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なぜ高級店ほどメニュー写真がないのか?

分かりやすいファミレス・分かりづらい高級店

特別な日に、誰しも1度は高級レストランへ行ったことがありますよね。
ゆったりとした音楽、おもてなしの精神あふれる接客、見惚れてしまう景色に落ち着いた雰囲気、温かいおしぼりから感じられる僅かな柑橘系の香り…。

日常的には行くことがないからこそ、そこで提供されるすべてが特別に感じられます。そんなムードの中で提供される料理は、自宅では味わえない悦びがあるものです。

ただ、なぜメニュー表は決まって分かりづらいのでしょうか?

ここ数年で多くのレストランにモバイルオーダーが普及し、QRコードを読み込めば写真付きでわかりやすくメニューが表示されていますし、それ以前からもファミリーレストランではほとんどすべてのメニューが写真付きでとても食欲を湧き立てるデザインです。

https://book.saizeriya.co.jp/library/site/menu1907/book-lists/

しかし高級レストランになると共通してこのような特徴があります。

  • シンプルな配色

  • メニュー名のみで写真はおろか、特徴の説明もない

  • 価格はメニューの中に溶け込んでおり、一見どこにあるかわからない

https://www.robuchon.jp/wp-robuchon/wp-content/uploads/2026/07/5f412bdf5d4c86c14832db5fed5f89d6.pdf

このはっきりとしたメニューづくりのスタンスの違いについて、クイズを解きながら一緒に考えて見たいと思います。



問題

ということでクイズです。

問題の後に答えがすぐ来ますので、ぜひ興味のある方はここで一度立ち止まって考えてみてください。

多くの高級料理店では意図してメニュー表をこのような表現方法にしていますが、これには一体どのような意図があると思いますか?

先ほどあげた3つの特徴はどれも意図的なものですが、今回は「写真がない」ことに絞って考えてみると良いと思います。

答えは1つだけでもないですし、お店によっても狙いは当然変わると思いますが、ぜひ「シンプルさ」に着目してみてください。


シンプルなメニュー表記の意図

それでは早速解説してみたいと思います。

答え

写真をなくして情報量を減らすことで、余白や想像の楽しみを生み出しているから

”わかりづらさ”にこそ意図が詰まっている

写真は、「牛丼」のようにシンプルでわかりやすい料理や、初見の客が多い業態では有効です。ファストフードやカジュアル業態では、意思決定の不安を下げ、注文を後押ししやすいとされています 。

高級店では「情報を足すこと」よりも
余白を残すこと」が価値になります 。

余白があることによって、提供されるまでどんな料理が出てくるかわからないドキドキ感が生まれ、想像した分だけ実際に提供された時に答え合わせする時間がそのまま体験価値になります。

特に高級店になるほど見た目や味だけでなく香り、分量、温度、盛り付け、提供時の説明やサービス込みで体験設計しています。

その体験を価値と感じてもらうためにメニュー表では料理名だけにヒントを絞り込み、言葉と体験で完成イメージを顧客に想像してもらうのです。

例えば「大吟醸 獺祭のグラニテ」のようなメニューの場合、先にこのような写真が出ていたら何を考えるでしょうか?

とあるホテルレストランで頂いた『大吟醸 獺祭のグラニテ』
  • グラニテって要するにシャーベットみたいなものかな

  • 真っ白い見た目で一見すると何かわからない

  • 冷たくてシャリシャリしているだろう

  • 量はそこまで出ない

などと様々なことを考えることができてしまいます。
考えられてしまうために、考えた範囲内で楽しもうとしてしまうのです。

このように写真があると「説明しなくても伝わる」一方で、
高級店が重視する余白や想像の楽しみが減ります 。

メニューに写真を載せない理由は他にも

  • 季節食材や仕入れで内容が変わるため、写真が実物とズレやすい

  • 写真と比較しやすくなり、期待との差でがっかりされるリスクがある

  • 見た目の再現性に縛られず、料理人の裁量を保つ

など様々あると思います。

「美味」の保証を超える体験づくり

コストと時間を投資して高級レストランに行く以上、
美味しい料理を期待してしまうのは当然です。

ゆえに無意識のうちに、美味しいことが保証されていることを心の中でアンカリングしてテーブルに臨むため、高級店は必然的に『味』以外の要素でどれだけその期待値を超えられるかを徹底的に追究しています。

高級店のメニューは、販売資料というよりも体験設計の一部です。
写真を外すことで、客は料理を“消費財”ではなく“体験”として受け取りやすくなります。

その結果としてレストランで得られる体験の物語性や職人性で評価されるのです。


全てを説明しないという美徳

会社間の取引だとつい、顧客のためを想うあまりにたくさんアドバイスをしたり、要件がたった1つの問い合わせなのに付随した情報を加えて回答してしまうことがあります。

もちろん時と場合によってそれが親切と捉えられることもありますが、先にヒントを与えられてしまうことで心理的に充足してしまい”あと一歩”を逃してしまうきっかけにもなりかねません。

顧客が最も喜ぶ瞬間を考える上では、高級レストランのメニュー表のように、期待と結果を答え合わせするタイミングを設計することがとても重要になってきます。

この答え合わせが早すぎると提供時のハードルが上がるでしょうし、遅すぎるとサービス品質に不満を抱かれてしまいます。

サービスごとに最適なタイミングを作ることや、タイミングを複数に分解してこまめに期待と結果を答え合わせできる仕掛けを作ることで、顧客の積極性が徐々に引き上がっていきます。

企業の場合はメリットの部分だけでなく、重要事項の説明やリスクへの考え方についてすり合わせをするタイミングなどでは特に重要ですね。


おわりに

私たち人間は想像する生き物だと言われています。
まだ起きていない未来を考える力を持っている我々だからこそ、曖昧な部分をなくして未来に起きる問題を先回りして対処できます。

しかし毎日様々な不確実性に晒される忙しい現代こそ、時にはわざと思考の余白を埋めず、不確実な状態を受け入れることで想像する愉しさや、想像上のイメージを仲間と一緒に重ねていく体験が生まれていくのかもしれません。

次に高級レストランへ行く機会があればぜひたくさん想像を膨らませてみてください!


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