『はこだて暮らしの保健室』に込めた想い
【「はこだて暮らしの保健室」とは】 「はこだて暮らしの保健室」は、**医療者が病院を飛び出して街の中へ赴き、地域住民の誰もが気軽に立ち寄れる「居場所」です。健康や生活の不安を相談できるだけでなく、人々が「社会とのつながり」**を自然に感じ、孤立感を和らげることを大切にしています。学校の保健室のように、誰でも気軽に立ち寄れて、ホッとできる場 を目指しており、参加費は無料です。公共施設や地域会館などで月1~2回程度開催しています。
【なぜこの活動を始めたのか?~背景にある課題~】 従来の医療システムは病気を「治療」する場であり、病気になる前の「予防」や「早期発見」、そして現代社会で深刻化する「社会的孤立」という課題に十分に対応しきれていない現状があります。特に人とのつながりの希薄化は、心身の健康に深刻な悪影響を及ぼします。健康に関心が薄い人や、病院に行くほどではないと感じている人へ、病院の外からアプローチする必要がある という課題意識が活動の背景にあります。
【大切にしている工夫と活動内容】 私たちは、誰もが来やすい雰囲気づくり として、温かく会話が生まれやすい空間デザイン や、医療者っぽさを抑えた服装や言葉遣い、肯定的な声かけや傾聴といったコミュニケーションの工夫 を大切にしています。「先生」ではなく「〇〇さん」と呼び、白衣を脱ぎ、対等な目線で接することを心がけています。
また、「健康」を目的としない多様な活動 を提供しています。体操、おしゃべり会、俳句やちぎり絵などの趣味活動、健康クイズ など、「楽しいから参加する」 を重視し、その結果として心身の元気につながることを目指しています。これは、「健康」を目的化せず、楽しみやワクワク感を動機とする「楽しいドリブン」 の考え方に基づいています。
【活動に込められた理念】 活動の根底には、病気の原因を取り除く疾病原因論に偏らず、人が健康になるための要因(良好な人間関係、生きがい、自己効力感など)を強化する健康生成論の視点 があります。健康は目的ではなく、より良く生きるための手段であるというWell-being志向 を大切にしています。無理強いせず、楽しい活動から自然に生まれる関係性や、予期せぬ出会い(セレンディピティ) を尊重し、一人ひとりの力を信じ、主体性を引き出すエンパワメントと伴走 の姿勢を大切にしています。また、スタッフと参加者が共に場を作り、支え支えられる共創とケアの相互性 を目指しています。
【参加者の物語】 暮らしの保健室からは、様々な参加者の物語が生まれています。例えば、デイサービスに抵抗がある認知症のご主人が奥様と一緒に参加され、体操や読書を楽しむ姿。兄弟の死後孤立していた方が保健室を「生きがい」とし、交友関係を広げボランティアとしても活躍する変化。偶然小学校の同級生と再会し、昔話に花を咲かせるエピソード。会話が苦手でも、準備や片付けを手伝うことでボランティアとして関わり、多様な参加・貢献の形を実現する事例。これらは、居場所としての機能、社会的つながりの再構築、エンパワメント、そして予期せぬ出会いが生まれる場の可能性を示唆しています。
【「社会的処方」への向き合い方:「意図しないことを意図する」】 私たちの活動の先に、薬ではなく人や活動とのつながりが生まれる「社会的処方」を期待していますが、それを直接的な目標にはしていません。支援者が「つなげよう」と意図しても往々にしてうまくいかないジレンマを認識しており、つながりを生む主体はあくまで参加者・地域住民であると捉えています。意図しない出会い(セレンディピティ)が**「結果として」**生まれるような、その手前のプロセスをデザインし、楽しむことを大切にしています。
【目指す未来~ともにケアする地域社会の実現へ~】 私たちは、暮らしの保健室の実践を、「ともにケアする地域社会」の実現へつなげたいと考えています。これは、医療・介護とまちづくりの協働、専門職と住民が互いに学び合い、ケアしあう関係性の構築、地域全体でWell-beingを支え合う社会 を目指す挑戦です。将来的には、地域の様々な活動や資源をつなぐプラットフォームを構築し、「社会的処方」の仕組みづくりを目指したいと考えています。
この活動が、皆さんの心と体の元気、そして豊かなつながりを育む一助となれば幸いです。ぜひ動画をご覧ください。
