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コルトレーンのライブ・アルバム 「ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン」「ライブ・イン・ジャパン」「オラトゥンジ・コンサート」Live Recordings of John Coltrane " Live at The Village Vanguard Again", "Live in Japan", and "The Olatunji Concert"

コルトレーンの最後期のライブ・レコーディングに関して以下にまとめて書いておこうと思う。

この時期のメンバーは、

  • John Coltrane

  • Pharoah Sanders

  • Alice Coltrane

  • Jimmy Garrison

  • Rashied Ali

このレギュラー・メンバーにプラスしてパーカッショニストが参加する場合があったが、ここで取り上げる録音に残っているのはAlgie DeWitt (Bata)のみである。
現在リリースされている音源は、
①66年5月28日のヴァンガードでのライブ。"Live at The Village Vanguard Again" ②同年7月11日のサンケイホールでのライブ。③同年7月22日の厚生年金会館でのライブ。"Live in Japan" ④67年4月23日のオラトゥンジ・センターでのライブ。"The Olatunji Concert"
ということになる。

②に関しては手元に盤をもちあわせていないので、①③④に関して以下記して行くことにするが、どれも内容は素晴らしい。また、それぞれセティング異なっていることもあって、時期が近接している割には各々個性があり、どれもお勧めである。

その上、①③④とも"My Favorite Things"を共通して取り上げているという興味深い事実がある。(②ではその代替的な題材であるように思える"Afro Blue"が演奏されている。)

個人的には音は悪いものの④が一番のおすすめで、コルトレーンに興味を持ったならばこれを聴かないのはもったいないと思う。次に①でこれはヴァンゲルダー録音で音質は良好、たぶん編集もされていて、この時期の魅力が凝縮されている。③のライブ・イン・ジャパンは、音的には①に劣るが、ホールというセッティングでのコンサートの全貌がわかり、当日のライブをノーカットで堪能できる。これも捨てがたい魅力がある。

音質的にはやはり正規盤の①が一番で次が③、④はインパルスからの発売であるが、録音に失敗しているといっていい音質だ。

以下①から順番に。

メンバーチェンジがあり、音楽の形が変化する時期にあった66年。コルトレーンはその年の前半から上記のメンバーでのライブ・パフォーマンスを重ね、結果、5月末までにある手応えを感じたのであろう、エンジニアにヴァンゲルダーを呼び、レコーディング前提でのライブをヴィレッジ・ヴァンガードで行った。その記録が①。
①はこの前のヴァンガードやバードランドのライブに比し、一般的にはマイナーな盤であることは否めない。何しろ「黄金のカルテット」なる呼び名が定着しているエルビン・ジョーンズとマッコイ・タイナーが参加しているのが前2作で、本作は場数的にもまだまだ少ないメンバーによる録音である。インパルスのコルトレーンを聴こうと思った時に本作は後回しになって行くだろうことは容易に想像できる。

同時代的視点で考えてみると、この新しいメンバーでコルトレーンはファンにとってなじみ深い2曲、"Naima"と"My Favorite Things"を取り上げている。この2曲はアトランティック時代の曲で、5年間は他のレーベルに録音しないという契約が存在し、その期限が満了したのがこのタイミングであったとのことだ。が、それ以上にこの選曲には新メンバーによる音楽の方向性を広くファンに伝えるためのコルトレーンの思慮を感じる。

③④との比較でいうと、ヴァンガードという謂わばホームグラウンドで、且つNYのジャズ・ファンが集まりやすい場所でのライブということもあって、熱心なファンや関係者によって形作られるライブ・ハウスならではの場の空気が熱量とともに伝わってくる良さがある。

例によってライナー・ノーツはナット・ヘントフだが、その中で彼は別の評論家の以下の言葉を引用している。曰く、「この時期のコルトレーンはその真摯な音楽への姿勢によって、彼の仕事のすべてのエクスポージャー(露出)が特別な価値をもつものとなっている」(意訳です)とのこと。これは後期のコルトレーンを好むファンにとって、大きく肯くことのできる言と思う。

コルトレーンのライブはこの時代の熱量を代表する面があり、公民権運動等この時期のムーブメントと連動した、何か重要な表明、表現が行われている現場であるという見方があったと思うし、現にそういう見方をオーディエンスが共有していた時と場所であったのだと思う。

音楽がエンターテイメントを超えた価値を持つように感じることのできる時と場所がポピュラー・ミュージックの歴史の上にいくつかあると思うが、この66年のヴァンガードはまさにそれであると思うし、そういう意味では④のオラトゥンジ・センターもその空気を纏っている。ライブ盤ならではの魅力だ。

このような空気を纏っている音楽はその時点で多くがシーンを形成していて、シーンが収束した後も古くなることなく伝わり、愛好される。所謂「ジャズの10月革命」に賛同した若手ミュージシャンを「アセンション」で大胆に起用し、自らもその渦中に身を投じたコルトレーンであるが、最後期のライブ録音を含む録音にはその可能性を追求し尽くそうとするコルトレーンの姿が浮き彫りとなっている。

なにしろこの方向に舵を切ったことでエルビン・ジョーンズとマッコイ・タイナーが抜けたのであるが、それをよしとして、この方向を追求することに決めたのだ。その意味でこのヴァンガード・アゲインがコルトレーンの設定した次なる音楽の形への入り口であるといえるのではないだろうか。

結果"Naima"も"My Favorite Things"も今までにない素晴らしい演奏になっている。両曲ともまずはコルトレーンによる、メロディーを提示しつつもそのフレームぎりぎりを追求するような演奏がある。その後にファラオが登場するのだが、両曲とも「出た〜」と言う感じで登場感フルフルである。そして期待を裏切らないシャウトが続くのである。

"Naima"はファラオを受けてコルトレーンが登場。今度はファラオが破壊し尽くした上での即興演奏となり、聞きごたえ充分である。最後にテーマの提示があり終結。

"My Favorite Things"はファラオの尋常ではないソロにコルトレーンも参加する。これはヴァンガードの狭いステージを想うと、まさに「流血沙汰」。何か凄まじい事件の現場に居合わせているようであり、ファラオ入りのコルトレーンの醍醐味を満喫できる。その後コルトレーン のソロとなるのだが、これも良い。ファラオが思い出したようにカウベルを叩き出してたりするのだが、これがまたトリップ感を盛り上げる。正規盤のライブの中では出色のトラックであると思う。

蛇足だが、ジャケ写もコルトレーンとサンダースの宇宙と交信しているかのような、ぶっ飛んだ感じが伝わってきて、なかなか良い。


③の「ライブ・イン・ジャパン」はなんといってもコンサート全編をノーカットで堪能できることが最大の魅力である。編集が加わった方がよりプレゼンタブルであるとは思うのだが、この盤のように後からある意味資料的な意味合いもあってリリースされたものとしては、この姿が正しいように思う。

ジミー・ギャリソン、ラシッド・アリ、アリス・コルトレーンの長いソロをノーカットで聴く事ができるのは、今となってはこの盤のみ。このメンバーでのこの時期のコルトレーンのコンサート・ホールでのライブを堪能できる内容で、時間のある時に続けて全編聴くのがオススメ。

④は前述したが音が良くない。録音をコルトレーン本人から依頼されたベルナルド・ドレイトン氏へのインタビューからなるノートが当該CDに掲載されている。ドレイトン氏はこの録音の前にミルフォード・グレーブスとドン・ピューレンのイェール大学でのライブ・アルバムの録音を行ったことがあり、コルトレーンはグレーブスからの紹介で突然彼に電話をしてきた(それもライブの前日)のだとのこと。

当時アフリカン・アメリカンのレコーディングエンジニアはほとんどいないのが実情であったようで、彼の存在は当時大変貴重であったようなのだが、彼は前述のグレーブスのライブ盤を1年前に録音して以来、レコーディングの仕事はしていなかったとのことである。結果音の割れた仕上がりで、満足な録音にはなっていないわけであるが、当時の状況もあって、コルトレーンがこの後どのように自分のプロダクトがあるべきなのか、考えた末の結果であったのだろうと思うと感慨深い。

このあたりの事情はクリス・デヴィート編「ジョン・コルトレーン インタビューズ (Coltrane On Coltrane)」オラトゥンジの証言部分に詳しい。コルトレーンは自分に関わる諸々を自分でコントロールしようと計画していた様子で、さらにアフリカン・アメリカンのスタッフで固めることを考えていたようである。このあたり「自分たちの経済圏が必要である」との当時のアフリカン・アメリカンのコミュニティーの志向の反映であると思う。

表層的なことであるが、コルトレーンも含めジャズのミュージシャンはこの時期までスーツを着ているわけであるが、これ以降はアフリカ系としての服装を考えるようになる。もちろんスーツ系のジャズも残り続ける。ウィントン・マルサリスに代表されるジャズのエスタブリッシュメント気取りの面々はイタリア製のスーツなわけで、それはそれで、ジャズのある一面を表現している。

コルトレーンは最後までスーツであったのだが、ファラオ・サンダースやアーチー・シェップ、ドン・チェリーetc...は少なくともステージでスーツを着るようなことはなくなって行く。これは今となっては当然であるが、この当時は大きな意味を纏った行為であったハズだ。

内容はとにかく凄まじい。個人的にはロック好きがコルトレーンを聴くならば、まずここから聴き出すのが良いのではないか?と思うし、これが最後にして最高の出来であるところがコルトレーンのキャリアを象徴していると思う。

さらに場の熱気も劣悪な録音であるにもかかわらず(あるからこそかもしれない)伝わってくる。レコードは時代を表現するものであるが、それがどういうものであるのかをよくよく示してくれていると思う。

以下①、③、④のデータをDiscogから引用しておく。

①Tracklist
A1.Naima Written-By – John Coltrane 14:51
A2.Introduction To My Favorite Things 5:09
B.My Favorite Things Written-By – O. Hammerstein II*, R. Rodgers* 20:55
Recorded At – Village Vanguard
Credits
Bass – Jimmy Garrison
Drums – Rashied Ali
Piano – Alice Coltrane
Tenor Saxophone, Flute – Pharoah Sanders
Tenor Saxophone, Soprano Saxophone, Bass Clarinet – John Coltrane
Producer – Bob Thiele
Engineer – Rudy Van Gelder
Recorded live at the "Village Vanguard", NYC, May 28, 1966.
③Tracklist
A.Peace On Earth 26:35
B1. Introduction To My Favorite Things B2. My Favorite Things 26:18
C. My Favorite Things - Continued 31:30
D. Leo 17:15 E. Leo - Continued 28:25
Credits
Alto Saxophone, Tenor Saxophone, Percussion – Pharoah Sanders
Bass – Jimmy Garrison
Drums – Rashied Ali
Piano – Alice Coltrane
Soprano Saxophone, Alto Saxophone – John Coltrane
Recorded in concert at Kosei Nenkin Hall, Tokyo, Japan, July 22, 1966
④ Tracklist
1. Introduction By Billy Taylor MC – Billy Taylor 0:35
2. Ogunde Written-By – John Coltrane 28:253
3.My Favorite Things Written-By – Richard Rodgers, Oscar Hammerstein II* 34:38
Credits
Producer, Soprano Saxophone, Tenor Saxophone – John Coltrane
Tenor Saxophone – Pharoah Sanders
Piano – Alice Coltrane
Bass – Jimmy Garrison
Bata [Batá Drum] – Algie DeWitt
Drums – Rashied Ali
Percussion [Possibly] – Jumma Santos
Producer [Production Managed By] – Bryan Koniarz
Recorded By – Bernard Drayton
Recorded April 23, 1967 at the Olatunji Center of African Culture, New York City.

discogs


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