水面心理相談室#21 「“いい人”をやめたくなった日の心理」|心理学|HSP|人間関係


この番組は、読むラジオをテーマに、皆様からお寄せいただいたお便りの中から、ひとつの心の悩みを取り上げ、澪と相馬が心理学の視点を交えながら、静かに言葉を交わしていく相談室です。
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本篇はココカラ
澪
「それでは、本日のお便りです。」
“私は昔から、人にやさしくしようとしてきました。
困っている人がいたら、できるだけ助ける。
頼まれたら、なるべく断らない。
誰かが不機嫌そうにしていたら、自分が少し我慢して場を整える。
そうやって過ごしてきました。
でも最近、ふと思ってしまうんです。
もう、いい人でいるのに疲れたなって。
本当は休みたいのに、頼まれると断れない。
本当は嫌なのに、笑ってしまう。
本当は傷ついているのに、相手の事情を考えてしまう。
そして、そんな自分にも疲れてしまいました。
こんなふうに思う私は、冷たい人間になってしまったのでしょうか。
いい人をやめたいと思う私は、悪い人なのでしょうか。”
澪
「“いい人でいるのに疲れた”。とても静かな言葉ですけど、深い疲れがにじんでいますね。」
相馬
「うん。でもこれは、悪い人になりたいという意味ではないと思う。」
澪
「では、どういうことでしょう。」
相馬
「自分を置き去りにするやさしさを、もう続けられなくなったんだと思う。」

🫧 “いい人”でいたかった理由
相馬
「まず、いい人でいようとしてきたこと自体は、悪いことじゃない。」
人にやさしくする。
相手の気持ちを考える。
困っている人を放っておけない。
場の空気を壊さないようにする。
それは、とても大切な力です。
誰かの痛みに気づけること。
相手の立場を想像できること。
自分さえ良ければいいとは思わないこと。
そういうやさしさは、本来、とても美しいものです。
澪
「では、なぜ苦しくなってしまうのでしょう。」
相馬
「“やさしくすること”と“自分を消すこと”が、いつの間にか重なってしまうからだと思う。」
本当は嫌だった。
本当は疲れていた。
本当は断りたかった。
本当は、少し傷ついていた。
でも、それを言ったら相手が困るかもしれない。
嫌われるかもしれない。
わがままだと思われるかもしれない。
そう思って、何度も自分の気持ちを後回しにしてきた。
最初は、やさしさだったのかもしれません。
でも、少しずつ自分の本音を飲み込み続けるうちに、
やさしさの形をした我慢になってしまうことがあります。
澪
「“いい人”でいるために、自分の心の声を小さくしてきたのかもしれませんね。」
相馬
「うん。そして心は、ずっと黙っていられるわけじゃないんだと思う。」

🌙 いい人をやめたいのは、冷たくなったからではない
澪
「でも、そう思ってしまう自分を責める人は多そうです。」
相馬
「そうだね。やさしい人ほど、自分の中に生まれた怒りや疲れに驚いてしまうから。」
こんなことを思うなんて。
こんなに嫌だと感じるなんて。
もう関わりたくないと思うなんて。
自分は心が狭いのではないか。
前より冷たくなってしまったのではないか。
やさしさがなくなってしまったのではないか。
そうやって、自分を責めてしまう。
でも、怒りや違和感は、悪い感情ではありません。
それは心が、
「ここから先は苦しいよ」
「これ以上は無理だよ」
「ちゃんと自分のことも見てほしい」
と知らせてくれている合図です。
ずっと我慢してきた人ほど、
その合図が出たときに、自分を責めてしまいます。
でも本当は、冷たくなったのではありません。
自分を守る感覚が、少しずつ戻ってきただけなのかもしれません。
澪
「いい人をやめたいのではなく、都合のいい人でいることに疲れたのかもしれませんね。」
相馬
「うん。その違いは、とても大きいと思う。」

🌊 断る罪悪感は、やさしさの裏返し
相馬
「やさしい人ほど、断ることに強い罪悪感を持ちやすい。」
頼まれたのに断ったら、冷たいと思われるかもしれない。
相手が困るかもしれない。
自分だけ楽をしているように見えるかもしれない。
そう考えてしまう。
でも、断ることは攻撃ではありません。
相手を嫌いになることでもありません。
自分の限界を、相手に伝えることです。
澪
「断ることで関係が壊れるのではないか、と怖くなる人もいそうです。」
相馬
「あると思う。でも、無理をし続けないと保てない関係は、少しずつ自分を削ってしまうから。」
何でも受け入れることだけが、やさしさではありません。
疲れている時に、
「今日は少し休みたい」と言うこと。
気が進まない時に、
「今回は難しい」と伝えること。
相手の感情を全部背負いそうになった時に、
「そこまでは受け取れない」と心の中で線を引くこと。
それは、冷たさではありません。
自分を雑に扱わないための、小さな勇気です。
澪
「やさしさにも、休む場所が必要なんですね。」
相馬
「そうだね。ずっと差し出し続けたら、どんなにやさしい人でも空っぽになってしまうから。」

🫧 やさしいまま、線を引いていい
相馬
「大切なのは、いい人をやめることではなく、自分を消さないやさしさを覚えることだと思う。」
やさしい人のままでいい。
思いやりのある人のままでいい。
誰かの痛みに気づける人のままでいい。
でも、そのやさしさの中に、
自分を守る線を持っていい。
頼まれても、無理な時は断っていい。
傷ついた時は、傷ついたと感じていい。
疲れている時は、少し距離を取っていい。
それは、悪い人になることではありません。
誰かを大切にするのと同じくらい、
自分のことも大切にするということです。
澪
「いい人でいられなくなった自分を、嫌いにならなくてもいいんですね。」
相馬
「うん。むしろ、それは心が自分の味方に戻ろうとしている瞬間なのかもしれない。」
いい人をやめたくなった日。
それは、やさしさが消えた日ではありません。
これまで置き去りにしてきた自分の心が、
ようやく小さな声を上げた日なのだと思います。
あなたは冷たくなったのではありません。
悪い人になったのでもありません。
ただ、誰かのために使ってきたやさしさを、
少しだけ自分にも返したくなっただけ。
やさしいまま、線を引いていい。
思いやりを持ったまま、断っていい。
誰かを大切にしながら、自分を守っていい。
どうか、“いい人”でいられなくなった自分を責めないでください。
その違和感は、あなたの心が、
ようやくあなた自身の味方に戻ろうとしている証かもしれません。
最後まで読んでくれてありがとう。
今日は、誰かに向けていたやさしさを、
少しだけ自分にも返してあげてね。
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