!!」
八千代「美味しいのは漁師のおじさんのおかげですよ」
(銀次郎君、見たことないくらいバクバク食べてる)
(全ての保護者の中で一番優秀なのは実はこの子なのでは?……児相なんてとんでもなかったわ)
ナツメ「ごちそうさまでした」
八千代「そんな面白みのある食事じゃなくてすみませんね」
ナツメ「謙遜し過ぎですって。正直に言って、お姉さんの料理、多分私の過去食べた食事の中で一位かも」
八千代「いやいや!!過大評価ですよ」
ナツメ「いえ……でもなんだか、貴方を見てると、自分が何も出来ない感じがしちゃうのよね」
八千代「毎回迎えに来るのドベで迷惑かけてるのこっちじゃないですか」
ナツメ、なんか感極まって泣き出す
銀次郎「ナツメ先生、何で泣いてるの?」
ナツメ「ごめんなさい……本当に……銀次郎君の前でみっともないね」
八千代「先生????」
ナツメの中で、児相に連絡してしまうほど嫉妬した自分や、そして目の前の中学三年生に敗北した変な感情がぐちゃぐちゃに襲ってしまったのだった。
ナツメ「いえいえ……なんでだろ……本当に」
一郎、何かを察する
一郎「先生。うちの娘は特別ですよ。だって死んだうちの母親が料亭の女将で、徹底的に料理叩き込まれましたからな」
八千代「そういうの言わないでよ。恥ずかしい」
