サバ缶は何を教えてくれるのか? ―見えない食品設計とHACCP―
前回、
「サバ缶はなぜ宇宙に行けたのか?」
という記事で、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の起源と、
安全は偶然ではなく、設計されている
という考え方を書きました。
では、
その“設計”とは、
実際に何を指しているのでしょうか。
サバ缶を見ると、
それが少しわかりやすく見えてきます。
忙しい日に、
ごはんにのせる。
味噌汁に入れる。
買い置きしておいて、
何も作れない日に助けてもらう。
サバ缶は、
日常の食卓を静かに支えている食品のひとつです。
でもサバは、
そもそも長く置いておける食品ではありません。
缶詰にすることで、保存しやすさまで設計されている食品
です。
そこに、
見えない食品設計
が見えてきます。
缶詰は「保存食」ではなく、設計された食品だった
缶詰は、
ただ食品を入れて閉じているだけではありません。
安全に保ちやすくするために、
いくつもの条件が重なっています。
たとえば、
密封しやすい構造
加熱工程を管理しやすい
外部から入り込みにくい
常温保管を前提にした設計
品質変化を抑えやすい包装
こうした積み重ねで、
食品の安定性が支えられています。
だから缶詰は、
ただ長持ちする食品
ではなく、
保存しやすさまで考えられている食品
と言った方が近いのかもしれません。
HACCPは「最後に調べる」より、先に整える考え方
HACCPというと、
工場の難しい管理に見えるかもしれません。
けれど本質は、
とても合理的です。
問題が起きてから対応するのではなく、起きにくい工程をつくる。
それがHACCPの考え方です。
完成品だけを見るのではなく、
どこで変化が起きやすいか。
どこを管理すると安定しやすいか。
を考える。
つまり、
検査だけではなく、
工程そのものを見る考え方です。
前回の記事で触れた
NASAと宇宙食の話も、
この思想につながっています。
CCPは「重要な場所だけを見る」考え方
HACCPでは、
CCP(Critical Control Point)
= 重要管理点
という考え方があります。
少し専門的に見えますが、
本質はシンプルです。
全部を同じ強さで管理するのではなく、重要な場所を見極める。
缶詰で考えるなら、
たとえば
加熱条件
密封状態
工程の再現性
などは、
重要な視点になります。
食品ごとに違っても、
考え方は同じです。
「全部を厳しく見る」ではなく、
重要な点を科学的に見る。
HACCPは、
そうした整理の考え方でもあります。
それは、暮らしの中にもある
ここまで読むと、
工場や宇宙食の話に見えるかもしれません。
でも、
少し視点を変えると、
もっと身近になります。
たとえば、
買い置きしやすい。
開けやすい。
扱いやすい。
保管しやすい。
忙しい日に、判断を減らせる。
こうした「使いやすさ」も、
食品設計の一部です。
缶詰。
レトルト。
冷凍食品。
コンビニ食品。
私たちの生活を支える食品の多くには、
見えない設計 があります。
安全だけではなく、
扱いやすさや再現性も含めて、
暮らしを支えているのかもしれません。
サバ缶が教えてくれること
サバ缶は、
ただの買い置きではありません。
ただの保存食でもありません。
そこには、
安全を、後から願うのではなく、先に整える
という、
食品安全の考え方が見えてきます。
HACCPは、
工場だけの専門用語ではなく、
「生活を支える食品」を見る視点にもなります。
そう思うと、
いつものサバ缶も、
少し違って見えてくるかもしれません。
前回の記事から読みたい方へ
HACCPの起源や、
NASAと宇宙食の話から読みたい方は、
こちらもどうぞ。
「サバ缶はなぜ宇宙に行けたのか?―HACCPはNASAが作った―」
前編として読むと、
今回の「見えない設計」の話も、
つながって見えやすくなります。
Yamatani Institute
Yamatani Institute は、
海外(米国)基準 × 日本語でわかりやすく翻訳する知的ブランド として、
HACCP・FDA・FSMA・食品安全を、
「暗記ではなく科学」 で整理しています。
食品安全を、
工場だけではなく、
生活者の視点でも翻訳していきます。
参考文献
厚生労働省「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/厚生労働省「食品衛生法改正とHACCPに沿った衛生管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028.htmlU.S. FDA
Hazard Analysis and Critical Control Point (HACCP) Principles & Application Guidelines
https://www.fda.gov/food/hazard-analysis-critical-control-point-haccp/haccp-principles-application-guidelinesNACMCF (National Advisory Committee on Microbiological Criteria for Foods)
Hazard Analysis and Critical Control Point Principles and Application Guidelines
https://www.fda.gov/food/hazard-analysis-critical-control-point-haccp/haccp-principles-application-guidelines農林水産省
HACCP(ハサップ)について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/haccp/一般社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会
缶詰の基本情報・製造と保存性に関する資料
https://www.jca-can.or.jp/ 一般社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会NASA
Food Safety Program for Space Has Taken Over on Earth
https://spinoff.nasa.gov/Spinoff2008/hs_3.html
家事と食品安全シリーズ(HACCP 生活設計)
Yamatani Instituteでは、
食品安全を、
工場や専門現場だけではなく、
暮らしの中の“見えない判断” からも整理しています。
「家事と食品安全シリーズ(HACCP 生活設計)」では、
保存・順番・温度・設計・判断負荷など、
生活を支える食品安全を、
生活者の視点で翻訳しています。
「“あとで食べよう”が、こんなに頭を使うなんて思わなかった」
食べる順番や保存の迷いから、
見えない家事負担と、小さな食品安全の判断 を考えた記事です。
https://note.com/yamataniinstit/n/n3d8b2830515d?from=notice
「作り置きは、料理より“判断”が大変だった」
作ることより、
「いつ食べるか」「どう置くか」「どう管理するか」。
作り置きにある判断負荷と、暮らしの中のHACCP的な考え方 を整理した記事です。
https://note.com/yamataniinstit/n/nc1bbca99a26c
このシリーズでは、
食品安全は暗記ではなく科学
という視点で、
暮らしを支える食品安全を、
整理していきます。
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ドラマ
「さばの缶づめ、宇宙へいく」
からHACCPに興味を持った方は、
第一弾の
「サバ缶はなぜ宇宙に行けたのか?
―HACCPはNASAが作った―」
も、つながって読めるかもしれません。
