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もし、「一冊だけ」本を勧めるなら #質問箱回答

質問箱に質問が来ていました。質問ありがとうございます!

この質問について、少し語れることがあるかなと思ったので、記事として書いてみたい。

他人に本を勧めるのはかなり難しいことだ。その人が普段どれぐらい本を読むのか、どういう年齢や環境の人なのかによって、推薦する本というのは大きく異なるからだ。どういう課題感をもっているか、というのも人によって違う。

いまの職場では、持ち回りで朝礼にスピーチをすることになっているのだけれど、先日、本の紹介をした。「督促とくそくOL修行日記」という、督促(カード会社などで、入金されていない客に入金を促す電話をする人)を仕事にしている人の仕事術の本だ。

これは、いまの職種は営業職なので、電話をかけて相手先にいろいろと動いてもらうことが多いのだが、「電話で人を動かすのは難しい」という課題感を全員で共有できているからだ。このように、課題感がわかっていると、ソリューションも提示しやすい。

事情がわからない人に本をおすすめするのはかなり難しい。

しかし、「これは全人類が読むべき本だろう」という良書がたまにあって、その中でも最たるものが僕の中にはある。それは、灰谷健次郎という児童文学作家が書いた『太陽の子』という小説である。

少し昔の本なので、知らない人も多いかもしれない。けれど、僕はこれは本当に誰が読んでも、人生に必要なことがぎっしり詰まっている本だと思っている。

子どもが読んでも、大人が読んでも、日本人でなくとも、例えばインドのスラム街にいる人がこの本を読んだとしても、きっと共感できるし、学べるところが大きいのではないかと思う。そういう本である。

誰かにとりあえず一冊をおすすめしなければならないとしたら、とにかく僕はこの『太陽の子』をおすすめする。この小説は自分の原点でもある。

あまりにも内容が濃いので、どういった角度で説明すればいいのかわからないのだが、物語の舞台は1970年代の神戸だ。沖縄から神戸にやってきて、沖縄料理店を経営している両親の娘である小学生のふうちゃんを主人公として、その周りの人々との交流、沖縄の戦争について考えていったりする物語である。

舞台設定としては戦後になるのだが、沖縄の話が中心となる。両親や、神戸に住む沖縄出身の人々は、夜な夜な沖縄料理店「てだのふあ・おきなわ亭」に集まって、沖縄の昔話をし、民謡を歌い、沖縄の海について語っている。しかし、誰も沖縄で経験した戦争のことについて話そうとしない。

やがてお父さんが精神の病気にかかってしまうが、その原因が沖縄の戦争にあるらしいということがわかる。主人公のふうちゃんが、お父さんの病気の原因を明らかにするため、誰も語ろうとしない戦争について調べるため、行動を起こしていくという話である。

この小説のすごいところは、自分自身の成長に合わせて、感情移入できる人がどんどん移り変わっていくところだ。最初は十歳の少女であるふうちゃんから始まるのだが、二十代、三十代、五十代、六十代と、それぞれの登場人物に視点が移っていく。それぞれの登場人物にしっかりとした考えがあり、魂が宿っているので、自分の年齢があがるにしたがって、違う人の目線でその物語を見ることができる。

僕が最初にこれを読んだのは中学生ぐらいの時なのだが、いま読んでも発見があるし、本当にそれぞれの魂が息づいているなと思う。

繰り返すけれど、人に本を勧めるのは簡単なことではない。万人に響く作品など、基本的にないからだ。せめて、どういうものを求めているかさえわかれば、その解決となる本を提示することはできる。

自分があまりにもその本から影響を受けすぎたものであればあるほど、語るべきことが多すぎて、逆に何を書けばいいのかわからない、ということになる。そんな状況で、無理やり一冊を選出するとしたら、この本になるだろう。

とにかくこの作品は、僕がノーベル文学賞ものだと思っている本である。ぜひ手に取ってもらいたいと思っている。




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