見出し画像

“あとで食べよう”が、こんなに頭を使うなんて思わなかった

冷蔵庫を開ける。

昨日の残りのカレー。
半分だけ残った炒め物。
ラップをしたご飯。
少しだけ余った味噌汁。

「今日のお昼、これ食べようかな」

そう思った瞬間、
頭の中で、いくつもの小さな判断が始まる。

これは昨日だっけ。
一昨日だっけ。
温め直せば大丈夫かな。
ちゃんと冷蔵庫入れてたっけ。
子どもにも出していいかな。

でも、その判断を、
私たちはあまり“家事”として数えていない。

料理。
洗濯。
掃除。

そういう目に見える作業に比べて、
「あとで食べよう」を成立させるための判断は、
とても静かで、
名前がついていない。

でも実は、
毎日かなり頭を使っている。

忙しい日は特にそうだ。

帰宅して、
すぐご飯を作る余裕がない。

だから、
「昨日のうちに少し多めに作っておく」
「先に冷蔵庫へ入れておく」
「あとで温めれば食べられる状態にしておく」

そうやって、
未来の自分を助けている。

最近、作り置きサービスや冷蔵配送の食事サービスが広がっているのも、
きっと同じ理由だと思う。

“料理を代わりに作ってくれる”
だけではない。

「今日は何を食べるか」
「どこまで安全に置いておけるか」
「どの順番で食べるか」

そういう、
細かい判断の負担を減らしてくれている。

私は食品安全を学ぶ中で、
HACCP
(Hazard Analysis and Critical Control Point:
危害を予測し、
問題が起きる前に管理する考え方)

に触れた。

難しそうな専門用語に見えるけれど、
実は、
「あとで困らないように、
先に流れを整えておく」

という、
毎日の家事にも近い発想だった。

本質は、
「問題が起きてから気をつける」のではなく、
最初から無理の少ない流れを作る

という考え方に近い。

実は家庭でも、
私たちは似たことをしている。

帰宅後すぐ冷蔵庫へ入れる。

先に小分けにしておく。

食べる順番をなんとなく決めている。

“これは早めに食べよう”
と感覚で管理している。

それは、
特別な知識ではなく、
生活の中で自然に積み重なった工夫だった。

もちろん、
全部を完璧にはできない。

疲れて、
そのまま寝てしまう日もある。

冷蔵庫に入れ忘れて、
「あ…」となる日もある。

でも、
毎日ご飯を回している人は、
思っている以上に、
たくさん考えている。

「あとで食べよう」

その一言の裏には、

保存、
温度、
時間、
順番、
再加熱、
家族の予定、
明日の自分の体力まで、

いろいろな判断が詰まっている。

だから最近は、
“ちゃんと料理しているか”
だけではなく、

“ちゃんと回している”

という感覚の方が、
生活には近いのかもしれないと思う。

食品安全というと、
厳しいルールや専門知識の話に見えることがある。

でも本当は、
毎日の生活を少し楽にするための、
「考えなくて済む工夫」
でもある。

全部を完璧に管理しなくてもいい。

少し冷まそうと思った。
先に冷蔵庫へ入れた。
今日はこっちから食べようと思った。

その小さな判断の積み重ねだけでも、
十分、
生活は回っている。

そしてたぶん、
私たちは思っているよりずっと、
毎日ちゃんと考えて暮らしている。


参考・出典

・Codex Alimentarius — General Principles of Food Hygiene CXC 1-1969
食品衛生の国際的基本原則とHACCPの考え方。
https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/

・FDA — Managing Food Safety: A Manual for the Voluntary Use of HACCP Principles for Operators of Food Service and Retail Establishments
FDAによるHACCP原則の実務的解説。
https://www.fda.gov/food/retail-food-protection/managing-food-safety-manual-voluntary-use-haccp-principles-operators-food-service-and-retail

・厚生労働省 — HACCP(ハサップ)
日本国内でのHACCP制度化と基本説明。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/

・農林水産省 — HACCPとは
一般向けに整理されたHACCP解説。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/haccp/


Yamatani Institute では、

HACCP・FDA・微生物・食品安全を、
専門家だけの知識ではなく、
毎日の生活にもつながる「実感できる科学」として発信しています。

食品安全を、
生活者の視点からわかりやすく翻訳する。

そんな橋渡しを目指しています。

食品安全というと、
工場や専門家の世界の話に見えるかもしれません。

ですが実際には、
買い物、保存、持ち帰り、作り置きなど、
日々の家事とも深くつながっています。

家事と食品安全シリーズ(HACCP 生活設計)

「作り置きは、料理より“判断”が大変だった」https://note.com/yamataniinstit/n/nc1bbca99a26c?app_launch=false

このシリーズでは、
作り置き、温度管理、見えない食品安全設計など、
暮らしの中にある小さな判断を、
少しずつ整理していきます。

いいなと思ったら応援しよう!