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小説|百奇夜行 No.093 秒読〜世界が滅びるまで、あと7話〜

『秒読』


俺には幼い頃から秒読が見える。


多分その人が命を失くすまでの秒読。


ある日、持病のある友達が遊んでいる最中に突然倒れた。


俺は怖くて、足がすくんで、ただ立ち尽くしていた。


その時、友達の頭上に初めて秒読が見えた。


カウントがゼロになると友達は動かなくなった。


別の友達が気づいてすぐに親を呼んだが遅かった。


それ以来、似たような状況で秒読が見えるようになった。


ただ、病院で祖父が息を引き取る時には見えなかった。


見える条件はまだよく分かっていない。


そんな、まさか。


今公園で遊んでいる一人の子どもの頭上に秒読が見える。


残り二十秒。


あの時の光景が蘇る。


もうあんな光景は見たくない。


帰ろう。


秒読が見えてるってことはもう遅いんだ。


…いや、本当にそうなのか?


あの時、俺がすぐ親を呼んでいれば友達は助かったんじゃ…。


残り十秒。


子どもの蹴ったボールが明後日の方向へ飛んでいく。


子どもはボールを追って走り出す。


その先には道路と、猛スピードで向かってくるトラック。


残り五秒。


同じだ。あの時と。


怖い。足がすくむ。


あと数秒なんて走っても間に合わない。


残り一秒。


考えるのは、止めた。


残りゼロびょ


「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


子どもはピタリと立ち止まった。


ボールはトラックとぶつかりまたどこかへ飛んでいく。


周りの人はみんな怪訝な顔で俺の方を見ている。


ただ、秒読は消えていた。


それから時は経ち、私は救急隊員の職に就いた。


秒読は命を失くすまでのカウントダウンではなかった。


私の行動で命を救えるまでのカウントダウンだったのだ。


だから祖父の時には見えなかった。


私はもう止まらない。救える命がある限り。

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