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「異変を見逃さないこと」あるいは誰もがスーパーマンだという話—『8番出口』感想(ネタバレ)

見てない人が読んでいい場所(ここまで)

正直、舐めていた。

結局IMAXで見た。結局ね。
もちろんIMAXサイズの撮影ではないので100%意味があったとは言えない。
一方でシンプルに映画としてちゃんとしていて、おひねりとして追加料金(+700円)は惜しくなかったと感じた。

そう、面白かったのだ。しかも、ちょっと予想していなかった方向に。

わかる人にだけ伝わる言い方をするなら、ミッドランドシネマ2のスクリーブ12で上映されるタイプの映画だ。アートレーベルだ。
ゲーム原作の、しかもストーリー的には「無」のゲームに、寓話性を見出した技ありの映画。

ここからはネタバレ全開なので、さっさとスマホをしまって、異変を見つけに行くべきだ。
この映画で今年61本目だが、余裕で上位の映画だ。オススメできる。

あと『スーパーマン』(2025)のネタバレも多少含まれる。なんで?
まさか見てない人はいないはずだから大丈夫だろうけど。

※原作未プレイ。実況動画の切り抜きをチラ見した程度なのでゲームに基づいた考察などは取り扱い無し。

「異変」

この映画の秀逸な点は何を差し置いてもやはり「異変」の扱いだ。

元のゲームのような通路内の「異変」=映画のホラー演出にとどまらず、映画のメッセージとしてパラレルに機能している。
それが顕著に現れているのが、中盤から登場する男の子だ。

序盤に二宮が一通り「原作再現」パートをやったあと、おじさん編から登場する男の子。

この子がめちゃくちゃ「異変」を見つけるのが上手い。

大人たちが見落とす「異変」—「8」の字が上下ひっくり返ってるだけ、みたいなマジで性格悪いやつとか—でももれなく見つける。

だけど、それを上手く伝えられない。警戒しているのかもしれないし、あるいは萎縮しているのかも。

特におじさんは努めて優しく振る舞ってはいたが、極限状態で追い詰められていて余裕を失っていた。結果、彼は男の子が気が付いた「異変」を見逃し、あの世界に取り込まれてしまった。

対して二宮は男の子が「異変」を見つけたことを「見つけた」ことで、脱出へと近づいていく。

男の子は途中までずっと目立ったコミュニケーションをとらないが、「異変」を見つけた時だけは立ち止まる。

それ自体を「異変」として見逃さずにいられるか。
そういった視野の広さを問われているような演出だった。

思えばこの映画は冒頭から二宮の一人称視点で始まっており、その視界のほとんどはスマホが占めていた。

スマホから通路。通路から周りの人間。
お前が気が付かないといけない「異変」は、そんな狭い視野の中にはないぞと言わんばかりだ。

そういえば、取り込まれて背景と化したおじさんは、通路の終端にたどり着くとスマホをいじりだす。
彼にはもう、何も見つけられないのだろう。

誰でもスーパーマンになれる

劇中で、男の子はおそらく二宮の未来の息子なのだろうと示される。
でも正直、そこはどうだっていい。なぜなら、二宮本人がそう思ってないだろうから。二宮が彼をほうっておかないのは、息子だからじゃなくて、単にほおっておけないからだ。

冒頭でサラリーマンに恫喝される親子を無視し、それを電話で彼女(実際には「異変」だったが)に悔いた二宮が、見ず知らずの子供に寄り添う。
(=彼が見つけた「異変」に気が付ける)

その変化こそがもっとも大事なことであり、この映画のメッセージなんだろうと思う。

ラストで冒頭と同じような(というか同じ?)電車に乗り込み、同じように恫喝される親子と出会う。

もう、その「異変」を見逃す二宮ではなくなっている。
苦難を乗り越え、父となる覚悟を決めた男がそこにはいた。

そこがやはり寓話的というか、「異変」って、別にゲームの中だけの話じゃなないでしょ?と言われてるようでならなかった。

看板の目は動かないけど、変なネズミも出てこないけど、困ってる人って普通にいるじゃん?っていう。
「異変」はなかった、として通り過ぎるのか?と映画を通じて問われてるように感じた。

ある種それは、今年の『スーパーマン』との共通するような話で。
まさか『8番出口』見た結果、最高の映画『スーパーマン』の話をすることになるとは思ってもなかったが。

だからつまり、スーパーマンのようなパワーはなくとも、困ってる人を力の限り助けようとする。それだけで人はスーパーマンなんだ、という話。

そんなものすごくまっすぐな人間の善性への信頼と期待を描いた映画なんだけど、まさかそれを「異変」になぞらえて『8番出口』で食らうとは思ってなかった。

あとがき

執筆時点でまだ公開初日が終わったばかり。
他に感想を書いてる人も少ないが、チラ見した限り、賛否両論という感じの評判。
それもわかるような気がする。
俺の場合は「舐め」から入った結果、思いのほかしっかりした中身を味わえて満足しているけど、その逆という人もいるのだろう。

つまり、「話題の人気ゲームの実写映画化!」というキャッチーな雰囲気から予想されるまっすぐなジャンルの映画を、まっすぐに期待して見に行くと、ちょっと思ってたのと違う!となるかもしれない。

ホラーを楽しむとか、謎解きを楽しむとか、そういうジャンル映画的な要素はないわけではないけれど、それ100で見に来ている人には物足りなく感じるだろう。そして、この映画が持つメッセージ性も「こういう人間ドラマ別にいらないんだけど」とやり玉に挙げられてしまう。

だけど、むしろこのメッセージ性、寓話性こそが肝なのだと、ここで主張しておきたい。

寓話。つまりおとぎ話。
伝えたいメッセージが先で、それに沿う形で話が出来上がる。
だからディティールとか整合性とか謎解きじゃなくて、その物語の中で主人公が何を得たのかというところを大事にしたいのだ。

見終わったあとにちょっとでも、「異変」を見逃さない人間になれてたらいいなと、思えたなら。それでいいのではないだろうか。







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