【かにみそ】倉狩聡さん/あらすじ・感想
人を食べるカニとの奇妙な共同生活
あらすじ
無気力な20代無職の主人公は、ある日浜辺で一匹の小さなカニを拾います。
そのカニは人の言葉を話し、よく食べる。
最初は奇妙ながらも穏やかな日常でした。
主人公は働き始め、さまざまな食べ物を与えながら、カニとの生活を続けていきます。
しかしある日、主人公は衝動的に恋人を殺してしまいます!
「カニ……これ、食べるかな」
与えたその瞬間から、カニは【人肉の味】を覚えてしまった——。
ホラーでありながら、どこか切なく、愛おしい。
倉狩聡さんによる異色の感動ホラー作品です。
作品の魅力
本作の魅力は、
「グロテスクなのに愛おしい」という不思議な読後感にあると思います。
人を食べるカニ。
普通に考えれば恐ろしい存在のはずなのに、このカニがとにかく魅力的なんです!
コミカルで、飄々としていて、妙に愛嬌がある。
主人公との掛け合いもテンポが良く、読んでいて思わず笑ってしまう場面すらあります。
だからこそ怖い。
こんな生活、続くわけがない。
読んでいる間ずっと、穏やかな日常と破滅の予感が隣り合わせになっているんです。
また、本作は単なるグロホラーではありません。
「食べる」という行為を通して、
生きることの
命をいただくことのありがたみと残酷さ
友情や愛情
孤独
依存
喪失感
そういったテーマまで描かれているように感じました。
捕食する側と、される側。
その関係が少しずつ歪み、逆転していく展開も印象的でした。
そして何より、最後。
ホラーだったはずなのに、なぜか胸が締め付けられる。
不思議な切なさと余韻が残る作品でした。
感想(ネタバレあり)
めちゃくちゃ好みでした。
グロい。
人は死ぬ。
人肉も食べる。
なのに、こんなにもほのぼのとしているホラーがあるんだと驚きました。
特に、主人公とカニの日常。
2人……いや、1人と1匹のやり取りが本当に心地いいんです。
カニの飄々とした性格が絶妙で、
怖い存在のはずなのに、どんどん愛着が湧いてくる。
でも同時に、「こんな生活、いつか壊れる」
という不安がずっと付きまとっていました。
そして、恋人を殺害してしまうシーンを境に、物語の空気は大きく変わります。
カニはただ生物として食べているだけなのに、
そこに人間側の倫理観が絡むことで、一気に恐ろしくなるんですよね。
それでも私は、この物語を単なる狂気として読めませんでした。
むしろ、奇妙な友情や愛情の物語として感じた部分が大きいです。
だから最後は切なかったし、死を悟っても堂々としているカニの姿にホラーなのに泣きそうになりました。
そして読後、無性にカニが食べたくなり、スーパーで購入して食べました。

【百合の火葬】もとても切ない植物ホラーでした。母の影を追い求める主人公と謎の女。かにみそとはテイストが違い、静かで美しいホラーだなと感じました。
おわりに
かにみそは、グロテスク・人外・愛情や友情・切なさ
その全部が混ざり合った、かなり異色のホラー作品でした。
怖いのに愛おしい。
気持ち悪いのに、どこか温かい。
そんな矛盾した感情を味わえる一冊です。
後味の悪いホラーが好きな方にも、
人外との奇妙な関係性が好きな方にもおすすめしたい作品でした。
あと、読むと高確率でカニが食べたくなります。
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