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京都・白川町商店街の魔女【14】

14 最後の修行は、魔女のアシスタント?

 お店に帰ってあったかいハーブティーをご馳走になった。 暑い時にこそ、熱い飲み物を飲むべし、というのが師匠の方針だから。

 熱くて、汗がさらにでるけど、確かに美味しい。

「今までは、ミサキちゃんには予約の時間外にきてもらってたけど、最後やし特別な冒険を体験してほしいと思って。私のアシスタントとして、一緒にお客さんの話を聞いてもらおうかな」

「ええ? そんな事して、大丈夫なんですか?」

「お客さんがええ言わはったら、ええんちゃう? 目標、3人ね。まあ、詳しいことはお客さん決まってから説明します。とりあえず、心の準備しといてぇ」

 お客様ってことは、ちゃんとお金を払って師匠のところに来られている方のことだろう。
 そんな方達の相談事を、私が聞いても本当にいいのだろうか?
 心の準備って、何をしたらいいの?

 期待と不安が半々。
 正直、今はまだ頭の整理が追いついていない。

 「ほな、ミサキちゃん、また明日ね」

 「ありがとうございました。はい、また明日」

 店を出て商店街を歩いていると、のんちゃんさんと会った。

 青色のワンピースに、素足にサンダル。涼しげで可愛らしい。
 穏やかそうな男性といっしょだ。個性的なTシャツにベージュのパンツ。二人のサンダルは、似ていてお揃いっぽく見える。

「のんちゃんさん、こんにちは」

「こんにちは。ミサキちゃん、こちら、私の旦那さんのタカ君です。ちゃんと挨拶するのは初めてかな」

「はい、そうですね。あの、初めまして」

「初めまして。魔女さんのお弟子さんですよね。のんちゃんから話は聞いてます」

 そう言って、タカさんは私をみてから、隣ののんちゃんさんに笑顔を向けた。

 のんちゃん、タカ君。
 人前でも、のんちゃん呼びなんだ。
 あんまりにも仲良さそうで、ちょっとびっくりする。

「私達、ひいるさん一家と友達なの。だから、彼らからも色々聞いてるよね」

「そうそう、魔女さんが弟子と二人で、なんか煮込んでるらしいって噂になってるとか」

「辻山さんも話してたよ。上田さんって、謎めいてて気になる存在だもんね」

 楽しそうに話す二人を見て、ちょっと衝撃をうける。

 本当に、こんな夫婦がいるんだ。
 お互いを尊敬していて、そして、好きだって空気感がある。
 人前でも、照れない。しっかり視線を合わせて話す。

 ふと、元彼のことを思い出して、一瞬胸が痛んだ。
 彼は一度でもこんな風に、ちゃんと私を見てくれた事があっただろうか……。

 でも、胸は苦しくても、自然と笑顔が浮かんだ。

「仲良しでいいですね。私も、お二人みたいになれるように、自分に合う相手をみつけられたらいいなあと思います」

「ありがとう」

「なんか、面と向かって言われたら照れるなあ」

 二人は見つめ合って、そっくりな表情で照れくさそうに笑った。

 その空気が、とても素敵だった。
 甘くて、でも爽やかで、柔らかかった。

「ミサキちゃんは、どんな人が好きなん?」

「そうや、口に出した方が、見つかりやすいかも」

「そうですね。次に付き合う人は……。一緒に、勉強していける人がいいです。同じ歩幅で進めるっていうか」

「すごいな。さすが魔女の弟子。若いのに、何か発言全てに上田さん臭がするというか」

「ちょっとタカ君! 言い方」

「いや、褒め言葉やで」

「ミサキちゃん、気にせんといてな」

「ありがとうございます。修行中なので、師匠に似てるって言われるの、嬉しいです」

 私は、正直に気持ちを伝えた。
 ちょっとくすぐったい気もするけど、師匠に近づけているのかもと思うと、素直に嬉しい。

「よおできたお弟子さんやなあ。さすが上田さんに見込まれた逸材」

「ほんまやね。うん、ミサキちゃん。そう願っていたら、きっとミサキちゃんに合う相手が見つかるよ。気休めじゃなくて、本気で願う人にはちゃんと見つかると思うから」

「のんちゃんさん、ありがとうございます。のんびり待ってみます」

「そやね、のんびり待つのが、一番の近道かもね」

 二人と別れて、商店街の入口から大通りへ出た。
 車がたくさん通っていて、アスファルトからの熱気がよけいに多く感じる。

 横断歩道を渡り、アパートへと戻りながら、のんちゃんさんとタカさんの事を考え続けた。

 なんとなく、恋愛は怖い、という意識が薄れてきたような気がする。
 私もいつか、二人みたいに、顔を見合わせながら商店街を歩きたいなと思った。

『そやね、のんびり待つのが、一番の近道かもね』

 のんちゃんさんの言葉と、真っすぐな笑顔が浮かんだ。

 そうだ。今の私には、恋愛よりまずは冒険が先だ。
 アシスタントという、大仕事が待っている。

 心の準備。何をすればいいのか、考えてみないと!

 師匠が用意してくれた、最後の特別な修行。

 しっかりと楽しめるように、出来るだけの事をしよう。

 そう思いながら、家路についた。


~続く~

お読みいただき、おおきにです(^人^)

イラストはAIで生成したものを使っています。

次話⇩


 1話からまとめてあるマガジン⇩


【この物語について】

失恋して痛みを抱えた20代の女性が、レトロな商店街で「魔女いてます」の看板をみつけて、物語が動き出します。自称魔女からだされる様々な課題をこなし、商店街の個性的な店主達と交流する内に、癒され成長していく『まったりスポコン系シスターフッド』のお話です。

【こんな方におすすめ】

🟢毎日何だかしんどい、心をデトックスしたい

🟢ちょっとお節介な年上の先輩に背中を押してほしい

本作は、主人公の成長譚であると同時に、私的な『実在する大好きな場所を頼まれてもいないのに勝手に物語で応援する実験』でもあります。懐かしい商店街と地域コミュニティをご体感いただいた後は、ぜひおうちの近くの商店街でお買物を👍

⏩️京都東山の某商店街をモデルにさせてもらいましたが、内容は完全創作です。現実の店舗、存在と一切関係はございません。ご理解の程宜しくお願い致します。

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