いつも通り過ぎていた扉の向こう
その扉を開けた瞬間
─私好みの雰囲気! もう好き!
木のぬくもりたっぷりな店内。
カウンターに並ぶたくさんのビン。
黒板に書かれたメニュー。
店内にBGMはなくて
キッチンからラジオの声が漏れてくる。
いつもの通り道にある小さなレストラン。
そう、いつもの通り道。
そこにお店があることは何年も前から知っている。
何で今まで行こうとしなかったんだろう。
特別な理由はない。
ただ “いつも通り”を選んでいたから。
今回違ったのは、
あの店が気になると言う友達がいたこと。
それだけ。
たったそれだけで景色は変わった。
そしてその場所は、
入った瞬間また来たい場所になったのだ。
ランチのメインが数種類。
「お客様は二名でお越しなので、別々のメニューをお選びいただくと、それぞれ半分ずつお皿に盛り付けてお出しすることもできますよ」
なんと!
取り分け皿を用意してくれるケースはあるけれど
少なくとも私の知る中ではかなり珍しい
少食の私たちには嬉しい提案だった。
これしかないな、くらいの感覚で
決めることになりがちな私が
他も気になる!どれも食べてみたい!
と思えたメニューもまた魅力的。
運ばれてきたお料理も
ここまでの加点抜きに美味しくて、
私の平凡な日常はみるみる更新されていった。
人は一日に数万回もの選択をしているらしい。
何年も前からそこにあった扉。
変わっていなかったのは、店じゃない。
同じ道を、同じ選択で通り過ぎていた私だ。
ほとんどは無意識で、
いつもと同じを選んでしまう。
あの日、たったひとつの違う選択が景色を変えた。
毎日に大きな変化なんてない。
でもたったひとつの行動で気づくことがある。
扉を開けるってそういうことかな。
