私はBandcampを推している ※追記あり
「推したい会社」というお題を目にした時、真っ先に浮かんだのはBandcampだった。
2007年創業のアメリカの企業Bandcamp, Inc.の名前は、多くの音楽ファン特に海外の音楽を多く聴く人にとってはお馴染みのものだろう。
彼らが2008年から運営している音楽配信プラットフォームBandcampは、パソコン版・モバイル版・アプリ版の形式で利用出来る。
一番メジャーな使われ方は、音源データやメディア(CD、レコード、カセットテープ等)、アーティストグッズの販売。他にも試聴パーティーのようなイベント開催や、楽曲についての情報発信の役割も担っていて、まさに音楽ファン・アーティストにとって天国のような場所だ。
彼らの言葉では、Bandcampはこう定義されている。
Bandcamp は熱量ある音楽ファンがアーティストとつながり、ダイレクトにサポートすることができるオンライン版レコードショップ&音楽コミュニティです。
楽曲を公開しているアーティストやレーベルの規模も様々で、世界中の誰もが知る歌姫・Björkのような大規模なアーティストもいれば、ベッドの上でこっそり音楽制作をしている学生もいるし、ジャンルに特化した知る人ぞ知るレーベルや名前を聞いたことのあるレーベルまで様々だ。中には、Bandcampでしか楽曲を聴けない・購入出来ないアーティストもいる。
さてさて。
私がBandcampを推す理由は、大きく分けて次の2つだ。
【1】新しい音楽を教えてくれるプラットフォームだから好き
・世界中の音楽を試聴&購入出来る
私はいつも新しい音楽を探している。どんなふうに探しているのかは、以前こちらの記事で取り上げた。(記事内ではもちろん、Bandcampにも触れている。)
初めてBandcampを利用する人が特に驚くのは、アルバムの多くが全曲フルで試聴出来る点だろう。私はびっくりした。
SpotifyやiTunesのように数秒間というわけではなく、アーティスト側が公開している曲であれば無料でフル試聴可能(回数制限あり)。まるで、レコード屋を歩き回ってあれこれ試聴しながら音楽を探す時のような体験が出来る。
また、楽曲の購入時に購入者側が値段を決められることも大きな特徴だ。最低金額が決まっている場合はその金額で購入するもよし。応援の気持ちを込めて多めに払ってもよし。
Bandcampでは多くのインディーズミュージックが扱われていて、来日公演をしてくれる規模とは言い難いアーティストもたくさんいる。そんな時、せめてもの気持ちで金額を上乗せ出来るのはファンとしても嬉しいし、何よりアーティストの活動の支援になる。
この「アーティストの支援」というのは、Bandcampにとってかなり重要な要素だと私は感じている。(具体的な取り組みについては後述。)
・音楽をキュレーションしてくれる
また、私が特に重宝しているのはBandcampスタッフによるアルバムのおすすめ記事(ジャンル別や発売時期、その週の新作に焦点を絞ったものなど)や、注目の新着アルバムについての情報。こうしたキュレーションの役割も担っているのも、Bandcampの特徴だ。
例えば下の記事のように、「7月にリリースされたメタルアルバム傑作選」といった調子で様々な記事が出ている。記事は英語だが、翻訳ツールを使えば十分読めるのでご安心を。
Bandcampで音楽を発信しているアーティストの多くは規模が小さいが故に情報があまり出ていないし、彼らの音楽について語る文面を全く目に出来ないことがある。そうした状況下でBandcampからの情報やレビューの発信は大変助かる。
そもそも、数多の音楽の中からとっておきの数枚を見つけ出して紹介してくれるというのが大変ありがたい。
新しい音楽を探したくなったら、まずはBandcampを覗けばいい。ページを開くだけで、数分前の自分が知らなかったお気に入りの一枚に巡り合える。
【2】アーティストを直接的に支援しているから好き
Bandcampのミッションには、こんな文言がある。
音楽に癒しの力があるとすれば、できる限り多くのアーティストがその力を活用できるよう、手助けをするシステムが存在するべきです。だから私たちは、ファンがアーティストを直接サポートすることを容易にし、それによりファンが自ら愛する音楽のクリエーションに貢献し、またアーティストが音楽を創造し続けることを助ける方法として Bandcamp を立ち上げました。
Bandcamp のミッションは、音楽の癒しの力を広め、アーティストが音楽ファンからの直接的なサポートをとおして成長し、またファンが音楽の世界を探求するべく集うこと自体が、アーティストのクリエーションにつながるコミュニティを構築することです。
では、彼らはどのようにアーティストを支援しているのだろうか。
音楽配信を主とするプラットフォームは、アーティストから手数料を受け取って収益を得ている。もちろん慈善事業ではないのだから、これについて文句を言うつもりは毛頭ない。
しかしBandcampがすごいところ、私がBandcampを推してしまう最大の理由は、彼らがミッションを忘れずブレずに行動するところ。
そのブレない行動の一番わかりやすい例が、Bandcampがコロナ禍の最中に始めた“Bandcamp Friday"の取り組み。
2020年の3月から始まったこの取り組みは、毎月の最初の金曜日(Pacific Time)の売上分からは手数料を取らず、収益のほぼすべて(支払い手数料を除く約93%)をアーティストに返還するというもの。2023年8月以降では、8/4、9/1、10/6、11/3、12/1に実施される。
本記事を公開したのは2023/8/4の17時。つまり2023年8月の“Bandcamp Friday"が始まった直後というわけだ。この機会に、ぜひ“Bandcamp Friday"がどんなものかを知って利用してもらいたい。
“Bandcamp Friday"がリリースされた時期、コロナ禍における音楽業界全体の苦難は国内外のあらゆるメディアで報じられていた。私も、行くはずだったライブが中止になって悲しい思いをしていた。
しかしアーティスト側にとっては、「悲しい」では済まされない。ライブが無くなり収入が減る、更にライブ会場が経営に行き詰まり破綻する、アーティストたちが次々に音楽を諦める……。辛い、辛すぎる。だって音楽好きがどれだけいても、音楽を作る人と演奏する機会が消えてしまえば音楽は聴けない。
そんな状況下で、Bandcampはいち早く“Bandcamp Friday"を立ち上げている。おそらく、彼らの事業にとってコロナ禍はそこまで酷い影を落とさなかったのだろう。とは言え、イベントの中止などで痛手を負ったのは容易に想像出来る。(実際、カリフォルニア州オークランドにあるレコードショップ/パフォーマンススペースはコロナ収束まで閉鎖されている。)
それでも彼らはアーティストを守った。音楽を守った。その直接的な支援の姿勢が、私にはとても眩しく思えた。
更に、これが一過性のものではなく現在も続いているのが素晴らしい。彼らはミッションをお飾りにせず、実践し続けている。
コロナ禍の音楽業界では、精神面・資金面でのあらゆるエンパワーメント施策が行われた。世界的なアーティストが自宅で弾き語り配信をしたり、国際組織とコラボして様々なアーティストのライブ映像を流したり……。
しかしこうした取り組みは、アフターコロナと言われる今ではほとんど行われていない。あくまで一時的な取り組み、ある意味お祭り騒ぎだったと表現してもいいだろう。
だが、“Bandcamp Friday"は今も続いている。企業のミッションを表現した、音楽を本気で守ろうとしている。これは、ブレずに信念を貫く音楽に対して誠実な姿勢そのものだ。
だから私はBandcampを推している。推しちゃうよ、こんな姿を見てしまったら……。
おまけ
・私がBandcampで見つけた音楽
もしもBandcampがなかったら見つけられなかった、大好きな音楽がたくさんある。その中からいくつかのアルバムをご紹介する。
Star-Crossed / Kareem Ali
知ったきっかけはこちらの記事。
Remember Rainbow Bridge / Croatian Amor
知ったきっかけはこちらの記事。
Life On The Edge Of You / Lontalius
Bandcampトップページの下の方に、「注目の新着ミュージック」という項目がある。

ここに並ぶ音楽を色々試してみるのが好きで、偶然見つけたのがLontaliusだった。かなりツボで大好きなアルバム。改めて、Bandcampありがとう……と思った次第。
・日本人アーティストの音楽も聴けるBandcamp
本記事で初めてBandcampを知った方は、「Bandcampって海外のマニアックな音楽しか扱ってないのかな」とか「英語ばかりで使いにくそう」という印象をお持ちになったかもしれない。
ところがどっこい、このサイトは一部日本語表記になっているし、数は多くないが日本のアーティストの音楽も試聴&購入出来る。数組のアーティストを載せておくので、覗いてみてほしい。
RUBEDO/ALBEDO -Songs for FUJI ROCK FESTIVAL 2019, 2021-
平沢進+会人 / Susumu Hirasawa + EJIN
Kumoyo Island
Kikagaku Moyo/幾何学模様
Amiko (Original Soundtrack)
Ichiko Aoba
こんな調子で、Bandcampは色んな音楽が聴けるプラットフォームだ。ぜひ、レコード屋にふらりと足を運ぶ時のような気持ちで、Bandcampを訪れてほしい。
そしてBandcamp Fridayでアーティスト支援をしてもよし、好きな音楽を探してもよし、あなたの音楽ライフをより楽しいものにしてほしい。
一介のBandcampファンは、そんなことを思いながら今日もBandcampで音楽を聴く。
【追記】
本記事の公開後、不安になる情報が入って来た。音楽ライセンス会社SongtradrによるBandcampの買収とレイオフに関する話題だ。詳細はこちらの記事にまとまっている。
規模の小さいアーティストでも利用しやすく、アーティストの知名度問わずピックアップされるBandcamp Dailyなどの読み物が魅力だったBandcampだが、スタッフの半分が解雇されている(Bandcamp Dailyは続くそうだが……)。
私が感じているBandcampの魅力が損なわれず、アーティストたちに寄り添い続けるBandcampであり続けてくれればいいのだけれど……。
【追記】
2025/9/1から、月額13ドルのサブスクリプション制の新サービス、Bandcamp Clubを開始したとのこと。
月1回受け取れるキュレーターによるデジタルアルバム、アーティストへの独占インタビューの閲覧、コミュニティスペースやリスニングパーティーへの参加がパッケージになっているそうです。
【追記】
2026/1/13、生成AI音楽の全面禁止を正式に発表。推せる……!
2023年上半期に聴いた400枚弱のアルバムの中から、必死に選んだアルバム10選はこちら。
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© 2023 Aki Yamukai
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