「計算」すれば、鎧はいらない
現存する最古の「建物」はなんだろうか?
どういう基準で「最古」とするかは異なるし、たとえば木造建築物など、ジャンルによっても変わるので、一概には言えないのだけれど、「古い建造物」という括りで言うならば、たとえばエジプトのピラミッドが挙げられる。
日本にも古墳などの遺跡はあるが、エジプトのピラミッドは見た目にも巨大なので、「建造物」と呼ぶにふさわしい(実際に見たことはないが)。古いものだと、建造されてから4000年ぐらいが経つと言われる。築4000年の建造物と考えると、ちょっと歴史が深過ぎて、自分の感覚ではなかなかピンとこない。
現代の建造物で、それぐらい「持つ」ものはあるだろうか?
意外かもしれないが、現代の高層ビルなどの建造物は、かなり「軽くて脆い」とされている。高く建築すればするほど、階下にかかる負荷も増していくので、構造上、軽くしないと自重で潰れてしまうのだ。「脆い」というのも直感的には理解し難いが、ビルの発破解体などの映像を見ると、比較的少量の爆薬で巨大なビルをまるごと破壊していることがわかる。
ビルは緻密に構造計算されているので、その逆を突いて、「急所」を崩すと、ドミノ倒しのように全体が崩壊するように出来ているのだ。ピラミッドを爆薬で破壊する場合、そういった「構造上の急所」がないので、全体を破壊するしかないだろう(想像するだけで恐ろしい話だが)。
そういう性質を持つので、現代のビルは4000年どころか、100年持つかどうか、というのがほとんどなのではないだろうか。しかしもちろん、そうやって「軽くて脆い」構造にはメリットがあり、安く、短期間で作ることができる(ピラミッドと比較して、という話だが)。
つまり、はなから4000年持たせる建物にしよう、という発想ではなく、50年ぐらい使って、あとは壊すつもりで作っている。どうでもいいことだけれど、東京の湾岸地区(港区や中央区など)には海に面したタワーマンションなどが聳え立っているが、もともと埋立地なのに加えて、常時潮風にさらされるうえ、高層の構造なので、長年住んでいると生きた心地がしないのでは……、と思う。
なぜ、昔の建造物と現代の建造物でそのような構造の違いが生じているのかというと、簡単な話で、技術の進歩で構造計算が行えるようになったから、である。
ピラミッドは、もちろん高度な建築技術によって作られてはいるものの、当然ながらコンピュータなどがない時代の話なので、構造計算にも限界がある。だから、とにかく「堅牢につくる」ことを目的に作られている。
建材も削りだした石とかなので、建造物というよりは、人工的な「山」みたいなものだと言えるかもしれない。現代は、構造計算をコンピュータを使って行っているので、そこまで頑丈に作る必要がそもそもない、ということである。
古代エジプトと同じノリでは、ビルひとつ建てるのにえらくコストがかかるのは言うまでもない。
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最近、将棋をかなりやっているのだけれど、将棋のAIが本格的に将棋界で導入されてからの変化が面白かった。
将棋は「玉」を取るゲームなので、簡単に相手に取られないよう、味方の駒で玉を守る「囲い」というものがある。昔は、「穴熊」という、堅牢な囲いが最強とされてきたのだが、将棋AIは穴熊をほとんど指さない(評価しない)というのである。
なぜかというと、手間がかかるし、自陣の駒を大量に使うので、効率が悪いというのだ。AIは、むしろ囲いをもっとライトにするか、ほとんど囲わずに指したりすることが多いという。
つまり、「計算」という武器があるので、無意味に硬くするよりは、バランスよく駒を配置して、効率をあげる、というところに主眼を置いているわけだ。この変化は面白いな、と思った。
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なんでも高度化するにつれて、「堅牢さ」よりも、「バランス」に重点が置かれていくようになるらしい。むしろ、何もわかっていないうちは、とにかく「安全に」する、ということなのだろうか。
しかし、ちゃんと未来が予見できていれば、無意味に「堅牢にする」ことの無駄がわかる、ということなのかもしれない。高度に発達した技術では、「計算という鎧」を身につけることができるのだ。
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