インテル(INTC)Q1 2026決算 徹底解剖——EPS予想2,800%ビート、復活は本物か
配信:やましゃん@投資
※本記事の日本円換算は1ドル=160円で統一しています。
4月23日、インテルがQ1 2026決算を発表した。Non-GAAP EPSは$0.29——コンセンサス$0.01に対して2,800%超のサプライズ。売上高$136億(約2.18兆円)もガイダンス中値を$14億上回り、6四半期連続の上振れを達成。翌24日の株価は+23.3%の急騰で過去最高値$82.55を記録した。2025年4月の$18台から240%上昇——半導体史上最大級のターンアラウンドの「中身」を、SEC開示から徹底解剖する。
1. 決算ヘッドラインまとめ
売上高は136億ドル(約2.18兆円、前年同期比+7%)。自社ガイダンスの中値($122億)を14億ドル上回り、ウォール街コンセンサス$124.2億も大幅にビートした。これで6四半期連続のガイダンス上振れとなった。
Non-GAAP EPSは$0.29。自社ガイダンスは「ブレークイーブン($0.00)」、コンセンサスは$0.01だった。$0.06の一時的な利息・その他利益を含むが、それを除いても$0.23と大幅なビート。GAAP EPSは▲$0.73(約21億ドル=約3,360億円のリストラ費用計上のため)。
Non-GAAP粗利率は41%——ガイダンス34.5%から約650bp上振れ。数量増、ミックス改善、価格改定、そして18Aノードのイールド改善が寄与した。
営業キャッシュフローは11億ドル(約1,760億円)。ただし設備投資50億ドル(約8,000億円、グロス)により、調整後フリーキャッシュフローは▲20億ドル(約▲3,200億円)と依然マイナス圏。
(出典:Intel IR / SEC Form 8-K https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0000050863/000005086326000077/q126earningsrelease.htm / CNBC https://www.cnbc.com/2026/04/23/intel-intc-q1-2026-earnings-report.html)
2. セグメント別の読み解き
データセンター&AI(DCAI)——成長エンジン
売上高は51億ドル(約8,160億円、+22% YoY、+7% QoQ)。インテルの全セグメント中で最も高い成長率を記録。AI関連ビジネスは売上全体の60%を占め、前年同期比+40%と急拡大。Xeonプロセッサーのデータセンター・AI用途での需要急増が牽引した。
★ 投資家視点:DCAI +22%は、NVIDIAに押されて「AI敗者」とみなされていたインテルの評価を一変させる数字。CPUはAI推論・エージェント処理で不可欠な存在であり、「GPU一強」の構図が修正されつつある。
クライアントコンピューティング(CCG)——安定
売上高は77億ドル(約1.23兆円、+1% YoY、▲6% QoQ)。前四半期比では減少だが、社内予想は上回った。営業利益は25億ドル(約4,000億円)。Core Ultra Series 3(18Aプロセス)が200以上のPC設計に採用されており、AI PCの普及とともに成長余地がある。
インテル・ファウンドリ——赤字縮小の兆し
売上高は54億ドル(約8,640億円、+16% YoY、+20% QoQ)。外部ファウンドリ収入は1.74億ドル(約278億円)。営業赤字は▲24億ドル(約▲3,840億円)だが、前四半期から0.72億ドル改善。18Aノードが2026年Q1に量産フェーズ(HVM)に入ったことが最大のマイルストーン。
★ 投資家視点:ファウンドリ赤字24億ドルは依然大きいが、改善方向であることがポイント。18Aのイールド改善(月率7〜8%向上)が確認されており、2026年後半に外部顧客のボリュームが立ち上がれば、損益分岐への道筋が見えてくる。MicrosoftとAmazonが18Aを採用しているとの情報は、TSMCへの対抗軸としての信頼性を裏付ける。
その他(Altera+Mobileye)
売上高は6.28億ドル(▲33% YoY)。Alteraの分離・独立化プロセスとMobileyeの需要低迷が影響。
3. 決算コールの5大注目ポイント
① CEO Lip-Bu Tanの「ファンダメンタリー・ディファレント・カンパニー」宣言
就任1年を迎えたTan CEOは「今日のインテルは根本的に異なる会社だ」と強調。エンジニアリングドリブンの「パラノイド」な文化への回帰を掲げ、積極的な人材刷新(Samsung出身のShawn Hanをファウンドリ責任者に招聘)を実施。この1年で株価は2025年安値$18台から240%上昇しており、マーケットはTanのターンアラウンドストーリーを織り込み始めている。
② 18Aノードが量産段階(HVM)へ
インテル18Aは、RibbonFET(ゲートオールアラウンド)とPowerVia(裏面電源供給)を組み合わせた米国初のアングストローム世代プロセス。Q1に量産に移行し、最初の製品Panther Lake(ラップトップ向け)が出荷開始。これは「5ノードを4年で」というロードマップの完遂を意味する。
③ Q2ガイダンスが「5年で最も強気」
Q2売上高ガイダンスは$138〜148億(中値で+8% YoY超)。Non-GAAP EPSは$0.20(コンセンサス$0.14を上回る)。GAAP EPSは$0.08で、Q2 2024以来のGAAP黒字化見通し。通期では暗黙的に売上$580〜620億、Non-GAAP EPS $1.30〜1.60を示唆。
④ Terafabプロジェクト——マスクとの連携
4月7日に発表されたTerafabプロジェクト(SpaceX・Tesla・xAIとの共同AI半導体工場、テキサス州オースティン)の進捗について、Tan CEOが言及。インテルの「設計・製造・パッケージングをスケールで提供できる能力」が貢献。2026年末に小規模生産開始、2027年にフルスケール化の予定。
⑤ 政府+戦略投資家のバックアップ体制
CHIPS Act資金は総額$89億(約1.42兆円)の直接補助に加え、国防総省「Secure Enclave」契約$32億(約5,120億円)。米国政府がインテル株式9.9%を保有(非議決権)。さらにNVIDIAが2025年9月に約$50億(約8,000億円、持分約4%)を戦略的に出資。SoftBankも出資済み。国家安全保障に直結する「唯一の米国本土先端ファウンドリ」としてのポジションは、他のどの半導体企業にもない地政学的プレミアムを持つ。
4. 株価反応と市場の読み
決算発表後(4/23引け後)に+20%急騰。翌4/24の本セッションでは+23.33%の$82.55で引け、過去最高値を更新。出来高は2.64億株(3ヶ月平均の約2.5倍)。
2026年YTDで+100%超。2025年4月の安値$18.18からは+240%。時価総額は約$2,060億(約33兆円)。ただしフォワードP/Eは約120倍と、半導体セクターとしては高水準。
★ 投資家視点:市場は「ファウンドリ・ターンアラウンド」と「AI CPU需要」の二つのストーリーに対して、テクノロジー企業並みのマルチプルを付けた。DCAI +22%と18A量産という「実績」が裏付けとなっているが、ファウンドリ赤字24億ドル(約3,840億円)と調整後FCF▲20億ドル(約▲3,200億円)が示すように、キャッシュフローベースでは投資回収フェーズに入っていない。CapEx $180億(約2.88兆円、通期想定)の重さは、テスラの$250億超(約4兆円超)と同じ「未来への先行投資」の構図。
5. リスクファクターと今後の注目点
ファウンドリ事業の営業赤字24億ドル/四半期は、年間で約100億ドル(約1.6兆円)近い赤字ペース。18Aの歩留まり改善が計画通り進まなければ、この赤字は拡大するリスクがある。
外部ファウンドリ収入は1.74億ドル(約278億円)に過ぎず、TSMCの四半期売上約$250億超(約4兆円超)と比較すると差は歴然。14Aノード(次世代、2027年リスク生産予定)で「マーキー顧客」を獲得できるかが中期的な分水嶺。
GAAP EPSが依然赤字(▲$0.73)であること、フリーキャッシュフローがマイナスであることは、バリュエーション120倍に対するリスク要因。今後のカタリストは、6/2のComputex基調講演(Tan CEO)、14A顧客発表(H2 2026)、そしてTerafabの進捗。
6. やましゃん的総合評価
インテルQ1 2026決算は、一言で言えば「ターンアラウンドの実証フェーズが始まった」。
EPS 2,800%ビートのインパクトは絶大だが、その本質は数字のサプライズではなく、18Aノードの量産移行とDCAI +22%という「構造変化」にある。2025年に「AI敗者」の烙印を押されたインテルが、CPUのAI推論需要という追い風を掴み、ファウンドリ事業ではTSMCに対する唯一の米国代替として国家的バックアップを受けている——この構図が、P/E 120倍を正当化できるかは今後の実行力次第。
テスラの決算記事で書いた「夢の資本コストを現実のキャッシュで払い始めた」というテーマは、インテルにも完全に当てはまる。CapEx $180億を投じて18A/14Aのファウンドリ事業を立ち上げ、Terafabでマスク陣営とも連携する——半導体版「ムーンショット」の結果が見えるのは2027年以降だ。
ただし、テスラとの決定的な違いは「政府の9.9%出資」と「NVIDIA $50億(約8,000億円)の戦略投資」という、国家+産業のダブルバックアップ。インテルが潰れることは、米国の半導体安全保障上「許されない」——この暗黙の保証が、投資家に対するリスク低減要因として機能している。
★ やましゃん的一言:インテルは「半導体のゾンビ企業」から「AIインフラの国策企業」へ、1年で物語を書き換えた。問われるのは、18Aの歩留まりと外部顧客——2026年後半が審判の時だ。
📊 決算サマリー

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「EPS 2,800%ビートの衝撃——インテル、"敗者"から"国策AI企業"へ」
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