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短編小説 no name story case5「白い壁」|毎日投稿|ショートショート

気づくと、四角四面の白い壁の中にいた。

生きていくうえで不自由はない。
食べるものも、眠る場所もある。

ただ、毎日が退屈だった。

壁の向こうから、ときおり
人の笑い声や、悲しみに泣く声が聞こえてくる。

けれど私は、
ただ息を吸って、吐いているだけ。

どれくらいの時が経ったのだろう…


ある日、壁が灰色に染まっていることに気づいた。

白かったころは、何も不安に感じなかったのに。
色が変わった途端、胸の奥がざわつく。

いても立ってもいられなくなる。

私は壁を殴る。
倍の反動が返ってくる。

蹴っても、体当たりしても、
衝撃はすべて自分に跳ね返る。

やがて、壁を破ることを諦めた…


代わりに、祈るようになった。

「いつも、ありがとう」

毎日、毎日、祈り続ける。

すると、ある日。

壁から、かすかな光が漏れ出した。

祈り続けるうちに、
壁は薄い氷のように透き通っていく。

手で触れると、
溶けるように、粉々に崩れた。

向こう側は真っ暗だ。

けれど、遠い場所から
一本の光が差し込んでいる。

そのとき、耳元で囁く声がする。

「本当にいいの?
 後悔しない?」

私は、少しだけ微笑む…


そして、歩き出す。

光の向こうへ。


「有難う」って、有るのは難しいと読みますね。

 人として有り続けることが、難しいのならば…

人は一人で生きていくのは難しい。

だから、「有難う」と私は祈る…

何度でも。

いつか、誰かに巡り会えるように…



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