スマホが「凶器」になる日——あなたのパスワード、今日確かめられますか
「サイバー防災」という言葉を初めて聞いたとき、少し笑いそうになった。
防災といえば、備蓄品と避難経路だと思っていた頃の話だ。
6月9日は「サイバー防災の日」だ。
6と9で「ロック」。スマートフォンやパソコンのセキュリティを、年に一度見直す日として制定されている。
エンジニアの私が、最も油断していたもの
複写機会社でエンジニアとして長く働き、2023年に独立した。
システムのことはわかっているつもりだった。
「危ないサイトには近づかない」「よく知らないリンクは踏まない」。
それで十分だと、どこかで思っていた。
ところが独立後、改めてパスワードを棚卸しすると、ぞっとした。
同じパスワードを、複数のサービスで使い回していた。
古いメールアドレスで登録したまま、何年も更新していないアカウントがあった。
2段階認証を設定していないサービスが、まだ数十件残っていた。
「わかっているつもり」と「対処している」は、まったく別物だった。
2011年3月、あの朝に学んだこと
今でも覚えている出来事がある。
東日本大震災の約1週間前、小さな地震をきっかけに「ゆれくる」という防災アプリをインストールした。
「なんとなく気になって」という、直感に近い動機だった。
震災当日、私は人間ドックを終えて自宅にいた。
会社には泊まった同僚もいた。
あのとき「運というものがあるとしたら、こういうことかもしれない」と思った。
同時に気づいた。
準備は、何かが起きてからでは遅い。
「なんとなく気になる」という感覚が動いたとき、すぐ動けるかどうかが分かれ目だ。
サイバーセキュリティも、まったく同じ構造をしている。
60代になってわかった「デジタルのリスク」
60代になってスマートフォンの使い方が変わった。
銀行アプリ、証券アプリ、医療記録、確定申告。
日常の重要な情報が、ほぼすべてスマホの中に入っている。
ひとつのパスワードが漏れれば、連鎖して複数のアカウントが突破される。
「自分は狙われない」という感覚は、根拠のない楽観だ。
フィッシングメールは以前と比べ物にならないほど精巧になっている。
AIが文章を生成するようになった今、「日本語が変だから安心」という判断基準は、もう通用しない。
エンジニアとして技術の変化を追ってきた私が言うから、これは本当のことだ。
今日、15分でできること
難しいことは何もない。
まず「パスワードマネージャー」を使うことを勧める。
私はiCloudのキーチェーンを使っている。
複雑なパスワードを自動で生成し、記憶しなくていい仕組みを作る。
次に、主要なサービスの2段階認証を確認する。
銀行、Google、Apple ID、SNS——この5つを今日中に確かめるだけで、リスクは大きく下がる。
「後でまとめてやろう」は、永遠に来ない。
15分あれば、今日から始められる。
安全は、静かに守るものだ。
何か起きてから慌てるより、何も起きていない今日に少し動く。
あの震災前の「ゆれくる」インストールと、本質は同じだと思っている。
あなたのパスワード管理、今日一度だけ確かめてみませんか。
もし「確かめてみた」「自分もやっていなかった」と思ったら、スキを押してもらえると励みになります。
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