キャトルイルミネーション #毎週ショートショートnote
田舎町の外れ、クリスマスバザール会場に異様な人だかりができていた。
今年の目玉『キャトルイルミネーション』だ。
「見て、綺麗ね」
恋人たちが指差す先には、巨大なUFO型のLEDから放たれる、まばゆい垂直光の柱。そしてその光に包まれ、宙へとゆっくり浮かび上がっていく牛のシルエットがあった。
私は横目でそれを見ながら鼻で笑った。聖夜に「キャトルミューティレーション」と「イルミネーション」を掛け合わせるなど、悪趣味にも程がある。
だが、見ているうちに違和感を覚えた。
浮いている牛の影が、あまりに生々しい。
時折、切実な鳴き声まで聞こえてくる気がする。
「あれ、本物の牛だろ!?」
隣にいたカップルの彼氏が、空を仰いで言った。
「じゃあ、UFOも本物!?」
彼女の方は、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。
見上げれば光の柱の先で牛が吸い込まれ、代わりにキラキラと輝く星屑が降ってきた。
そのまばゆい光を、そっと手のひらで受け止めた。
牛脂だった。
本文410文字🎄🛸🐄
こちら、田原にかさんの「毎週ショートショートnote」の参加記事となります。
田原さん、皆さん、今週もよろしくお願いします!
「キャトル・ミューティレーション」と聞くと、私などは真っ先にダニエル・ブライアンの技をイメージしてしまうのですが……。
丁寧な解説まであったので、いわゆる「一般的な」イメージで、そこにクリスマスを無理矢理絡めてみました。
違う意味で「ベタベタする聖夜」をお楽しみいただければ幸いです。
少し臭いますけれども……。
<おまけ>
裏お題:着てるインフォメーション
最新のスマートスーツは、着用者の年収や健康状態がリアルタイムで生地に流れる。
俗称『着てるインフォメーション』。
人々はすれ違う相手の数値を見て、露骨に対応を変えるようになった。
会社員の誠司は、胸元の「給与20万円」という表示を晒す日々に息苦しさを感じていた。嘘も隠し事も許されないこの世界は残酷だ。
ある日、彼は公園で白いワンピースを着た女性に出会った。
彼女の服には何も表示がなく、ただ「空白」が広がっていた。
「表示の故障ですか?」
誠司の問いに、彼女は微笑む。
「これは共感型の試作品。見る側の『願い』を映し出すの」
もう一度見ると、彼女の胸には
『人を数字で判断しない クリスマス予定なし』
という文字が流れていた。
驚いて自分のスーツを見下ろすと、そこには無機質な数字の代わりに、
『恋に落ちた男』
という文字が狂ったように点滅していた。
彼女のワンピースがふわりとピンクに変わった。
人生を惑わせるのは、数字だけとは限らない。
本文409文字
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