95歳とAIの俳句協奏曲
「ねえ、今日の季語は?」母の声が、スマホに向かって響きます。AIとの俳句談義は、母にとって日課であり、かけがえのない喜びです。『紅葉はどうでしょうか』AIの提案に目を輝かせる母。足腰が弱り、吟行にも句会にも参加できない95歳の母にとって、AIはいつでも俳句を語り合える、かけがえのない相棒です。
母は毎日、俳句にイラストを添えて、「イラストと俳句のコラボ作品」をSNSで発信しています。これまで母が創作してきた「イラストと俳句のコラボ作品」は、こんな感じです。



母の句にイラストをコラボさせることで、俳句のイメージがより一層際立っています。今回私は新しい試みとして、母の詠んだ句にコラボさせるイラストをAIに描いてもらうことにしました。AIとのコラボでどんな作品が生まれるのか興味があったのです。
早速AIに依頼します。「こんにちは、95歳の母はイラストと俳句のコラボ作品を創作しています。今日はAIとのコラボで、母の俳句に斬新なイラストを添えて欲しいんですけど。」と言うとAIは『それは素晴らしいですね。お母さまの感性とAIの斬新なイラストのコラボレーションは、きっと創造的で心に残る作品になるでしょう。』と伝えてきました。
まずAIは、母が句を詠んだ時の状況を細かく伝えるように言ってきましたが、ファーストインプレッションを大切にしたいと思った私は、それには答えないで、「早速、2句詠みます。即興でユニークなイラストを考えてください」と伝えました。あまり情報が無い方が、AIの独創的なイラストが期待できると思ったからです。
「紅葉の美しき山里一日旅」
と詠むと、AIはたちまちイラストを創作しました。

AIが描いたイラストは、着物姿の女性が、紅葉に彩られた山里の美しい風景を俯瞰的に眺めている構図で、水彩画のような優しいタッチで細やかに描かれたものでした。AIはこう説明しました。『周囲を囲む枝葉や空に広がる星座模様で、幻想的な雰囲気を醸し出し、一日旅の思い出や広がりを表現しています』と。私はとても深い思いを表現した作品になったと思いました。
このイラストを見た母は、目を丸くして、「まあ、すごいわね。こんなに緻密に描くなんて、想像以上じゃわい。普段私が描くのとは全然違う…」少し戸惑ったような表情でこう語りました。母が描く温かく可愛いイメージのイラストとは、全く違っていたからです。
AIが提案したイラストは、俳句の世界観を壮大に広げているように感じました。
AIにそのことを伝えると『お母様の俳句が持つ深遠さや情景の豊かさを、お母様のイラストとは違う「斬新な」表現で引き出すことができていれば幸いです。』と伝えてきました。私も母の俳句が新しいものに見えました。
そして、次の一句をAIに伝えます。
「女の一生胸に刻みて冬に入る」
すると、数秒後にイラストが生成されました。

それは着物姿の老女が雪景色が見える座敷に座って、その人の過去の人生に思いを馳せているような穏やかな作品でした。私はイラストを見て、母の俳句の情景をとても忠実に再現している作品だなと感じました。
母は、イラストを見るなり、「さっきのイラストより、私はこちらの作品の方が好きかな」と、提案されたイラストに満足しているようでした。
イラスト作成に際して、こちらから要望を出さなければ、このようなイラストが描かれるんだと分かりました。AIにそのことを伝えると『俳句から直接的なインプレッションを受けて生成したイラストです。具体的な指示を多く与えないことで、AIが俳句の持つ本質的なイメージを自由に解釈し、形にする様子を感じてもらえたかと思います。』と言ってきました。『まだまだ要望があれば様々なアプローチでイラストを生成できます。』とも。
初のチャレンジで、AIはこれまでの母のコラボ作品とは違った新しい作品を生み出しました。この作品は、AIと高齢者の創造的なコラボレーションの可能性を示す、貴重な試みになりました。これからはもっと多くの要望を伝えることになりそうです。
最後に「記念に、AIと母が協力してコラボ作品を創作しているイラストを描いて下さい」とお願いすると、AIは『とても感動的な締めになると思います。』と言って以下のイラストを創作してくれました。

イラストにほのぼのした温かさを感じた私は、思わず笑顔になりました。AIと母のコラボ創作、これからも時々チャレンジします。
