西から東へ。
正しさに関しては一切保証しません。
偏西風というものがある。
空の上を一年中吹いているとても強い風のことで、強すぎて飛行機の速度にまで影響を及ぼしてしまうものだから、ジェット気流とも呼ばれることがあるらしい。
生み出したのは、南と北の温度差である。
その温度差を解消して地球全体の空気を均衡にしたいから、空気の流れが生まれる。
でも、そのまま南北に流れることはできないんだ。
地球の回転で向きを曲げられてしまうから。
曲げられて、西から東へと流れる循環に変わってしまう。
そうやってできたのが偏西風である。
そして、彼こそが天気の流れを操っている陰の黒幕みたいなものであるように思える。
もちろん、決してそれが全てを決めるわけではないだろう。
それ以外にも、天気を左右する要素はたくさんあるから。
でも、大まかな流れの骨組みを決めているのは彼である。
前線の位置を決めるのも、低気圧や台風の動きを決めるのも、寒気や暖気が流れ込む向きを決めるのも、季節の節目を作っているのも、だいたい彼なんだ。
それに、彼が東西にスムーズに流れれば、天気の移り変わりは速くなる。
でも、南北に蛇行したら天気の流れがストップして、同じところで同じ天気ばかりが続くようになる。
それが異常な暑さをもたらしたり、とんでもない量の大雨を降らせたりするわけだ。
近年は地球温暖化で南北の気温差が小さくなってきているから、流れが止まって蛇行しがちなのだろうか。
こんな感じで、天気に大いなる影響をもたらしているのが偏西風なのである。
それなのに、普通に暮らしている限りそれに気づくことはあまりないだろう。
空を飛ばない限り、そんな風が吹いていることすら、実感できない。
私は彼になりたい。
表向きは何も操っていないように見える。
影も薄く、そもそも存在しないのでは、そんな気までしてくる。
でも、裏では主導権を握っていて、多大な影響をもたらしている。
そんな存在になりたい。
格好良く思えてしまうから。
多分、ただの厨二病なのだろう。
まともに人と関わってこなかったから、今でも治っていないように思える。
だからこそ、はやく人間をやめて、そういう存在になりたいのかもしれない。
それに、常に変化し続けていて一か所にとどまらないという彼の性質は私の好みにひどく合っている。
どこにもとどまりたくない。
信じられないようなスピードで、流れ続けていたい。
今まで見たことのない全てを目の当たりにしたいから。
でも、ずっとそうしていると疲れることもあるだろう。
そんなときは、蛇行させるのである。
流れが止まって、一か所にとどまれるから。
それで回復したら、また流れを復活させて、東へと流れていきたい。
そうするうちに、地球は丸いから、いつの間にか元いた西の地が見えてくる。
これが、自分が知らない自分に出会えたような感じがして心地良く思える。
そんな気がしてならない。
そうやって延々と流れ続けていたいし、回り続けていたい。
東西に流れることで、いつでも今までいた所に戻れる。
南北にずれることで、見たことのない世界にも行ける。
その両方を狙いたい。
そして、最期には、信じられないスピードで流れた間に見えた景色を走馬灯にして、死を迎えたいなと思っている。
