捨てられないベビー服が教えてくれたこと
衣替えの季節。
例にもれず我が家でも先日、家族4人分の服が粛々と片付けられた。
「これはもう次は着ないよね」と事務的に処分用の山が積みあがっていく中、どうしても手が止まってしまう服があった。
それは、小さな小さなベビー服だ。

子どもたちは現在1歳と4歳。
もう二度と袖を通すことのない小さな服を手に取り、まるで我が子を抱くようにそっと両腕に乗せると、胸がいっぱいに。
懐かしい――
初めての育児は不安と眠気、そして産後の痛みとの闘い。
「授乳の間隔は?飲ませる量は足りてる?オムツ替えこれで合ってる?」と常に疑問符だらけ。
「赤ちゃんの服、ボタン多すぎ……」と心の中で叫びながら、私は何度このボタンを開け閉めしたことだろう。

傷んだものは処分してしまったが、特によく着た思い出深い、いわゆる一軍の服を私は未だに捨てることが出来ない。
私たち夫婦はどちらも末っ子なので、子供服は従姉からのお下がりの品が約6割を超える。
そんな中、我が子のために自分たちで選んで買った服はやはり特別な存在なのだ。


何度も洗うほど手触りが良くなる素材は、赤ちゃんを抱っこするときの幸福感を増幅してくれるアイテムだ。
たかがベビー服、されどベビー服。
すぐに大きくなってしまうと言えど、抱っこしている時間が一生のうちで最も長いのだ。着心地、抱き心地の良い素材は本当に大切だと実感している。
それに加え、お世話のしやすさも大事なポイントだ。
この服は長女が生後2カ月のころ、友人の結婚式に参加するため買ったもの。

購入する時点で少し気になっていたが、取り外し不可の大きな襟が付いていたため、なんとも授乳がしずらい。
残念ながらその後、着る機会があまりないまま、きれいな状態で手元に残されている。
しかし、あのとき友人の結婚式でスピーチをするため手紙を暗記したこと、初めて夫と娘と3人、泊りがけで出かけたことをこの服を見るたび思い出してしまい手放すことができないのだ。
一方、次女の方は案の定、長女よりもさらに新品の服が少ない。いや、「新品の服なくてもいけそう……」とすら私は思っていた。
しかしそこへ、プレゼントが。

私の母と一緒に選びに行ったこの服。
赤ちゃんの頃から、大胆な性格だった次女は、かわいい系というより食いしん坊系がピッタリ。
絵本「はらぺこあおむし」のデザインがあしらわれたロンパースを何度も何度も着させていた。


抱っこ紐の中で眠る次女に目を落としながら、母と「どれが似合うかな?」なんて話しながら選んだ思い出すら尊いと思ってしまうのは、娘の成長を感じると同時に両親も確実に歳を重ねていることを実感するからだ。

そして最後は、一度は着させたい耳つきの服。


夏の終わり~秋にかけて生まれた娘たち。
肌寒い時期、買い物に行くのも、近所に散歩に行くのも、いつもこれを着て出かけた。
冬の間、家の中でも着させていたので、姉妹を通して最も活躍してくれたアイテムだ。

年2回、衣替えのたびに思い出を反芻してしまう。
あっという間に駆け抜けた60サイズの服。
1歳7か月で保育園に通い始め、洗い替え用にやたらと大量にある90サイズの服。
たった1シーズンでサイズアウトしてしまい数少ない110サイズの服。
近ごろ長女は身長がぐっと伸び、小学生に間違われることがしょっちゅうだ。
衣替えをするたび子どもたちの確かな成長と、長い長い育児が確実に終わりへと近づいていることを実感する。
この腕の中で眠っていた赤ちゃんは今、自分の意思で、思うままに歩いている。
ベビー服の写真を撮りながら、一つひとつのエピソードを思い出す時間は、初めての出産からの約5年を振り返る大切な時間になった。
口ごたえするようになったけれど、小さな変化によく気づき、家族想いの優しい4歳の長女と、甘え上手で食いしん坊、天真爛漫な1歳の次女が、今日も元気に笑ってくれること。
その何気ない毎日が、何よりも尊い。
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