イカズチ物語第二章
女王の手から鎖が落ちる。
乾いた鉄の音が、静まり返った玉座の間に響いた。
誰も声を上げない。
誰も動けない。
敵国の王が、自ら囚われの女王を解放したのだから。
王は静かに言う。
「これより先、お前を縛る鎖は存在しない。」
「縛るとすれば、それは互いの信義だけだ。」
女王は自由になった両手を見つめ、小さく息を吐いた。
「……私はまだ、お前を許したわけではない。」
王は微笑む。
「許しは求めぬ。」
「いつの日か、お前自身が答えを出せばよい。」
その言葉に、居並ぶ諸侯たちはざわめいた。
「陛下!」
「敵国の女王を信用なさるおつもりですか!」
「裏切られれば帝国は――」
王はゆっくりと玉座から立ち上がる。
その眼差しだけで、広間は再び静寂に包まれた。
「恐れる者は去れ。」
「余は敵を力で従わせる王ではない。」
「敵すら味方に変える王となる。」
その覇気に、誰一人として言葉を返せなかった。
