ホンモノ大人は、にしんそばを食べる【八杯目 蕎麦工房 まつ田・熊本阿蘇】
阿蘇の空気と、にしんそば
阿蘇くじゅう国立公園の南。
高千穂からだと北西へ車を走らせた高森町に、今回のお店「まつ田」さんはある。
ぼくは南九州が好きで、年に一度は熊本空港を利用している。
天草マラソンに出るためだったり、
九重連山を歩いたあとに入る法華院温泉山荘のお風呂が楽しみだったり、
最近では念願だった高千穂神社の神楽を観るためだったり。
(こうして並べてみると、なかなか渋い趣味だな。)
その都度、熊本空港に降り立ち、空港近くでレンタカーを借りてドライブしながら目的地へ向かう。
熊本は気候が穏やかで、食べ物が美味しい。
自然も美しい。
ドライブ中に見える阿蘇山を眺めるたび、
「この町に住んでみるのも悪くないな」と思う。
高千穂を訪れたときは、この土地の人々が
神の存在を身近に感じながら暮らしてきた理由を、
五感で理解できた気がした。
熊本の自然と、それを取り巻く文化が、
日常とは少し違う世界に連れていってくれる。
そんなご縁もあって、ふるさと納税で熊本を選ぶことも多い。
返礼品についてくる「熊本城主カード」も、気づけば3枚になった。
とにかく、熊本が好きなのだ。
高千穂からの帰り道
さて、「まつ田」さんの話。
高千穂から熊本空港へ向かう帰り道、
どこかで昼ごはんを食べようということになった。
国道325号線を北上していけば、
何かあるだろう。
ぼくがのんびり運転しながら進み、
連れが検索アプリで店を探す。
すると、高森町に良さそうな蕎麦屋があるという。
店内の雰囲気もよさそうだ。
休日の阿蘇ランチとして、立ち寄ることにした。
小さな蕎麦屋の待ち時間
店内は4人テーブルが4つ。
それから入口の左奥に2人席もあったと思う。
到着したのは、ちょうど12時頃。
すでに満席で、1組が外で待っていた。
どうやら地元では人気のお店らしい。
接客を担当しているおかみさん
(というか、やさしそうなおばあちゃん)に声をかけ、
テーブルが空くまでしばし待つ。
関東ではまだ雪が舞う頃だったが、
ここ高森町の陽射しは、すでにやわらかく暖かい。
ぼくらのあとには、幼い男の子ふたりを連れたご夫婦もやってきた。
子どもたちを遊ばせながら、同じように席を待っている。
気持ちのよい待ち時間だ。
阿蘇で食べるにしんそば
おかみさんに呼ばれ、
右手いちばん奥の席へ案内される。
注文はもう決めていた。
もちろん、にしんそば。
どんな蕎麦が出てくるのだろう。
高千穂旅行の写真を眺めながら、楽しみに待つ。
やがて運ばれてきた、まつ田さんのにしんそば。
とてもシンプルだ。
透明感のある出汁。
丁寧に焼かれた鰊。
そして、かいわれ大根。
にしんそばに、かいわれ大根。
これは珍しい。
きっと、苦味のアクセントになるのだろう。
大自然の中で食べる蕎麦
街で過ごす時間が多いぼくにとって、
この大自然の中でいただく蕎麦は、少し不思議な感覚をもたらす。
自分が、地球とつながっているような感覚。
素材の味が、いつも以上に
五臓六腑に染み渡る気がする。
おもしろい。
食べ終えたころ、
おかみさんが話しかけてきた。
「デザートのそば茶アイス、説明しなきゃね」
そう言って、にこっと笑う。
これを食べたら、
また熊本空港までドライブだ。
