あの瞬間に閉じ込められたもの
「もう一度だけと思うこと」
このフレーズを反復していた。
いつになっても、その片鱗は見当たらなかった。
やり直したい失敗や取り戻したい瞬間が
ないわけじゃない。
でもそのときはそのときで
ちゃんと生きていた気がする。
だからどれも「もう一度だけ」という強い思いを
抱かせないまま、そこにある。
戻っても、なぞっても、
もうそれは別のものにしかならない気がして。
うまくいかなかったことも、
そのときの自分でしか選べなかったことだと思うし、
時と共にそれなりに昇華している部分もあるだろう。
うまくいったことは、
あの一度きりだったからこそ良かったと思えるのかもしれない。
たとえば──
ひっそりと私を支えている一言がある。
たぶん人生で一番、都合のいい場所に落ちてきた言葉。
「あーちゃん、レオンのナタリーポートマンみたいだな」
直接聞いたわけではなくて、
後からユキに教えてもらったんだけど。
まさに13年前。
日記を捨てる捨てないに限りなく近い時間のできごと。
後輩の結婚式があって、
いつもより何割増しにも着飾っていた。
“最後のおめかし”くらいに思っていたような気もする。
今、同窓会でもあったところで
その台詞が聞けるとは1ミリも思わない。
あれは、あの場限りの奇跡。
なんなら、映画の内容からしたら
大人に向けるには
褒め言葉かどうか怪しいまでもある。
だとしても、私の中ではもう一人の私が踊っていた。
それを言ったのが、普段お上手なんて絶対に言わない人だったから。
いろんな有名人やキャラクターに似ていると言われたことがあるけれど、
後にも先にもこれ以上はないと思っている。
ま、アイツは直接言ってくれるキャラじゃないけどさ。
なーんで、トイレ行ってる間に言うかなぁ。
もう一度を望めない。望まない。
それがたぶん、この心地よさなんだと思う。
Written in response to
https://note.com/happy_otter803/n/nc0f2c945d7f5
