鹿島槍ヶ岳へ、柏原新道ではないほうから
もう一つのルート|大谷原・高千穂平からの日帰りレポート
山行データ
日程:2023年11月5日
ルート:大谷原登山口・駐車場→高千穂平→冷池山荘→布引山→鹿島槍ヶ岳南峰→大谷原登山口・駐車場
通過時刻:
大谷原登山口・駐車場 04時48分 出発
高千穂平 07時50分ごろ
冷池山荘周辺 10時00分ごろ
布引山 12時10分ごろ
鹿島槍ヶ岳南峰 13時29分ごろ
大谷原登山口・駐車場 18時09分 到着
総行動時間:13時間20分
距離:約18km
累積標高:約2,000m超
三連休の最終日、どうしても天空散歩がしたかった
晩秋の雪をまとった北アルプスを見ながら、少し長く稜線を歩きたい。そんな気分で鹿島槍ヶ岳に行くことにした。ただし、今回は柏原新道ではないほうから入る。
大谷原から入り、高千穂平へ上がり、冷池山荘、布引山を越えて、鹿島槍ヶ岳南峰へ向かう。
鹿島槍ヶ岳のルートは、主稜線の並びを頭に入れておくとわかりやすい。南から、種池山荘、爺ヶ岳、冷池山荘、布引山、鹿島槍ヶ岳南峰と並ぶ。
柏原新道は、扇沢から種池山荘へ上がり、爺ヶ岳、冷池山荘、布引山を順に越えて鹿島槍へ向かう。後立山の主稜線を、南からきちんとたどる王道ルートである。
一方、大谷原から高千穂平へ上がる道は、赤岩尾根で高度を稼ぎ、冷池山荘側へ途中合流する。爺ヶ岳側から順に歩くのではなく、冷池山荘の近くへ横から上がる道だ。
柏原新道は長い王道。
大谷原は急な途中合流。
赤岩尾根は、楽じゃない


大谷原登山口に車を停め、朝4時48分に歩き出した。ヘッドランプを点けて、まずは林道に入る。
しばらくは、静かな林道を歩き、登山道に合流し、少しずつ高度を上げていく。やがて赤岩尾根に入る。
道はよく整備されているが、緩やかに歩かせてくれる道ではない。燕岳の合戦尾根のように、斜面に取りついて、ぐんぐん高度を稼いでいくような感じだ。足元を見て、息を切らしながらも、また登る。景色を楽しむというより、まずはひたすら、上へ、上へと 脚を運ぶ。
しかも、油断できる道でもない。道ははっきりしているが、外せばそのまま落ちそうなところもある。整備されているおかげで歩ける道という感じ。
なんでまた、こんな苦難の道にしたんだっけ。
なーんて、弱音を吐きそうになったころ高千穂平に出た。

高千穂平で、視界が開ける
高千穂平に着いたのは、7時50分ごろだった。大谷原を出てから、もう3時間ほど経っている。
ここで、視界がぶあーっと開けた。
鹿島槍ヶ岳が見える。爺ヶ岳も見える。白くなりかけた山並みが、朝の光の中に並んでいる。さっきまで木々の中で、足元ばかり見ていた視界が、ようやく展望へと移り、
かっこいい峰々が見えた。
鹿島槍である。
水を飲み、行動食を口に入れながら、しばらく山を眺める。
この道は、最初から景色で迎えてくれるわけではない。林道、樹林帯、急登と続く。この単調さの分だけ、高千穂平で突然視界が開いたときの感動は大きい。
冷乗越で、全宇宙に乾杯したくなる

高千穂平から、さらに登る。
もう一息、というには少し長い。山で「もう一息」という言葉を信用してはならぬ。
そして、なんとか冷乗越に出た。
ここで景色が、とどめの一撃、どどーっんときた。
爺ヶ岳が近い。西には立山があり、その横に剱岳が神々しく。雲の切れ間には、槍ヶ岳や穂高方面まで見える。
後立山オールスター。
美しいとか、すごいとか、そういう言葉では足りない。念願叶い、この超豪華な稜線を、これから歩いていくのだ。
できることなら、ここで缶ビールを開けて、全宇宙に乾杯したい。そんな気分だった。
我に帰ると、日帰りロングの途中であり、むしろここからが長いことを自覚する。
後立山の主稜線に乗ると、
冷池山荘を越え、布引山を越え、その先の鹿島槍ヶ岳南峰へ向かう。


見えているのに、鹿島槍は近づかない


冷池山荘を過ぎ、布引山へ向かう。
ここからは、まさにやりたかった天空散歩だった。雪をまとった山々を眺めながら、稜線を歩いていく。わずかに雪はあったが、結局アイゼンは使うまでもなかった。晩秋の後立山としてはありがたい条件だったと思う。
ただし、景色が良いというのは、足が止まるので困る。
写真を撮ってるうちに、時間はきっちり減っていく。
さて、鹿島槍ヶ岳は見えている。見えているから、近そうに思う。ところが、歩いても歩いても、なかなか近づかない。
布引山に着いたのは、12時過ぎだった。
ここまで来れば、もう南峰は近いように見える。けれど、最後の登りが残っている。朝から歩いてきた脚には、これがなかなか堪える。

布引山・鹿島槍ヶ岳南峰・北峰
鹿島槍ヶ岳南峰から、下山のタイムアタック


&長男からもらった御守り
鹿島槍ヶ岳南峰に着いたのは、13時29分ごろだった。
朝4時48分に出ているので、ここまで約8時間40分。距離だけ見れば、山頂までは片道約9kmである。けれど実際には、かなり時間がかかった。
着いた、というより、なんとか間に合ったという感じだった。
時間はあまりないが、腹ごしらえだ。
山頂には、14時過ぎまでいた。景色が素晴らしい。できればずっと見ていたい。
名残惜しいが、下山ぎりぎりの時間だ。
来た道を戻るだけではあるけれど、足は疲れている。
明るいうちにできるだけ下りたい。
夕陽に近い光が、稜線を照らしていた。ホントにきれいだた。
赤岩尾根を下ると、やがて暗くなり、ヘッドランプを点けた。
登りも暗い。
下りも暗い。
下山は18時09分。
行動時間は13時間20分だった。
健脚なら日帰りでいけるが、余裕を見るなら冷池山荘泊

前述したが、
柏原新道は長い。
大谷原は急い。
どちらのルートであっても、体力に自信がない方や、景色をゆっくり見たい方は、シーズン中に冷池山荘で一泊するのが良い。その方が、高千穂平からの展望、冷乗越からの立山・剱岳、布引山から鹿島槍へ向かう稜線を、心ゆくまで堪能できる。
さて、この度の山行は、天空散歩も果たし、同時にしっかり修行となり、かつ標高2,889mで、後立山オールスターを仰ぎながらランチを食べるという、超贅沢なひと時を過ごせた。
そして、累積標高2,000メートル超の日帰りをこなしたことは、自分としてもなかなかの勲章であった。
しかし、鹿島槍ヶ岳の双耳峰は、あまりに端麗だった。
こちらの小さな武勇伝など、あの姿の前では少し分が悪い。
ならば私の誉れは、目前と仰ぎ見た剱岳の記憶と一緒に、胸の内へしまっておくことにした。
おわり

アクセス
参照リンク
冷池山荘公式webページ
