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第4話ハーブと音楽。煙のGroove

アメリカ西海岸といえば、様々なものが浮かんでくる。
映画、音楽、気候、多民族国家特有のカルチャー。その中でも一際、私の興味が尽きなかったのが「Cannabis」だ。

以前から歌詞カードを眺めていると、引っかかるワードがいくつもあった。「smoke weed」「ハッパ」「ハイになる」……なんだそりゃ?
何も知らず、ただ好きで聴いていた曲の中にあった違和感。その正体こそがCannabisだった。

Hip Hopは「リアル」が売りだ。これは体験しないと駄目だろう。
そう強く感じたことが、アメリカ行きの動機の一つでもあった。もちろん、日本ではイリーガルだ。だが、音楽業界、すなわち夜の世界には当然のようにそれはあったし、経験もした。
それでも、私は「現地」での空気感の中で経験したかったのだ。

Hip HopをかけるDJという立場上、実体験が生きる音楽を扱っている。「Fake」だと言われたらそれまでだ。たとえイリーガルであっても、その文化の根源に触れる必要があった。

LAに行った当時は、まだ合法化の一歩手前。今のように表立って買うことはできない。
どこで手に入れる? ストリートのプッシャーから買うのか?
疑問に思っていたタイミングで、知人が買いに行くというのでついて行った。

車を走らせて着いた先。そこは何でもない道路沿いから少し入った路地にあった。
看板はなく、あるのは監視カメラだけ。灰色の建物で、殺風景な場所だった。
とりあえず記念だと思い写真を撮ったが、購入して戻ってきた知人に「写真は撮っちゃ駄目だよ」と叱られたのを覚えている。

今でこそカリフォルニアは合法化され、SNSで検索すれば沢山のCannabis情報が流れてくる時代だ。しかし、当時はまだ、明確に「イリーガル」な空気が漂っていたのだ。

購入後、知人宅に戻ると、彼は早速「一服しますか」と茶色の袋から小袋(パケ)を取り出した。

品種は「OG Kush」。
甘さの中に、青々とした草の香りが混じる独特の匂いだ。彼は慣れた手つきでそれをグラインダーで砕き、ペーパーで巻き上げていく。あっという間にタバコサイズのジョイントが完成した。
その頃には日も落ち、気温も心地よい。「屋上でChillしよう」ということになり、僕らは外へ出た。
LAの夜風に吹かれながら、紫煙をくゆらす。
その時、眼下に広がる夜景が、いつもより鮮明に、そして美しく見え「なるほど」と腑に落ちた。
「こんな最高のマインドで曲を作っているのなら、気持ちいい音楽ができるはずだ」

𝐂𝐡𝐢𝐥𝐥


最高の気候、陽気な人々。そこにひとつのスパイスを加えるだけで、これほどまでにマインドが開放されるとは想像していなかった。

終始、笑いながら話をしたのを覚えている。
内容は恐らく、くだらないことばかりだったと思う。けれど、そんなリラックスした会話の中から、突拍子もない面白いビジネスやアートが生まれるのもまた事実だ。
LAという街のクリエイティブの根底には、確かにCannabisが一役買っているのかもしれない。

日本に帰ってきてからのギャップ

帰国後しばらくは、LAの風が吹いているような感覚が抜けなかった。
あの解放感。自分にはあの空気が痛いほど合っていたのだと思う。だからこそ、日本の空気が妙に重たく、窮屈に感じて仕方なかった。
本気でグリーンカードの取得を考えたほどだ。

だが、離れてみて初めて分かることもある。
治安の良さ、食の豊かさ、繊細さに関しては、圧倒的に日本が素晴らしい。
一度外に出て日本を観察したことで、良い点も悪い点も、客観的に見ることができた。「隣の芝生は青い」とは言うが、自分の庭の芝生がどうなっているのか、外に出て初めて正しく認識できたのだと思う。

今の自分への影響

あの土地を踏み、現地の人々と言葉を交わして変わったこと。
それは、過剰に周りの目を気にしなくなったこと。そして、「もっと自分を主張していい」と気づいたことだ。
もちろん、そこには相手への配慮やリスペクトが大前提としてあるけれど。

その変化は、DJとしてのプレイにも色濃く表れた。
以前はBPMの整合性や、一定のノリをキープすることに囚われていた。しかし今は違う。
「崩し」「Groove」「リリックの意味」、そして「意外性」。
教科書通りのミックスよりも、その場の空気(バイブス)を掴むスタイルへと進化した。

コミュニケーションの「入り口」も変わったかもしれない。
アメリカ人の多くは、会話の第一声でまず相手を受け入れる。「肯定」から入るのだ。
「Okay!」「Cool!」
もちろんシチュエーションによるが、否定から入らず、まず肯定的なニュアンスでバイブスを合わせる。それは相手への敬意を示す行為でもある。

最高の気候とハーブが生んだあの陽気なマインドは、今の私の一部となり、音楽や言葉の中に息づいている。

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