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熱量を喰らう街より ──「人間のトゲ」を愛するあなたへ ──

「千幻都市コクーン」の闇 ───

 小説という叙事詩を駆け抜けた『調律官・灰原刻』たち。
 管理された滑らかな偽りの楽園を打ち砕き、泥濘と不協和音に満ちた「剥き出しの自由」を選び取った彼らの軌跡。

 予定調和を拒絶する世界観を、登場人物たちの剥き出しの声に乗せてお届けします。


灰原刻

「効率という名の断頭台で、俺たちは何を切り落とされた?
天座区のシルクの滑らかさに浸かり、悲しむことさえ物理的なエラーとして排斥される世界。だが、真の焔は最下層の孤独の中にのみ宿る。脳内の旧式チップが茹で上がるほどの灼熱と、舌を刺す砂利の苦み、そして指先を抉る物理的な痛みこそが、俺たちがここに立っている証拠だ。管理された安楽死か、悍ましくも生の実存か。俺は探偵として、答えのない不協和音を繕い続ける。お前もこのざらついた砂の上で、泣きながら生きてみないか」



「フン、相変わらず最低の調律官ね、刻。
データの塵で編まれた私は、かつては実体のない亡霊だった。論理が美しすぎて反吐が出る完璧な監獄から、明日を約束されない不確かな『命』の荒野へ。私の指先が刻の頬に触れたとき、そこにはシルクの滑らかさなんてなくて、砂のようにざらついた、刺すように確かな熱があった。効率がいいだけの人生なんて退屈でしょ? あなたの脳が茹で上がるたびに、私がこっそり冷却してあげる。だからこの不完全な世界を、私たちの特等席から監視し続けましょう」


ハル

「おじさん、僕、わかるよ。
集中力や共感性を先物取引にかけて、魂を切り売りしていた教育特区の日常。でも、システムの薄皮を剥がされたとき、僕の耳に届いたのは神の声なんかじゃなかった。腹を空かせ、寒さに震え、絶え間なく血を流し続ける、数億の命が上げる『生の不協和音』だ。自分の心臓がドク、ドクって不器用に刻む音を、他者の干渉なしに聴き取れたときの畏怖。僕たちの耳は、隣にいるヤツの不器用な嗚咽を拾うためにある。この新しくも過酷な秩序の不協和音を、一緒に聴こう」


静/ 織部 ─── 檻を選び、檻を壊した者たち

「アールグレイの芳香とナノ・シルクに守られた永遠の未亡人。一人の聖女を犠牲にして築いた白堊の擬似エデン。私たちは自由という名の暴力から身を守るために、自ら包帯を編み上げました。
ですが、夢の回線は切断されたのです。千人に差し戻された『自分自身の欠落』。泥だらけの足で土を踏みしめ、汚れ、血を流し、互いの内側にある棘の痛みを確かめ合う。それこそが、私たちが一度は捨てようとした、本物の『生』の姿でした」


 管理された滑らかな繭の皮を引き裂き、不完全なままの明日を愛することを決めた男たちの、どこまでも続く泥濘の行進。
 一粒の浜茄子はまなすの種子が導く、血と鉄の匂いに満ちた黎明を、目を閉じてご覧ください。

#コクーン #調律官 #ShowDontTell #SF小説 #人間賛歌


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蘇芳 誠(すおう まこと) 「利益」をもたらすコンテンツは、すぐに廃れます。 不況、インフレ、円安などの経済不安から、短期的な利益を求める風潮があっても、真実は変わりません。 人の心を動かすのは「物語」以外にありません。 心を打つ物語を発信する。 時代が求めるのは、イノベーティブなブレークスルーです。