履歴書よりGitHub!“活動履歴”の価値(コミュニティ採用)
はじめに
コミュニティで積極的に活動をしていると、その運営企業や、所属するメンバーさんの企業に、直接的または間接的に「採用」されることがあります。
よくあるWEB採用や人材紹介、リファラルなどとも違う採用形態です。
これってどういうものなんだろう?という疑問から、この論文を読んでみました。
履歴書よりも強力なスキルの証明
エンジニアの採用において、GitHub(*)などのオープンソースソフトウェア(OSS)コミュニティでの活動履歴がどのように評価されているのか、採用担当者と求職者の双方へのインタビューから紐解いた非常に興味深い研究です。
(*)GitHub(ギットハブ)とは、 世界中のエンジニアがソースコードを保存・公開し、複数人で共同開発できるプラットフォームです。
この論文の最大のポイントは、企業の人事・採用担当者は、GitHubのアカウント情報を、従来の履歴書よりも信頼できる、技術力や個人的な資質の指標として見ているということです。
履歴書に書かれた言葉よりも、日々のコミット履歴や書いたコードのほうが、その人が「どう働くか?」を雄弁に物語ってくれるということです。
本来は採用ツールとして作られたものではなく、開発者同士が作業を調整し、プロジェクト間で知識を共有する共同ソフトウェア開発をサポートするために設計されたものなのですが、これがエンジニア採用の現場になっているということですね。
採用担当者は何を見ているのか?
GitHub上のあらゆる情報を等しく評価しているわけではありません。
「信頼できるシグナル」と「信頼できないシグナル」を明確に区別しています。
採用担当者が信頼するシグナル(ごまかしが効かない内容)
有名プロジェクトへの貢献(コミットの採用)
有名なOSSプロジェクトにコードが採用された実績は、コミュニティからの品質のお墨付きとして非常に高く評価されます。
これは、他者による検証を通過しているため、偽装が困難だからです。
個人のサイドプロジェクト
余暇に取り組んでいる個人的なプロジェクトは、プログラミングへの「情熱」や「学習意欲」の表れと見なされます。
休日の活動履歴から、企業カルチャーとのマッチングを測る採用担当者もいます。
自分で立ち上げたプロジェクトの運営
自分でプロジェクトを所有し運営している履歴からは、コミュニティ管理能力などのソフトスキル(たとえばマネジメント能力)を読み取ることができます。
❌ 採用担当者が信頼しないシグナル(表面的な数字)
フォロワー数や「スター」「フォーク」の数
これらの指標は、本人のコーディングスキルというよりも、マーケティング能力に依存するため、採用側からは信頼できるシグナルとして見なされていません。
求職者は「ありのまま」を見せている
一方で、求職者側も、自分のGitHubが採用企業にどう見られるかを意識していることがわかりました。
しかし面白いことに、彼らは自分を良く見せるためにプロフィールを意図的に操作、ごまかしをすることはほとんどありません。
その理由はシンプルで、「他人のプロジェクトへの貢献」や「実際のコードの質」を偽装するには、あまりにも膨大な労力がかかるからです。
むしろ、未完成のプロジェクトや過去の古いコードであっても、「自分の思考プロセス」や「成長の軌跡」を示すものとして、あえてそのまま公開しているケースが多いということです。
そのため、採用側、求職者側、双方にとって、思想が一致する場になっているのです。
この論文からの示唆
論文の結論や考察部分から、現代のキャリア構築や組織づくりに向けたことを考えてみます。
“活動”が未来の採用のスタンダードになる
今後、企業は求職者に対して、面接や履歴書だけでなく、詳細な作業履歴(つまり、ポートフォリオの発展版のようなもの)の提示を求めてくる可能性があります。
日々の仕事や個人のプロジェクトをオープンな場所に蓄積し、自分のスキルの証拠=シグナルを意図的に残していくことが、エンジニアに限らず、あらゆるワーカーのキャリアに重要になると思われます。
企業側もオープンな働き方を許容・支援する必要がある
優秀な人材ほど、自分の価値を証明するために「公開できる実績」を蓄積したいと考えています。
そのため企業側は、機密保持の範囲内で従業員がOSS活動を行ったり、成果を外部にシェアしたりすることを支援していく必要がありそうです。
近年、副業がどんどん解禁されていますが、その流れは労働力不足だけでなく、このような観点からも加速すると考えられます。
「評価」と「作業」のプラットフォームの融合における課題
先にも述べた通り、GitHubは本来、エンジニアのプロジェクト管理ツールですが、それが採用ツール(自分をアピールする場)を兼ねるようになったことで、ユーザーの中に葛藤が生まれてきます。
純粋な仲間同士のコラボレーションの場が、常に採用担当者に見られている、場合によっては上司に見られているかもしれない…という監視の場にならないよう、ツールの設計やプライバシーのあり方を見直す必要があるかもしれません。
今日の論文
Jennifer Marlow, and Laura Dabbish(2013)Activity traces and signals in software developer recruitment and hiring. Computer Supported Cooperative Work.145-154.
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