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クレイトン・ロースンと不可能犯罪

クレイトン・ロースンというミステリー作家がいた。グレート・マーリニというマジシャンを主人公としたミステリーを中心に書いていたが、かなりの寡作家だったと記憶している。代表作に『帽子から飛び出した死』『棺のない死体』「この世の外から」「天外消失」などがあった。『棺のない死体』は創元推理文庫に入っていて、過去に一度復刊されたことがあるのだが、当時でも1000円したため、偶然見かけたときに持ち合わせがなく、見送ったまま買いそびれてしまった。
ロースン自身もマジシャンだったらしく、我孫子武丸氏は『8の殺人』の中で「泡坂妻夫みたいな人」と紹介している。

上記のとおり、クレイトン・ロースンはマジシャンをシリーズ探偵に起用しており、また自身もマジシャンだったからか、不可能犯罪への傾倒が強いようだ。
彼が活躍した時期はジョン・ディクスン・カーが活躍した時期でもあり、不可能犯罪の百花繚乱期とも言えそうだが、エラリー・クイーンが国名シリーズでパズラーを完成させた結果、パズラーの発展に終止符を打ってしまったように、カーとロースンの活躍が不可能犯罪ものを飽和状態にしてしまったとも言えそうである。これに先駆けてアントニイ・バークリーが「人間心理の追求」を訴えていて、アガサ・クリスティーやドロシー・セイヤーズは徐々に人間関係を重視するようになっていく。フランスではジョルジュ・シムノンが同傾向を示していたように思う。一方、アメリカでハードボイルドが台頭する一方、フリーマン・ウィルス・クロフツはイギリス独自のリアリズム型推理小説を完成させたようだ(クロフツは間違いなく鮎川哲也氏に影響を与えているように思う)。

ただ、こうした不可能犯罪もののリバイバルが日本と海外で足並みをそろえて1970年代に起こっているように見える。エドワード・D・ホックのサム・ホーソーンものと泡坂妻夫氏の亜愛一郎もの・曾我佳城ものがそれである。また、赤川次郎氏の『三毛猫ホームズの推理』や山村美紗氏の『花の棺』、笹沢左保氏の『求婚の密室』など、1970年代からまた密室ものが増え始めるような気がする。海外ではキャサリン・エアード『そして死の鐘が鳴る』、ジョン・スラデック『見えないグリーン』がある。
島田荘司氏の登場は一大画期だが、その土壌は1970年代に整いつつあったということだろうか。
記述に際し、『有栖川有栖の密室大図鑑』を参照した。
これ、先に新潮文庫から刊行されていて、手元にあるのはそちらである。未読でも知っている作品も多かったが、『見えないグリーン』や『求婚の密室』はこの本で知った。磯田和一氏の一口メモもおもしろかった。

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親魏倭王(元学芸員:考古学) 現在、経済的な事情もあって、一部記事を有料にしております。 記事購入と併せ、内容が気に入っていただけましたら支援していただけると助かります。