被災体験を未来へ編み直す
「被災体験を未来へ編み直す」
進化思考でひらく、若者と地域の新しい関わり方
話し手:山田崇さん(nanoda代表 / 信州大学キャリア教育・サポートセンター特任教授)、谷一浩平さん(NOTORN(ノターン)代表 / 進化の学校受講生 / 石川県七尾市出身)
書き手:山田崇
日時:2026年2月6日(金) 午前7時05分–7時40分
Check In
山田崇さん:
おはようございます、本日もよろしくお願いします。昨日夕方から、ちょっと声が出なくなってしまし、昨日、病院には行ったんですが、原因は喋りすぎだと言われました。今日はウィスパーボイス気味でいきますが、どうぞよろしくお願いします。
谷一浩平さん:
無理せず、いける範囲でやりましょう。よろしくお願いします。
山田崇さん:
ありがとうございます。では始めていきたいと思います。今朝は「進化の学校」で共に学んでいる、谷一浩平さんにゲストとしてお越しいただいています。谷さん、おはようございます。
谷一浩平さん:
おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。
「進化の学校」との出会いと自己紹介
山田崇さん:
まずは、簡単に自己紹介をお願いできますか。
谷一浩平さん:
改めまして、谷一浩平と申します。出身は石川県七尾市です。大学進学で大阪に出て、その後、就職を機に東京に移り、現在は東京を拠点に生活しています。
大学時代に、能登出身の若者によるコミュニティを立ち上げ、地域活性化や地方創生に関わる活動を行ってきました。学生時代に御祓川大学のABD(アクティブブックダイアログ)企画で『進化思考』の初版を読み、その考え方に強く影響を受けました。今回、進化の学校の募集を見たときに、これはもう参加するしかないなと思い、申し込みました。
山田崇さん:
ありがとうございます。七尾出身で、若者コミュニティ「NOTORN(ノターン)」の代表でもありますよね。
谷一浩平さん:
はい。「ノターン」という名前の団体立ち上げました。英語のノーリターンだと縁起が悪いので、「能登にリターンする」という意味を込めて、「NOTORN」という表記にしています。
進化の学校に参加して感じていること
山田崇さん:
進化の学校は全12回で、今ちょうど4回目が終わったところです。ここまで参加してみて、率直にどう感じていますか。
谷一浩平さん:
正直に言うと、本を読んでから時間が経っていたので、内容を忘れている部分もありました。でも、こうして改めてインプットとアウトプットをこの場で繰り返すことで、理解がかなり深まっている感覚があります。
一人で本を読むよりも、同じ受講生の皆さんと一緒に考えることで、視点が広がるし、自分では思いつかなかった切り口にも出会えるのが大きいですね。
山田崇さん:
本には54の進化ワークが載っていて、やろうと思えば一人でもできる構成にはなっていますけど、なかなかひとりでワークを続けるのは難しいですよね。
谷一浩平さん:
本当にそうですね。読むだけで終わってしまうことが多いです。
山田崇さん:
今回は「進化の学校」に41名が参加、そのうち11名が能登にゆかりのある方です。ホームチーム(4人1チームで進化ワークの共有をするチーム)には、必ず能登の方が入るようにチーム編成しました。
民間企業の方、行政の方、学生、大学教員など、属性がなるべく混ざるようにしていますが、その点はいかがですか。
谷一浩平さん:
すごく良いと思います。普段の生活では出会わないような方々と同じテーマで議論することで、自分の考えが相対化される感覚があります。
進化させたい対象Xとしての「被災体験」
山田崇さん:
進化の学校では「進化させたい対象X」を設定しますが、谷さんは今回は「被災体験」をXにされていますよね。
谷一浩平さん:
はい。1月10日(土)の能登合宿「集中講義」の時は「スナック」をテーマにしていたんですが、ある程度やり切った感覚があって、今回は被災体験を選びました。
山田崇さん:
実際にワークを進めてみて、どうですか。
谷一浩平さん:
正直、スナックよりもかなりやりづらいです。被災体験はモノではなく、体験そのものなので、どう変異させるか、どう進化させるかを考えるのが難しい。
ただ、その分、概念を揺さぶられる感じがあって、面白さもあります。
山田崇さん:
被災体験をXにするのは、私がこれまで関わってきた「進化の学校」としても初めて拝見するケースですね。体験といっても、年齢、立場、場所、時間軸によって全然違います。
地震が起きた瞬間の体験と、その後、数週間、数か月、あるいは一年以上続く体験がある。構造化しようとすると、相当な多様性がありますよね。
谷一浩平さん:
そうですね。その多様さに向き合っている感じがあります。
若者の被災体験をどう未来につなぐか
山田崇さん:
被災体験をXにした背景には、どんな思いがあるのでしょうか。
谷一浩平さん:
2024年1月1日の能登半島地震が大きなきっかけです。現在、NOTORNの活動として、若者の被災体験を全国の同世代に向けて発信しています。
語り部として話すだけでなく、被災体験を漫画という形にして届ける取り組みも進めています。助成金にも採択されて、実際に形にしようとしている段階です。
山田崇さん:
被災体験を漫画という別のメディアに移す、まさに進化思考でいう移動や、漫画に擬態する、感覚ですね。
谷一浩平さん:
被災体験を、怖かった、つらかったで終わらせるのではなく、その体験から何を感じ、何を学んだのかを、どう未来につなげるかを考えたいと思っています。
地域との関わり方をアップデートする視点
山田崇さん:
被災体験を、防災だけでなく、地域との関わり方を考えるツールにしようとしている点が、とても印象的です。
谷一浩平さん:
はい。被災体験を原点にして、ライフステージが変わるたびに「自分は能登にどう関わりたいのか」をアップデートしていけるようなものにしたいと思っています。
語り続けることで、その思いを消さないための手段にもなると感じています。
山田崇さん:
生まれ故郷や育った地域から外に出た若者が、もう一度故郷に目を向けるきっかけにもなりそうですね。
谷一浩平さん:
まさにそこを狙っています。
仕組みとして伝承するという発想
山田崇さん:
話を聞いていて、体験をどう伝えていくかという「仕組み」が重要だと改めて感じました。
例えば、高校の授業や進学・就職の場面で、被災体験から何を学んだかを言語化する仕組みがあったらどうだろう、と。
谷一浩平さん:
確かに、それは考えるきっかけになりますね。
山田崇さん:
大学受験の際にお世話になった赤本のように、進学を考える高校生が必ず手に取る存在になったらどうだろう、とも思いました。若者にとっての赤本のようにベストセラーのような形で、被災体験が自然に引き継がれていく。
谷一浩平さん:
それはすごく面白い発想だと思います。
山田崇さん:
先日、2月4日の立春に伊勢神宮に行ったんですが、式年遷宮の仕組みを見て、1300年近く更新され続けていることに改めて驚きました。
人々が当たり前のように参拝し、お守りを返し、また新しくする。ああいう「続く仕組み」に、被災体験の伝承もなれないかと感じました。
Check Out
山田崇さん:
では最後にチェックアウトとして、今日の一言をお願いします。
谷一浩平さん:
被災体験をXにする中で、自分の考えがまだ固いなと感じました。もっと分解して、日常の中にある当たり前の仕組みと結びつけながら、観察を続けていきたいと思います。
山田崇さん:
ありがとうございます。私としては、谷一さん自身がなぜ地元に関わろうと思ったのか、その原体験にも強い関心が湧きました。
被災体験、それをどう未来につなげるかによって、地域やキャリアの可能性は大きく広がる。今日はその可能性を強く感じました。ありがとうございました。
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