古墳症 #毎週ショートショートnote
「古墳症」は、動くことを放棄した者に宿る現代の呪いだ。
ある者は、ソファから動かぬまま「前方後円墳型」になった。
腹が丸く突き出し、股関節は左右に開いたまま固定され、閉じられない。
上から見れば、荘厳な鍵穴形となる。
一方、ベッドに根を張った者は「エジプト型」の症状を呈する。
腹と太ももに堆積した重厚な脂肪が、四角錐、すなわちピラミッドを形成する。この形になると最後、立ち上がる筋力すら自重に奪われる。
こうなると日常生活も困難になるが、それでも彼らは困らない。
この病は、一部界隈で「神聖視」された。
信者がその威容を拝みにやってきては、足元に飲食物やお賽銭を「お供え」し、「奉仕」と称し生活をサポートする。
そして私。患者を研究しているうちに、新しい型の古墳症を発症したようだ。
パソコン画面に視線を向け、両手はホームポジション。
「スフィンクス型」とでも名付けようか。
これで私も「ご神体」だ。
本文406文字
※ サムネ画像の古墳症患者は、プライバシー保護のため、一部画像を加工しております。
こちら、田原にかさんの「毎週ショートショートnote」の参加記事となります。田原さん、皆さん、よろしくお願いします!
この季節にふさわしい、共感できるお題でした!
が、書いているだけで鼻がムズムズ、目がシバシバ!
シンパシーは、時に罪深いものなのですね……
<おまけ>
お題2:フフン賞
三白眼で慢性鼻炎の花岡メイは、常に不本意な誤解を招く宿命にあった。
電車で、目の前の若者が難解な哲学書を広げた。
メイは鼻詰まりに耐えかね、鼻腔に圧を掛けて一気に解放した。
「……フフン」
鋭い視線と完璧なタイミング。若者は「バカにされた」と勘違いし、静かに本を閉じた。
その後立ち寄ったドラッグストアでは、レジでもたつく老人の背後で、メイは再び鼻を開通させた。
「……フフンッ!」
周囲は「どんだけ待たせるのよ」という高慢な嘲笑だと確信した。
仕上げに、鼻水を防ぐためシルクのハンカチで優雅に口元を覆う。
その仕草が、周囲にさらなる誤解を与えた。
こうしてメイは、本人の預かり知らぬところで本年度の「フフン賞」を受賞した。日常のなかで最も「鼻持ちならない絶妙なドヤ顔」をした者に贈られる、非公式かつ不名誉な賞。
授賞式でのメイは、その尊大な表情のまま叫んだ。
「私は、ただ呼吸がしたかっただけなの!」
本文402文字
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