【第9週】数える人、消える人──週5時間FP1級挑戦記 #010
今週は大腸検査でポリープが見つかり緊急で切除し、翌日は出血が止まらず大変な一週間であった。今は落ち着いていますが、安静期間のためお酒が飲めずに辛い日々を過ごしています。
今週のテーマ:法定相続人と法定相続分
第9週からPhase2、理論型に入った。最初のテーマは「法定相続人と法定相続分」。
これまでは相続税や所得税の計算ばかりで、電卓を叩けば答えが出る世界だった。理論型はそうはいかない。誰が相続人になるか、相続分はいくらか、代襲はどこまで及ぶか──民法のルールを正確に覚えて、当てはめるゲームだ。
計算でリズムをつかんでいた分、最初は少し戸惑った。手を動かして答えが出るわけではなく、「定義の線引き」を一つずつ正確に押さえていく作業だからだ。
民法と税法の「ねじれ」
民法が決めるのは「誰が相続人で、いくら相続するか」。一方、相続税法が使う「法定相続人の数」は、基礎控除(3,000万+600万×人数)や生命保険の非課税枠(500万×人数)を計算するための数字だ。同じ「相続人」でも、目的が違うから数え方も違う。
そして、その数え方が二か所でねじれている。
ひとつは相続放棄。放棄した人は、民法では「初めから相続人でなかったもの」として扱われ、いわば消える。ところが相続税法では、放棄があってもなかったものとして数に入れる。民法では消えるのに、税法では数えられる。
もうひとつは養子。民法では養子は何人いても全員が相続人になれる。でも相続税法では、実子がいれば養子は1人まで、実子がいなければ2人まで、としか数えない。
「なんでわざわざ逆にするんだ」と最初は思った。でも理由を考えてわかった。税法が養子の数を制限するのは、養子をたくさん増やして基礎控除や非課税枠を膨らませる、という露骨な節税を防ぐためだ。制度の「なぜ」がわかると、ただの暗記が腑に落ちる。
危うく間違えた「放棄は代襲しない」
今週、練習問題で一度ひっかかった。
相続人の中に、被相続人より先に亡くなった長男と、相続を放棄した二男がいる設例だった。長男の子は代襲して相続人になる。ここまではいい。問題は二男だ。
僕は反射的に、二男の子も代襲して相続人になると考えた。でも違った。
代襲が起きる原因は「死亡・欠格・廃除」の3つだけ。放棄は代襲原因にならない。 放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされるので、その子が代わりに入ることもない。長男(死亡)の子は代襲するが、二男(放棄)の子は代襲しない。
「相続しない人の子は代襲する」というイメージに引っ張られると、放棄も同じだと勘違いしてしまう。でも死亡と放棄は、見た目は「いなくなる」で同じでも、法律上の扱いがまるで違う。ここは完全に引っかけポイントだった。
脱線:制度の裏には、家族がいる
相続の勉強をしていると、ふと手が止まる瞬間がある。
放棄、代襲、養子、廃除。条文の言葉は無機質だけど、その一つひとつの裏には、たぶん現実の家族の事情がある。先に親を亡くした孫に相続権をつなぐのが代襲だし、再婚相手の連れ子を実子と同じに扱うのが連れ子養子の規定だ。
税法が養子の数を制限する一方で、特別養子や連れ子養子、代襲相続人は実子と同じに数える。「数合わせの養子」と「本当の家族としての養子」を、ちゃんと区別しようとしている。制度は無機質に見えて、案外、人間関係の機微を映している。そう思うと、暗記もただの作業ではなくなる。
今週の感想
計算型は、手を動かせば答えにたどり着けた。理論型は、定義の線をどこに引くかを正確に覚えていないと、そもそも土俵に上がれない。今週はその切り替えに少し苦労した。
ただ、民法と税法でわざと違う線を引いている理由を考えると、ばらばらの暗記事項が「なぜ」でつながっていく。放棄者を数えるのも、養子を制限するのも、ちゃんと狙いがある。丸暗記しようとすると混乱するけれど、理由から入ると意外と忘れない。理論型は理論型の攻め方がある、と気づいた週だった。
来週の予定
第10週は「遺産分割」。特別受益の持戻しや寄与分、それに代償分割・換価分割といった分け方の話に入る。ここも民法と税金が複雑に絡むところらしい。今週学んだ「民法と税法のねじれ」が、また顔を出しそうな予感がしている。
